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<自然観察のテーマ・49> 布谷 知夫
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実はいつ大きくなる 今年の盆にはもう稲刈りをしているのを見ました。田植えから3ヵ月半ほどでもう稲 刈りですから、その速さは驚くばかりです。背を低くして、でも葉の量はできるだけ 多く、また密に植えることができるように、葉ができるだけまっすぐに立ち上がるよ うに品種改良をしています。昔の秋のたんぼの稲の大きさと今の稲とは明らかに形が 違っていることには、なかなか気がつきません。とにかく背が低いですね。 さて、稲の実が実って、だんだんと大きくなってくるその速さは、また驚くほどに 早いものです。穂が立ち上がってきたと思ってみていると、すぐに穂の頭がたれてき て、実が充実してきているのがわかります。今年の稲がいつごろ穂を立ち上げてきた のかを記録していません。7月の末ごろだったのではないかと思います。 ムギの穂もそうでした。それこそ一日で穂が立ち上がってきたと思えるものでし た。昨日は穂なんてなかったのに、と思ったものです。 この速さは、植物の一般的な性質です。今ちょうど、ドングリが木の枝で目立つよ うになって来ました。春に花が咲いて、秋にドングリになるような種類(アラカシや コナラ)の場合、花が咲く5月ころから実が熟する9月末くらいまで、均等にだんだん と大きくなるわけではありません。むしろずっと小さいままでいて、夏の終わりころ から急に大きくなってくるのです。この様子を琵琶湖博物館のフィールドレポーター をしている中後さんという方が計測してくださいました。春から7月ころまではほとん ど大きくならないのに、8月、9月と急に大きくなっていく様子がわかりました。 これはおそらく植物なりの危険防止の対応と思われます。つまり春に咲いた花のな かで実になることができるものも、虫に食べられたり、風で落ちたりと秋までにダメ になってしまうものがかなりあります。そうすると、全部を春から大きくするより も、できるだけ遅くまで実は小さいままで置いておき、確実に全部が育つと見切りを つけた時点で一気に実を大きくするほうが、無駄に実を大きくするための養分を使わ なくてもすむことになります。おそらくそういう何割かはだめになる、という計算の 元で植物は対応しているのだろうと思われます。そして秋に実が大きくなったころに 台風が来て出来上がった実がバラバラと落ちるということになります。ちょっとでき すぎでしょうか。 一番最初に紅葉する葉の位置 秋の紅葉が始まりますが、一番最初に紅葉が始まる葉は、どの位置にある葉なので しょうか。樹種によって違うと思うので、実際にいろいろな木を見て、様子を観察し てみてください。 ひとつはモミジの仲間などの日がよくあたる場所から紅葉が始まるような気がする 種類です。上側の大きく伸びた枝から色が濃くつき始める様子を見ることができます。 もうひとつは、すべての枝の古い葉から順に色が変わってくるタイプです。ほぼ黄 色く色がついてくるので、緑の葉のなかにバラバラと黄色い色が混じり始めるのがわ かります。以前にもここで書いたことがありますが、年間を通してずるずると枝を延 ばし続けるような成長をするタイプの樹木があります。そういう樹木では、最初に春 に枝が伸び始めるときには、本来の葉ではなく、とりあえず光合成をするため、とい うような少し小さい、形も本来の形とは違った葉をつけ、だんだんと本来の葉の形や 大きさになってきます。そういう最初にできた葉から黄色く色がついてきて、先に枝 から落ちていきます。ですからある時期には、樹木の下には、黄色い色の葉が落ちて 目立つ、というような状態になります。ヤナギやハンノキの仲間、場合によっては、 エノキやムクノキにもそういう傾向があるようです。そういう見方をすると、早くで きた葉は、早くに落ちる、という単純なことがよくわかります。 そしてもうひとつは、どこから色が変わっているのか、まったくわからないような 紅葉です。見ていると木の全体ではなく、一部の枝だけが紅葉をしているような場合も あります。なぜその枝なのかがまったく見た目にはわかりません。紅葉というのは本 来は、秋になって気温が下がってきて、その木が元気に維持できなくなってきたため に、葉を切り落とすわけですから、早くに紅葉を始める枝は、虫に食われたり、何か 問題が生じたのかもしれません。早くに紅葉をした枝が、その翌年にはどうなるの か、ということを見ておけば、何かわかるかもしれないと思います。 紅葉が始まる時期に、何が起こっているのかを見ておきたいと思います。(布谷) |
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