?地生態学とは?
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あまり難しく考えるのはやめましょう。さらっと読んでください。
皆さんは、地生態学とか、景観生態学とか、聞いたことがありますか?
昨今の登山ブームや、アウトドアブームで、自然への関心は、高まり
つつあります。 また、あちこちで自然観察会や、フィールド観察が
行われるようになりました。こうした観察会に参加したことありますか?
実際、こうした自然観察会のほとんどが、植物のみの観察や、野鳥のみの
観察、あるいは、地質のみの観察といったものではないでしょうか。
もちろん、参加される方々の興味もそれぞれの対象に限定されていて、
そういう意味では、非常に有意義な観察会なのでしょう。
しかし、実際の自然は、見たとおり単純なものではありません。
そこには、地形、地質、土壌、気候、植物、昆虫、動物、人など、
様々な要素が複雑に絡んでいます。その一つ一つを単独で見ただけでは、
決して自然の観察にはなっていません。こうしたいろいろな要素を
ひっくるめて、まとめて把握してしまおうというのが、地生態学なのです。
例えば、東京近辺にも、春先になるとカタクリがその可憐な花を咲かせます。
このカタクリ、かなり特徴的な分布を示します。東京周辺では、ほとんど
北向きの斜面にしかでてきません。なぜでしょう。カタクリから目を離して、
少し上を見てましょう。そこは、雑木林になっていて、コナラやクヌギ
といった落葉広葉樹が茂っています。秋になると紅葉し、やがて葉を落とします。
そして明るくなった林床に、太陽をいっぱいに浴びて春、カタクリが
一斉に花を咲かせます。こうした雑木林は、江戸時代から人が生活の一部として
作り上げてきた二次林です。
もう一度視線を下に戻します。非常に微妙な差ですが、カタクリの分布して
いるところは他に比べてちょっと緩やかになっています。これは、非常にミニ
スケールな扇状地のようなもので、地下水が豊富で、夏場の地中温度の上
昇が、比較的抑えられます。夏場、カタクリは球根としてじっと地中にいます。
なんだか、いろいろな繋がりが少しずつ見えてきましたが、まとめてみましょう。
カタクリは、ずっとずっと昔、地球が寒かった頃、北の方からやってきました。
そして、だんだん暖かく戻るとともに、限られた場所にすむようになりました。
それが、北向き斜面の、夏の地中温度があまり上がらない、しかも、春には日
がいっぱい射し込む、そういった場所に生息するようになったのです。いわば、
氷期のレリック(遺存植物)ですね。そして、人間の作り上げた二次的自然の中で、
生き残ってきたのです。
こうやってみると、カタクリの分布はけっこう、東京周辺では貴重なんですよ。
いままでの、分割された見方では、レッドデータに載ってるような貴重種ぐらい
しか、保全の対象になりずらいのですが、地生態学的に見ると、つまり自然の
全体像を把握すると、もっともっと、大事な自然の素晴らしさが見えてくるのです。