・Φ工法開発の経緯
コンクリート等の躯体面に内装下地として一定の間隔でダンゴ状の接着剤を塗りつけておき、
その上に石膏ボードを仕上げ面に合わせ圧着する石膏ボード直貼り工法は、
(1)工期が短く、コストが安い
(2)躯体面の精度が多少悪くても仕上げが簡単
等の利点から、GL工法という呼び方を持って普及している。
しかしこの工法は、低周波数域での共鳴透過による遮音欠損、
および内装表面材である石膏ボードのコインシデンス効果による高周波数域での遮音性能の低下が
不可避でありました。
このため、集合住宅等の隣戸間の界壁に施工した場合、隣戸の会話が良く聴き取れてしまうことや、
壁面に物が当たったりする衝撃音が隣戸に伝わりやすい等の問題点が指摘されている。
この工法の音響的欠点を度外視しているという現場では、この工法は現実に多用されていますが、
遮音性能の確保が不可欠な界壁では、モルタルをコンクリート躯体に薄く塗る、いわゆる湿式工法により
遮音壁を構成し、遮音性能の確保を図っているのが現状です。
この湿式工法壁においては、モルタル薄塗りのための工程が何段階か必要となること、
仕上げ面の精度確保に細心の注意が必要なこと、等、
施工面の欠点の他に、壁面の亀裂発生という、製品としての経時変化上の問題も新たに発生するため、
乾式工法壁の改善が強く求められております。
また、従来から行われているGL工法の遮音欠損改善の研究は、
共鳴透過周波数を評価対象周波数(125Hz)未満に移動させることによって対応しようとしてきました。
すなわち、GL工法における共鳴透過周波数は、
(1)空気バネ定数の低下
(2)内装表面材料の有効質量の増大
(3)内装表面材のバネ定数の低下
という方法を採用し、対応しようとしてきました。
しかし、この方法は、界壁の仕上げ寸法の増大をもたらしたり、内装表面材の重量が大きくなりすぎたり、
また、内装表面材の機械的な強度の上から問題となるようなボンドピッチとしたりすることとなり、
施工面からの利点を損なうような手の掛かる方法であり、実用上施工不可能な工法となっておりました。
この問題の解決に機械振動学的なアプローチを試みたいと考えていた私達は、古紙再生紙を活用した制振建材を
開発しようとしていた企業の方と、建築の現場を良く知っている企業の方との3者で、共同で研究に取り組む
こととしました。
そして、GL工法における遮音欠損の改善を図るために、次のような考え方で実験計画を立案しました。
すなわち、GL工法のような壁構造においては、ある周波数域において共鳴現象を起こすのは不可避と考え、
その時の遮音欠損は内装表面材の固有振動によるものとし、この遮音欠損を少なくするためには内装表面材を
剛性が大きく、かつ、制振性能の大きな部材に代替し、この部分からの発生音を減少させてやるとともに、
遮音欠損が内装表面材の固有振動に起因すると考えた場合、接着剤の配置の仕方もこの改善に大きく
寄与するはずであると考えました。
そして、
(1)低コストで供給できる新しい材料を開発する
(2)工法的な変更は伴わないようにする
(3)仕上げ寸法を増大させない
ことを基本的な考え方とし、
(1)内装表面材として剛性が大きく、かつ、制振性能の大きな石膏ボード複合板を用い
(2)接着点数を増やさず
(3)接着剤の配置に工夫をこらす
従来の工法とは全く逆の、新しい石膏ボード直貼り工法(以下Φ工法という)を開発し、
残響室を用いた実験室実験と集合住宅及びホテルを用いた現場実験によりその効果を確認しました。
この工法を何故「Φ(ファイ)工法」と名づけたかということですが、理由は二つあります。
一つは、この工法の一番のポイントは接着剤をどのように配置するかです。
GL工法 壁や乾式間仕切壁における低周波数域の共鳴透過周波数は、内装表面材の密度や厚さ、
空気層の厚さ等で変わってきます。
そして、この共鳴透過周波数において内装表面材がどのような振動姿態となるかは、
やはり内装表面材の厚さや寸法で変わってきます。
すなわち、内装表面材を押さえる接着剤等の位置はこれら様々な因子の関数として表現されます。
通常、数学的にはこのようなものの取り扱いを関数φ(ファイ)として表現します。
この工法の名前の由来はここからきております。
もう一つは、この共同開発研究に中心的に関わった人、あるいは企業のイニシャルを工法の
名前の中に入れ込みたいと考えたからです。
機械振動学的なアプローチを試みた大島敏(当時都立工業技術センター)の「O」、
制振材料の開発の中心となった志村馨氏(当時潟^カラ企画代表取締役)の企業名の頭文字から「T」、
建築の現場の状況に詳しい平野興彦氏(当時滑ツ境工学研究所代表取締役:故人)の「H」を、
大文字のギリシャ文字「Φ」はうまく埋め込んでいると考えたからです。
乾式間仕切り壁の遮音欠損の改善も、全く同じ考え方で解決できました。
そして、私たちは、給排水騒音のなお一層の低減に関しても、制振性能の大きな
内装表面材を用いることによって大きく寄与すると考えております。
詳しい内容につきましては原著をご参照下さい。また、不明の点につきましてはメールにて
ご相談ください。
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