<自然観察のテーマ・46>
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布谷 知夫
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Nacs-Jのフィールドガイドシリーズ(7)「雪と氷の自然観察」が、準備に入ってから
随分と長い時間がかかって発行されました。カットの一部を橋詰純子さんが担当してお
られます。関西では雪が降り続く地域はあまりないので、雪の観察会はそれほど縁があ
りませんが、雪の降らない場所でも冬場の自然観察のテーマが満載という本です。お勧
めします。 ということで、前書きとは何の関係もないのですが、今回のテーマは春の木の花の色 です。早春には黄色い花が多いと誰かに教えられ、また自分でもなるほどと思って納得 していました。その事には何の疑問も持っていなかったのですが、ちょっとしたことか ら、図鑑で調べてみることにしました。後半で書きますが、夏の木の花について昔に調 べてみたことが有り、まったく同じようにして春の花を数えてみただけです。 最近は余り使われなくなっていますが、保育社の原色日本樹木図鑑という図鑑があり ます。この図鑑の後ろには資料として樹木の花の時期を書いた表が付けられています。 この表に記録されている樹種の数は994種で、そのうち被子植物は941種類です。この花 の開花時期が2月から3月にまたがる事になっている樹種の数を数えてみました。 まずその時期に花が咲いている樹種の数が90種類でした。全体の9%程度ですから、 やはり早春に咲く花の数は少ないということになります。被子植物は80種類で、比率は 8%台になります。 そしてその被子植物の中の黄色い花が咲く樹木の数は17種類、花弁がなく、花粉が黄 色く目立つ花が30種類でした。この時期に黄色く見える花の数はあわせて47種類、全体 が80種類に対して59%です、咲いている木の花の半分以上の花が黄色ということですか ら、やはり早春には、黄色い花が目立つ、といってもいいようです。 春の花 80種類 黄色の花 47種類 花弁 17種類 花粉 30種類 でも春の木の花の種類を見るとちょっと意外なのは、白や赤や目立つ色の花が結構あ ることです。コブシやモクレンの花、ウメとサクラの仲間、ヤブツバキなども早春の花 です。黄色い花は、数は多いのですが、マンサクの仲間、キブシ、ヒュウガミズキの仲 間、サンシュユなどで、花としては美しいものですが、全体にやはり黄色い色の花はや や地味な印象です。 それに対して、花弁がなく、花粉の色が黄色く見える花が30種類と非常に多いことの ほうが目立ちます。ヤナギの仲間、ハンノキの仲間、ヤシャブシの仲間などで、いずれ も早春に垂れ下がる雄花をつけて、風で花粉を広げるような花です。花の時期が少し後 になりますが、ドングリを作るブナ科の樹種もほとんどこの範疇に入りますから、春に は花粉を風散布する樹木が多いということでしょう。 たしか、葉が茂って邪魔になる前に花粉をとばして、同じく裸でいる雌しべに付ける ために、早春の花には風で花粉をとばす植物が多いというような話を聞いたことがあり ます。 早春には花を訪れる昆虫の数や種類は少ないのですが、主として黄色い色が好きなハ エの仲間が陽が当たるような暖かい日には花を訪れているといわれています。黄色い花 は小さいものが多いので目立たないのですが、まだ昆虫の動きの少ない時期に早くから 花を付けて虫を呼ぶという戦略として意味があると言われているようです。でも同じ時 期にも結構いろいろな花が咲いているのを見ると、やはりその時期なりに来てくれる昆 虫を呼んでいるようです。 この早春の花の色に対して、初夏の花の色は白が多いと言われています。先に書いた ようにこれについては以前に別のところに書いたことがあるのですが、黄色の花の場合 と全く同じようにして、白い花の樹種の数を出してみました。 6月の花 329種 白い花 167種(51%) 被子植物での中で、6月に咲いている樹木の種類は329種で樹種の中では35%にあたり 、意外に多いと思いましたが、その中で白い花が50%を越えるというのは、やはり初夏 は白い花の季節といってもいいような気がしました。 けれども早春の場合と同じで、白い花が多いといいながらも、バラ科、ツツジ科、ス イカズラ科などではあざやかな色を持った花もあることが分ります。 初夏の白い花を見ると、よく目立つのは、ウツギの仲間、キイチゴの仲間、エゴノキ、 モクセイ科のネズミモチやイボタの仲間、ガマズミの仲間などです。これらはやや大き な花序を持っていて、道の端や里山などによく目立つために、より白い花のシーズンと して特長があるように見えるのかもしれません。また高木になる樹種でも、ネジキやリ ョウブなどのように、里山で非常に目立つ樹種が上げられます。 白い色というのは、自然の中では非常に目立つ色の一つです。人間に取っては赤や黄 色などの鮮やかな色が目立つようですが、自然の緑や景色の中では白い色というのは人 間から見ても目立った色です。それに対して、花が来てほしいと思っている昆虫の場合 には、人間とはまた違った色を見ている事が知られています。 昆虫の中には紫外線の波長を見ることができるものが多く、白く見える花にも、紫外 線を感じることができるようなフィルムで写真を撮影すると昆虫が見ている花を見る事 ができます。そういう写真を見ると、花びらに模様が写しだされることがあります。人 間が見ている能登は別に昆虫が見ている花の色も複雑なようです。 (布谷) |
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