<自然観察のテーマ・47>
|
布谷 知夫
|
|
もう桜も散ってしまいましたが、いろいろな花がさきはじめ、草本も立ちあがってき
ました。今年は博物館の植物の観察会を12回行なうことにしています。一般公開の行
事とメンバーだけの行事を6回づつの予定です。ちょっと大変なのですが、先日、最初
の会を行ないました。春の会で見た幾つかの話題を上げてみます。 1) ハコベの毛 町の中ではオランダミミナグサばかりが街路樹の下などに目立ちますが、畑などがあ るとハコベやウシハコベなどが出てきます。オランダミミナグサやウシハコベの花びら の形を見てもらって、花びらが5枚あり、花びらの先端がすこし凹んでいることを見て もらいました。とにかく小さいので、大変です。そしてやがてハコベを見つけて同じよ うにハコベを見てもらいます。ここまではご存知と思います。ハコベは全体にこぶりで 緑色が強く、毛が余り生えていませんので、別の種類らしいことはすぐに分りますが、 よく似ています。そしてハコベの花びらは10枚と見えてしまいます。この花びらを丁寧 にバラして根本で繋がっていることを見てもらいました。ハート型の両先端を引き伸ば したような形に、参加者は驚いて見ておられました。 花の形は観察会でよく見られていると思いますが、ハコベの毛はあまり見ていないの ではないでしょうか。ハコベの茎は少し斜めに立ち上がり、二つに枝分れしますが、そ の先端から、茎に線を1本引いたように毛が生えています。茎の一方向だけに毛が生え ていることになります。そして枝分れをした場所で毛の繋がりがかわって、また下の茎 でも線を引いたような毛が並んでいます。この毛の線の位置が決っているようで時々そ の決りになっていないように毛が生えているように思います。こんど外に出た時にハコ ベを探して眺めてみて下さい。 2) 芽鱗(ガリン) ちょうど木の芽が伸びはじめる時期で、枝や葉がどのように大きくなっていくのかが よく分ります。町のなかでもアラカシやシラカシ、クスノキなどはよく見られますが、 先端の枝を伸ばして、小さな葉が着いているのが分ります。カシの仲間は、枝を伸ばす タイミングがそろわないようで、同じ日でもすっかり伸び切ったように見える個体とま ったく芽が動いていない個体とがあって、比べてみると伸びかたがよく分ります。 ついでながら、常緑樹は今が紅葉と落葉の時期です。木の下のたくさんの葉が落ちて きていることを注意してみましょう。枝に残っている葉には、葉の色が黄色っぽくなっ たりして色が変っている葉があります。その葉が着いている場所は、かならず枝に着い ている葉の一番下です。つまり古い葉から順に落ちることになります。 枝についている色の変った葉を指でつついてみましょう。簡単に離れてしまいます。 もう離層ができていて、強い風が吹けば直に落ちる体制です。つついて落ちることを確 認すると、目の前にたくさん落ちている落葉が改めて目に入ります。 ところで落葉とともに、落ちているミニチュアの落葉のような形をしたものを探して みましょう。クスノキの下であれば、いくらでもあることが分ります。これが芽鱗です 。つまり冬芽の外側を守っていた小さな葉といえばいいでしょうか。冬芽の中には、新 しい枝の先端が入っていますが、その新しい枝の根本の葉が鱗状になって枝を守ってい るのです。考えてみるとその位置関係はとても変ですが、たくさんの芽鱗を集めて並べ てみると、小さな葉がだんだんと大きくなっている様子が分ります。芽の外側(枝の下 側)の芽鱗が大きくなります。 そしてこの芽鱗が集って着いていた跡がいわゆる芽鱗跡(がりんこん)とよばれる枝 についたリング状の模様です。この芽鱗跡は冬芽があった場所を示していますから、こ の跡の位置を探していくと、仇の年齢が分ることは以前のこの記事で書いたことがあり ます。 3) 花外蜜線 花は花粉を運んでもらうための虫や鳥を呼ぶために、目立つ花びらを付け、また積極 的に来てもらうための報酬として蜜をだしたり、花粉の一部を食料として提供します。 この蜜は花の奥にあるのが普通ですが、まったく違った場所から蜜をだす種類がありま す。よく例にあげられるのがカラスノエンドウです。ちょうど今からしばらくが花盛りです。 花の中にも蜜はあると思いますが、花の柄の下に、花を守る葉にあたる小さな葉が着 いています。苞(ほう)といいます。この苞の下側にかなり大きな黒い点が見えます。 時期によればそこに蜜が出ているのが目でも見えます。もちろんなめてみると甘い味が します。これが花外蜜線(かがいみつせん)です。こういう蜜線を持っている植物は他 にもありますが、なにをしているのか、どういう役に立っているのかは余りよく分りま せん。普通には、アリを呼んで、他の植物体を食べたりする虫などが来ないようにして いるといわれています。いわば用心棒を雇っているわけです。確かにそういうアリが来 ているのを見ることはあるのですが、カラスノエンドウではアリを見ないように思いま す。これも野外に出た時に、ぜひ観察してみて下さい。 4) ヤエムグラ ヤエムグラが立ち上がって生えています。ちぎって近くにいる人に投げつけると服に くっつきます。クッツキムシです。このくっつく理由は、ヤエムグラの茎を手で触って みるとすぐに分ります。小さなトゲが生えていることが分ります。このトゲが服にひっ かかるわけです。そうするともちろんヤエムグラを投げつける相手は、毛糸のセーター などを着ている人が理想的ですし、繊維の荒い服を着た人を選ぶ必要があります。そし てここまですれば、トゲの向きを確認しておきたいと思います。指で茎を下から上にな ぞるとひっかかります。反対に上から下だとひっかかりがありません。トゲはサカトゲ です。あのヤエムグラのような細長い体は自立して体を支えることができません。かと いってツル植物のように近くにあるものにつかまる器官も持っていないので、トゲで引 っ掛けて立ち上がっているといわれています。こういう植物をよりかかり型の植物とい っています。植物のトゲはほとんどがサカトゲです。おそらく同じ理由でしょう。しっ かりした茎を持っているように見える例えばバラでも、やはりサカトゲです。 さて、ヤエムグラの花が咲いています。茎は断面が四角形です。花の柄がでている場 所を見ると、二本出ている場合には、四角の茎の反対側から出ていると思います。その 一段上の花の位置はどうでしょうか。90度の位置になっていないでしょうか。 ヤエムグラの葉は輪生状にでていますが、8枚とはかぎらず、かなりいいかげんな数 です。実はこの葉に見えるものの中で本当の葉は2枚だけで、それは花の柄が出ている 葉です。葉の上には芽がある、ということを以前に書いたことがあります。芽が着いて いる位置にあるのが葉で、対生に葉が着いているらしいことがわかります。そうすると この他の葉は何かということになります。葉でもいいわけですが、厳密には若い葉を守 るような役割をする託葉(たくよう)というもので、多くの植物では葉が大きくなる時 に落ちてしまうのですが、残っている植物もあります。バラ科の植物では残っているも のが多いですし、カラスノエンドウでも残っているのが見られます。 このヤエムグラの性質はアカネ科というこのグループの共通の性質で、アカネ科の植 物は、それぞれに変った葉を持っていたりします。比較してみると面白いです。(布谷 ) |
| じねんじょレターズ・トップ |
| 大阪連絡会・ホームへ |