![]() 若者が夢を持てる社会に (ゆめ総体に想う) 2003年、全国の若者が長崎に集い、「全国高等学校総合体育大会」が開催されまし た。私も「かきどまり陸上競技場」での開会式に参列して、スポーツにかける子供た ちの勝ち負けを超えた純粋な情熱に久しぶりに心を洗われました。 今、私たち大人は、小学校、中学校、高校、大学に通う若者たちに何を見ているでし ょうか。若者たちから夢を早々と奪い取り、"夢早退"の世の中にしているのでは、若 者たちから夢をもらうのでなく、若者たちの将来を考えてあげるべき「ゆめ」総体だ、 と開会式が行われたスタンドで、思うことしきりでした。 私たち大人は、どうして若者たちに働く場を提供できないのでしょうか。長崎県内 の高校、短大、大学を本年3月に卒業した新規学卒者のうち求職希望者数は高校、短 大、大学を合わせて6,935名です。うち就職内定者は5,762名となっています。実際の ところ、就職することを途中で断念してフリーターや無業者の道を選んだ学生、生徒 も相当数いますが、その実態はこの統計から除かれています。 一方で13年の事業所センサス統計によると、長崎県内には76,403の事業所があり、 うち従業員が10人以上の事業場は14,168所もあります。一事業所で一人採用する気構 えで臨むと、この問題は簡単に解決していきます。 若者たちの「やる気の無さ」、「無責任」、「常識の無さ」を嘆く前に、そのような 子供たちの大量生産に手を貸して来た主犯格は、私たちであることに気付くべきです。 今となっては、「家庭」、「地域」、「学校」、「職場」の総ぐるみで若者たちを"優 しく育てる"ことが必要だと思っています。皆さん 何とかしましょう! ![]() 左は「長崎新聞 15年5月29日号」 (注) 15年5月に開催された県総体の入場行進 右は長崎ゆめ総体総合開会式15年7月28日での公開演技 諫早の伝統芸能「まつりのんのこ」の13校 1200名 の演技 ![]() 長崎県入場 皇太子のおことば ![]() 宣 誓 舞 踊 ![]() 龍 踊 コッコデショ (誰でも大学生に) 中学校も高等学校も大学に入学するための通過地点になっていて、生徒たちはひた すら大学受験のために必要な勉強だけを優先的にする、受験テクニック・指導として、 「生物」を取らずに医学部への入学を目指したり、「物理」を取らずに工学部を目指 したり、受験に出る科目の「国数英理」だけとか「国英」だけしか勉強しないで大学 に入学してくることが起こりえます。日本の歴史を知らない、世界史を知らない、国 際化社会でどのように生きていくのであろうか。音楽や美術のような授業を軽視する ために、幅広い人間性や教養、常識を培うことができないままに、大学生になり、そ して卒業して社会人になる学生たちがいたとしたら恐ろしいことです。何とかしまし ょう! (戸惑いの大学生活) 大学に入学することは、自己実現のためのあくまでも手段であってほしいのですが、 希望の大学・学部に目出度く入学できた学生も、力及ばず偏差値や高校教師の誘導で 射止めた大学に入学してきた学生も、学歴を掲げて有名企業の社員や官僚になってい くことがゴールだとしたら、さびしい限りですね。 大学の授業に出てみて、高校時代の授業方法と違い、「問題」が出ない、「暗記」 ものが無い、「教科書」が無い、「どこどこにアンダーラインを引きなさい」と言わ れることは無く、「授業の内容は全てを尽くしているわけではなく、全体の体系の一 部に過ぎないので足りないところや不足しているところがあります。興味が有ればそ れは自分で補いなさい」、「自分で問題を見つけなさい。そして解決方法も考えなさ い」、「早くやりたいことを見つけなさい、そしてそれに取りかかりなさい」、と教 官に言われ、主体性を求められることに学生は戸惑います。嗚呼 それでも、何とか しましょう! (乏しいコミュニケーション力) 若者のカップルが連れ添って歩いているときに見かける光景に、二人が別々の友人 にケイタイをしている姿や別の友人から掛かってきたケイタイに返事(信)するため 連れの友人を放っておいている姿を見かけますが、お互いに話すでもなく、第三者と 連絡を取り合っているのは、どうにもオカシナことだと思います。