<自然観察のテーマ・48>
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布谷 知夫
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前回に続いて、小さな観察の例を幾つか並べてみます。こんな形の記事を書くことになるのは、あまり野外に出ていないからで、いいテーマを思いつかなくなっているのです。 1 カラスムギ ちょうどイネ科の植物の花が終わって、実が散りはじめたところです。栽培植物と野性の植物との違いの一つは、野性では実の熟する時期がずれて一致せず、熟したものから直に落ちてしまうことです。気候の変化等の危険をさけるために、ばらばらと熟す方が全体としては安全で、また熟したら直に地面に落ちてしまうほうが確実ということでしょうか。栽培化をするということは、収穫がしやすいように、一斉に熟して、かつ熟した実が落ちない、という性質を作ることなのです。 そういう野性のイネ科植物の中にカラスムギという植物があります。カラスムギはオートミールなどを作るオートムギの野性種であるといわれている植物ですが、川の堤防等のやや水気があるような場所でよく見られます。どんな植物なのかは図鑑を見て頂くとして、落ちてくる実は図のようにとても変った形をしていることと、長く伸びたノゲ(と呼ばれている堅い毛)の根本の色が黒いので目立ちます。 さて、このノゲが途中で折れ曲がっているのですが、良く見ると全体に螺旋のねじれ模様が見られます。このねじれは、水にぬれるとほどけてきます。つまりノゲが回転することになります。またこの実の元の側には、堅い毛がたくさん生えています。 実際に野外で地面に落ちた実はどうなるのでしょうか。地面に寝ている実に雨が降ってきてノゲがぬれると、ノゲがクルクルと回転します。だいたい5〜6回転するようです。この実の元の側がやわらかであれば、実が土の中に埋め込まれ、「かえし」にあたる沢山の毛によって、地表に出てきません。こうして水の力で自分で地面に入っていく、つまり種まきをするのです。 ところでこの動きを実際に見ようとするとどうすればいいでしょうか。実が自分で地面に入っていく様子を見ようとして、砂を入れた容器に実を沢山入れて、霧吹きで水を与える ![]() と、見事にすべての実がごそごそと動きだします。ところが見ていてもジタバタと動いているだけで、なかなか話の酔うには地面に入っていかないのです。この動きを見ていると、どうやらノゲの先の側が地面の上の物にひっかかって固定され、実の方がうまく回転するような状態にならないとダメなようです。つまり砂の上にまいた実では、いつまでたっても、ジタバタジタバタするばかりで、いつまでたっても地面には潜らないのです。 やはり自然な状態で落葉や小石等がある中にうまく落ちた実がうまく地面に潜るようです。まあそれはともかくとして、例えば実を手に持って、ノゲを濡らすとすぐにノゲが回転しはじめます。文字どおりすぐに動きはじめるので、植物が動く、ということを体験するためには、いい材料です。野外でカラスムギを見つけて、近くに水が無ければ、ペロッとなめてやれば、それだけで回転が始まります。 2 古い葉と新しい葉 つい先日までは、常緑樹の落葉の季節でした。大部分の常緑樹は新芽が伸びはじめる直後のころに葉を沢山落とします。そして「竹の秋」という言葉はちょうど梅雨前ぐらいの時期でしょうか、タケの葉が黄色くなって、落ちてきます。 ところで、今ぐらいの時期にもう一つ、木の葉が落ちてくるのを気がつかれたことはないでしょうか。落葉樹の木の下に、黄色く色が変った葉がたくさん落ちているのをみることがあります。地面に気がつくほどに葉が落ちている場合には、何か特別な原因があると考えるべきです。たとえば緑のままの葉がおちていれば、物理的に何か力がかかったか(鳥か、人間が無理にゆすったか、など?)、害虫がついて葉をきりはなしたか、等ということになります。葉のどの部分が、どのような状態で切り取られているかがわかれば、だいたいの見当はつきます。 秋ならば紅葉ということになりますが、今の時期でも黄色い葉が紅葉して落ちているのを見ることがあります。これも虫がついて葉が痛んで落ちてきている場合もありますが、もう古い葉が落ちてきているのです。その区別をするためには、その木を探して、葉がどういう状態になっているのかを、見れば分ります。全体が緑の中で、黄色い葉が中に混じっているような枝が沢山あるはずです。そして良く見ると、枝の一番元のがわ、つまり一番古い葉の色がもう黄色くなっているのです。そしてそれ ![]() が落ちはじめています。さらに気を付けて見ると、その落ちている葉はたいていは、ややちいさくて、新しい葉とは形が違います。 木の葉には、冬芽の中で新しい葉がすべてできてしまっていて、春の葉の数が決っている物もあるのですが、年間を通して、秋に寒くなってくるまで、ずっと枝を伸ばし続け、葉を作り続ける種類もあります。こういう種類では、一番最初に開く葉は、とりあえず作っているというと言い過ぎかも知れませんが、最初に葉を広げて、すぐに光合成をするためのまにあわせのような葉を作っているのではないかと思いたくなるような葉が開きます。たいていはちいさく本来の葉とは形も違うのです。こういう葉は、まず光合成をして、ほかの葉が開くのを助けて、その後は早々と仕事を終えて、葉の中の養分を枝に戻して(色が変って)落ちてしまうのだろうと思います。葉のなかでの役割分担があるようなのです。 こういうような葉を落としている樹種は、条件がいい時にはずっと成長を続ける種類ですから、森の優先種ではなく、ややパイオニア的な落葉樹ということになります。野外でそういうような葉を落としている樹種を探してみて下さい。 3 タケの年齢 先日、タケの枝の年齢も観察して分る、という記事を見てとても面白く思いました。年に一度だけ、それも枝の先端だけしか冬芽ができないマツのような樹種では枝の数を見ていくだけで樹齢まで分りますし、大部分の樹木でも、冬芽の跡(芽鱗跡:がりんこん)を見ていくことで数年分は確実にわかります。でもタケというのは考えてもみませんでした。どこか近くでタケが生えているいところがあれば、じっくり観察してみて下さい。 先日の休みの日に町の中を歩いて、近くのお寺でタケを探して枝を調べてみました。どうやら先端と枝先とでは違いがあるというか、先端の方がはっきりとして分りやすいようなのですが、やはりタケでも冬芽の跡で数年の年が読めるように思います。 タケの場合には一年に伸びる枝の枝分れが複雑というか、決りがないように見えるので、冬芽の跡が数列のリングになっているのを探すことになります。従って、茎の先端は毎年伸びているようなので数を数えることができるのですが、枝では良く分らないようなのです。ぜひ御自分でも調べてみて、教えて下さい。(ぬのたに) |
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