<自然観察のテーマ・39>
葉っぱから豆ができる布谷 知夫
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秋になって、また私の事務机の上は木の実でいっぱいになりました。その中に直径4c
mほどの豆があります。モダマというマメで、熱帯から沖縄あたりで見られるものです。
そのサヤは1m弱もあって、それを見た事務所の人が、小さいころにこれを見ていたら、
「ジャクと豆の木」を本当だと信じただろう、と言っていました。私の場合には、この
大きな豆がはじけたら、いったいどんなことが起こるのか、と心配になってしまいます
。 植物の種子をみると、まずこの種子はどうやって広がっていくのか、ろいうことを考 えます。豆の場合には、その大部分はサヤがはじけて、中にある豆を飛ばします。小さ なものではカラスノエンドウが春にパチパチと音をたてて、はじけているのを見たこと はないでしょうか。カラスノエンドウのサヤが黒っぽくなって乾いてくると、陽があた る場所ではパチンパチンと小さな音をたててはじけます。 ![]() フジのサヤが私の机の上にありました。フジのサヤはわかるでしょうか。かなり固く てしっかりしているので、木の枝のようです。見た感じではとてもはじけそうには見え ませんが、これが見事に机の上ではじけました。中のマメは三個の小さなサヤでしたが 、両方のサヤはそれぞれちょうど90度ほど回転していました。サヤが枝に付いていた側 を基準にすると、中のマメが付いていた側が内側に回転しています。この位置関係を図 にしておきます。 このことについては後で触れるとして、このマメがはじける仕組は、例にしたカラス ノエンドウであれば見れば納得がいきます。マメのサヤには、ナナメのスジが入ってい ます。外側はすぐに分かりますが、内側はちょっと分かりにくいかも知れません。同じ サヤの内側と外側とでは、反対方向にスジが入っています。そしてこのスジの方向で乾 燥して縮むと、サヤは回転することになります。この力は両方のサヤがくっついている 間にだんだんと大きくなり、ある時点でサヤがついている力よりも回転する力が大きく なり、はじけることになります。フジのように固いサヤでも同じようにはじけ、はじけ てすぐ以後にも、ジワジワと回転が進みました。 このようにマメのサヤは基本的にははじけて、中の一つ一つのマメを外にばらまくこ とになります。 マメの仲間は花の形はいろいろあっても、果実はあのようなマメになります。例えば ネムノキや、あるいはミヤコグサのようなマメらしくない花がつくものでも、果実はあ のマメのサヤができるので、何の仲間なのはすぐにわかります。 でもマメの仲間でもはじけないマメがあります。それははじけないでひとつひとつの マメをばらまくことができる場合だけです。 おそらくそれには二つの方法があるでしょう。ひとつはクサネムやヌスビトハギのよ うに、サヤがパキパキとひとつひとつのマメ単位で折れてしまうようなものです。はじ けるかわりにひとつひとつに分れるわけです。そしてこの場合には、折れて分れたサヤ は水に浮いて、流れていったり、ほかの動物にくっついたりして広がります。この場合 には、水に浮くというしかけと、水際で生育するという生育環境、あるいはくっつくた めのカギのような毛が必要です。 もう一つは、最初からマメはサヤの中にひとつしか作らないということです。ハギの 仲間等はすべてサヤの中のマメは一つです。スズメノエンドウもマメがひとつの時があ ります。ハギはまずはじけないと思うのですが、でもこのハギがどうやって種子を広げ るのかを私は知りません。ついでに書くと、スズメノエンドウのサヤは、マメが一つで もはじけているのを見たことがあります。本来はふたつのマメが入るサヤなので、ひと つしかマメがない場合でも、本来の性質が優先するのでしょうか。 さて、もう一つはマメのサヤの位置関係です。まずエンドウマメのマメを出す時に、 あるいはサヤインゲンのスジを取る時に、どこを取るかということでしょう。 ![]() さてスジの太い側でサヤをむくとマメは外側についているでしょうか。あるいは内側 についているでしょうか。ぜひ確認してみて下さい。おそらく外側についているはずで す。 さて突如としてここでおなじみのアオギリの実を頭に浮かべて下さい。アオギリのあ の葉っぱのようなものと、マメのサヤとは同じ起源のものなのです。アオギリは花の時 にはわかりませんが、やがて秋になって実ができるときには、葉のような5枚のものの 縁に、幾つかづつの種子がつき、それを私たちが食べています。ちょうどあの1枚が内 側にあわさってしまえば、マメと同じ状態になります。アオギリの場合には、本来であ れば5枚の葉の様なものがあわさって、ひとつの実になるところが、分れてしまって種 子が裸で見えているという状態なのです。 アオギリを考えると、あわさってひとつのマメができるとすると、種子がつく場所は 片側だけに集中することは分るでしょうか。 ややこしい話をこのまま続けてしまいましょう。この葉のようなものは、まさしく葉 なのです。花の起源をさかのぼると、花の各部品であるガク片も、花びらも、オシベも メシベも、すべて葉が変ってできたものと考えられています。そうすると、マメのサヤ やアオギリは、メシベの根元の部分が大きくなったものですから、やはり葉が変化した ものということができます。アオギリの”葉”を見ていると、葉の葉脈と同じ様な筋が あることがわかります。 こんなことを考えながらいろいろな植物の実や種子をみていると、どの様に種子を遠 くに散布するか、という以外にも、ちょっと違った植物の見方があることが分ります。 最初は少し知識がいりますが、コツがわかると花の時にどういう状態なのか、花のどの 部分が果実のどの部分になっているのかが分って、結構楽しいものです。家庭にある果 物や野菜等はそのための格好の材料になります。 今回の記事もあまり野外と関係の無いものになってしまいました。野外に出ないと頭 に浮かんでこないのです。次回はもう少しましな記事を。 (布谷) |
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