せめて、二人でデ ートの時にはケイタイの電源を切ることはできないのかとやきもきするばかりです。 学生の表現力の乏しさは、レポートとかプレゼンに現れてきています。しかも加速 化が進んでいるように思えます。長い受験時代を通して作文や表現力に力を入れたり することが無く、本を読むことを軽んじていたことに輪をかけて、ケイタイ文化の氾 濫が有効に効いています。「どこ、何してる、どうする」くらいで一日の用が済むよ うな会話では、ボキャブラリイは育たないしコミュニケーション力は失われていきま す。キチンとした挨拶や会話を親とか地域の人とか学校の教職員とか、日常生活の中 でして来なかったことの影響が、小中学生、高校生、大学生そして若年層に現れてい ます。何とかしましょう! (新卒採用は、かつての「中高卒」から今は「大卒」中心に) 昭和40年・1965年3月卒の新規学卒採用者は150万人で、そのうちの中卒 者は62万5千人と全体の42%、高卒者は70万人で47%と両者で90%を占め ていました。この時代には、大学に進学する者は少なく、中学校や高等学校を卒業す ると就職するのが一般的でした。大学に入学する者が少なかったので、卒業後に就職 する者も13万5千人と全体の9%に過ぎなかった時代です。 平成14年・2002年3月の大学卒の採用数は31万1千人で、新卒採用数63 万3千人のうちの49%と半数に迫り、学歴別では最も多くのシェアを占めるに至り ました。この割合は、37年前の中卒採用者の割合を大きく超えてます。 「大卒」ラベルのインフレ化が進んでいます。 (増える執行猶予・モラトリアムを求めて卒業していく子供たち) 中学校を卒業しても就職せずに高等学校を目指し、高等学校を卒業しても就職せず に、短大や高専、そして大学に入学してくる学生・生徒の数はどのようになっている のでしょうか。さらには、大学を卒業しても就職もせずに、大学院に進学したり、あ るいは、ただ卒業する若者の数はどの程度存在するのでしょうか。 文部科学省「学校基本調査」でその実態を見たいと思います。 高等学校卒業生の進学率は、この二年、全国平均で40%前後で推移し、長崎県で は37%台で推移しています。一方、就職率は長期に渡って低下傾向で、14年3月 卒が全国平均で17%、長崎県が27%となっています(※就職希望者を分母にする と、就職率は83.6%になります)。この進学率と就職率の他に専修学校等進学率 があります。しかし、これらに進む子どもたちの他に、もう一つの集団があります。 モラトリアム(猶予期間)(第1図の(注)を参照)状態に留まっているグル一プ層とみ られます。長崎県の高等学校卒業生のデ一タで見てみましょう。14年3月の卒業生 18,998人の10.7%に相当する2,036人が就職も進学もせずに卒業した 生徒の数です。12年から2千人を超えるようになっています。 これは大問題だと言えます。 ![]() 資料出所:長崎県統計課「学校基本調査」 (注) (1) 進学者には、大学、短大、大学・短期大学の別科・通信教育部、高等学校専攻科、盲・ 聾・ 養護学校高等部の専攻科進学を含む。 (2) 専修学校等進学者とは、専修学校(専門課程)進学者、専修学校(一般課程、高等課 程)、 各種学校(予備校等)、公共職業訓練施設等の入学者をいう。 (3) 就職者には進学しながら仕事を持っている者を含む。 ![]() (注) (1)モラトリアム数とは、進学もせず、就職もせずに卒業した数をいう。ただし、死亡も含 む。 (2)モラトリアム率とは、卒業者数に占める割合である。 (3)モラトリアム・人間とは、いつまでもモラトリアム(猶予期間)の状態に踏みとどまって、 実社会に同化できないでいる若者たちをいう(講談社「日本語大辞典」から引用)。 大学生にも同じような傾向が見られます。全国の大学生の就職率は14年3月卒が 57%、大学院進学率が11%で、モラトリアムを含む就職も進学もしない率が32 %となっています。この就職も進学もしない率は平成2年3月卒の13%から次第に 増えはじめ、7年が24%、12年が34%となっています(第2図参照)。 しかし、子どもたちはやがて働いて収入を得て自活・自立の道を歩まないとならない のですが、自立はできるのでしょうか。親離れの覚悟はいつどのようにして芽生えて 来るのでしょうか。親離れさせましょう! ![]() 資料出所:文部科学省「学校基本調査」 (注) (1)卒業生に占める割合である。 (2)進学者とは大学院研究科、大学学部、短期大学本科、専攻科、別科のいずれかに進んだ者 である。 学 校 に 通 う 意 義(卒業者) (%)
