大阪連絡会情報誌・じねんじょレターズ(45号)

<自然観察のテーマ・43>

タケの成長の早さ
布谷 知夫
 暑い日が続きます。今年の暑さは格別ですが、もう7月の末にはイネの穂が上がって、 花が終わり、すでに穂が垂れ下がってきています。このままだと、8月の間に収穫がで きそうです。

 先日ある観察会で、タケの成長について、あの大きさになるには数年かかると思って いる人が多いという話を聞きました。春からの成長を見ていると、そんなことはないこ とはわかると思うのですが、みんなタケノコを見ていないのでしょうか。



 タケの高さがどのように大きくなっていくのかを記録したものが身近にはなかったの で、私が昔調べたことがあるヨシのデーターをみていただくことにしましょう。ヨシの 芽(タケノコ)が地上に上がってくるのは、実は早いものでは2月の下旬だったのです が、全体としては3月の中旬に動きだしてきました。1?の中に出てきたヨシにマークを つけて、1本ずつの長さをずっと記録したのがこの図です。6月初旬にかけて、ほとん どグラフにするとまっすぐになるような成長をしていることがわかります。この間をほ ぼ100日間とすると、毎日、3〜4センチぐらいの成長をしていることになります。

 直接には関係はないのですが、もう1本の線は、地上に出ているヨシの個体の数です。 だんだんと増えていき、すぐに枯れはじめる個体があります。その枯れている個体の数 がアミの部分です。4月中旬からそろそろ枯れる個体があり、新しくでてくる芽は5月初 旬ごろには終わり、その後は少しずつ枯れる個体が増えていきます。

 このような数は場所ごとに違うわけですが、成長がいい場所では毎日にこれぐらいの 成長をして背が高くなり、本数は5月ぐらいに決ってしまいます。

ヨシの長さと本数
 ヨシの場合には6月で成長が終わり、次には9月下旬ぐらいに穂が上がりはじめて花が さき、秋には地上は枯れてしまいます。

 さて、タケの場合にはどうなっているのかは、ヨシとよく似ています。地上にタケノコ が出てくるのはヨシよりもやや遅いのではないでしょうか。そして地上に出てきた後 はどんどんと大きくなり、あっという間に見上げるような高さになります。おそらく毎 日5センチぐらいの成長をしていると思われます。タケの場合には地上部はずっと長く、 おそらく地上部の個体の場合には5〜6年以上は生きています。そしてこの間、おそらく 背が高くなる成長(伸長成長)はしません。

 「おそらく」という言葉が多いのが気にかかりますが、自分でも見ていないし、本に もきちんと書かれていないのです。

 このタケの成長の早さの秘密はどこにあるのでしょうか。それは、成長する場所の違 いです。普通の植物の場合には、背が高くなる場所は茎の先端だけにあるので、その部 分の成長(細胞分裂)の早さが、背が高くなる早さということになります。

 ところがタケやヨシの場合には、成長する場所がたくさんあります。それは節の間で す。タケノコを思いだして下さい。タケノコの皮をはいだものは、節が狭くて、1本の 竹の子には、たくさんの節がついています。あのフシの間が、普通のタケの節の長さに なるまで、ずっと伸びていきます。その節の伸長が同時に、すべての節で起こるために 、タケの成長は早いのです。ちょうどアコーディオンを横に伸ばしたようにしてタケが 成長しているといえば、わかりやすいでしょうか。



 タケの太さの方はどうでしょうか。タケもヨシもそうですが、タケノコの太さでその 個体の太さは決ってしまっていて、地上に出てきて以後には太さは変りません。つまり 地上に出ているタケは、太る事はないのです。タケの太さは、種類によってある程度の 幅はあるのですが、一番大きな影響があるのは、地下茎に蓄えられている栄養分の量で す。栄養分を蓄えた地下茎からは、太いタケが出てきます。

 タケは成長してある大きさになってしまうと、あとはずっと光合成をして養分を地下 に送り、蓄えていきます。体を大きくしないのですから、地上に養分を使う事がないの です。地下がどんどん大きくなり、横にもすばやく広がっていくことは、経験的にも良 く分ります。

タケの成長
 この地下茎から出るタケノコを見ていると、その数に遊びがある事が分ります。地上 に出てきたタケノコはしばらくすると一部が枯れてしまって、大きくならないのです。 地上が荒されて、タケノコがダメになった場合の予防処置で、多いめに地上に出てくる のです。逆に、地下にはすぐに大きくなる事ができる芽が準備されていて、地上のタケ ノコが余りにたくさん刈り取られてしまうと、またすぐに地上にタケノコが上がってき ます。必要な地上のタケの数を予想して、多くなっても少なくなっても、標準の数にあ わせてしまうというタケの面白さを感じます。

 そしてそんなことができるのは、タケが地下茎から増えてくるからです。1ヵ所の竹 林は、おそらく地下茎ではもともとは繋がっていて、全てがクローンだと思われます。 地上部を一つの個体として考えてきましたが、そういう意味では地上のタケは一つの個 体ではないのです。



 タケは草か木か、という話もあります。これについては本によっては違った結果を書 いてあります。これは定義だけの問題ですが、普通には木の定義は「年輪を作り、肥大 成長をすること」です。この定義によれば太さが変らないタケは木ではないことになり ます。人によるとタケが堅くて地上で数年あることから、木だといいます。

 タケは近年になって急速に広がり、里山を維持するために問題になっています。昔は 竹林があるのは山裾や川の横で、山の斜面を上まで竹で覆われているというような状態 の山は見た事がありません。でも最近はそういうような山が各地にあります。地下茎で どんどん広がり、あっという間に背が高くなって枝葉を広げ、中を真っ暗にして他の植 物が成長できなくする竹の性質は、おそらく日本の大部分の林よりも強いのです。

 昔は竹は大切な植物で、現在家の中でプラスティックで作られている物は、ほとんど タケで作られていました。タケノコも取ることができ、竹材もいろいろな用途がありま した。現在はそういう利用が全く無くなってしまい、竹林は竹薮になってしまって、放 置されてしまい、その結果として、竹林はどんどん広がっているのです。竹を刈る事が 里山管理になっていますが、里山が本来は人が利用するための林であったように、竹林 も利用し続けていたから、適当な広さで里山といっしょに共存していたのです(布谷  知夫)



(追加)  「じねんじょ」の発行が遅くなってしまいました。そんなことをやっている間に、台 風がきて、ちょっと朝晩が過ごしやすいようになってきています。滋賀県では私が聞い た最初の稲刈りが、近江八幡市で盆の前に行われていて、驚いてしまいました。8月下 旬になって、ぼちぼちと各地で稲刈りが始まっているようです。湖北ではもっと早いの かもしれません。

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