ブナの章

 山奥を彷徨い歩いていると、不思議な感覚に襲われる。

 上手くもないクロカンスキーで一人のんびり歩いていると、

時々、誰かに見つめられている気がすることがある。

辺りを見回しても、誰もいない。

兎か熊にでも見られているのだろうか。

視線の出所と言えば、巨大なブナの木があるだけ・・・。


 目の無いブナが見るわけ無いとは、相当の思い違いである。

彼らはものを思い、囁き、通りすがりの我々を見つめる。

彼らは人では無い。もちろん動物でも無い。

そして、ブナだから木では無い。

だから彼らは、妖怪なのだ。