資料 総務庁青少年対策本部「日本の青年 第6回世界青年意識調査報告書(平成10年12月)」 ![]() (%)
(採用抑制に精を出す傍ら、息子や娘をパラサイトさせるお父さんたち) 文部科学省の調査によると、新卒者の就職数は減少傾向が続いています。経済の高 度成長期の昭和40年・1965年3月卒の企業の採用数は年間150万人と日本経 済の拡大期にあたり絶頂期でした。それから、35年後の日本経済がバブル経済とい われていたピ一クの頃の平成2年・1990年3月卒の採用数も121万人とかなり の採用数でした。そして、産業界や企業の成長、拡大に合わせて企業が必要な要員が 確保できるように、高等学校や短大・高専、大学の入学定員数も増え続け、大学の大 衆化が進んで来たのですが、平成12年・2000年3月卒の採用数は72万5千人、 平成14年・2002年3月卒の採用数は63万3千人と、1990年の採用数の半 分に迄削減し、2000年と比べても2年間で10万人近くも削減するという、情け 容赦の無い対応を産業界は行っています。新卒者にとっては「学校は出たけれど失業 が待っている」というような悲惨な状況をつくり出しています。 バブル経済が破綻した後の、不良債権の処理とか構造改革の促進などで日本経済が 低迷しているからといっても、手の平を返すように、新卒者に仕事を与えないという ような企業、官庁の対応は、果たして許されることなのでしょうか。 「組織の存続のため」とリストラを実行しているのは、組織の中枢にいるお父さんた ちで、その犠牲になっているのは自分たちの子供、との認識はあるのでしょうか。そ してその親たちが、息子や娘にパラサイトを許したり、フリーターを許したりしてい るとしたら、息子や娘を本当に駄目にしている張本人は「親たち」でしょうね。 「2、3年ならお父さんの収入で何とかなるから」とか「やりたいことが分かるまで 良く考えなさい」とか「無理してヘンなところに就職するなら」とか「公務員になる ために専門学校に通うなら」、と言うくらいなら、中高年階層の賃金を20%くらい辞退 して、その分で新卒者に職場を提供する勇気は無いのでしょうかね。 子離れできていないお父さんやお母さんはいませんか。子離れしましょう! (若年者の失業率が高い) 第3図を見て下さい。 我が国の失業率の推移をみると、高度成長期は1%台、安定成長期からバブル経済時 代は2%台、バブル経済の崩壊が始まると3%台、4%台そして平成13年に5%となり、 14年は5.4%となっています。注目されるのは、いつの時代も若年者の失業率が高い ということです。とくに15-19歳層は、昭和45年・1970年代以降にその傾向が顕著にみ られ、平成14年には12.8%になっています。20-24歳層も60-64歳層の動きと同じよう に悪化してきていますが、平成11年以降、60-64歳層より悪化が目立つようになり、14 年には9.3%になっています。 若年失業率が急速に悪化していることが、深刻な社会問題になりつつあります。 ![]() 資料出所:総務省「労働力統計調査」 (注)昭和35年から昭和50年までの16年間が完全失業率年齢計1%時代である。 (三年で七五三現象) 厚生労働省「平成14年版労働白書」によると、若年者の失業率の上昇には自発的離 職の増加が大きく影響し、「七五三」と言われるように、中卒者の7割、高卒者の5割、 大卒者の3割が、3年以内に最初に就職した会社を離職していること、としています。 そして、この割合は1990年代後半において高まりを見せているとしています。 何故、若者は、こんなに就職環境が厳しい折にもかかわらず、あっさりと会社を辞め るのでしょうか。企業の人事担当者や若年求職者の意見は次のようなものです。 産業界では、大学卒業後3年以内に3割が離職する実態に衝撃を受け、その要因と して職業選択のミスマッチを挙げとくに学生の「就職観」や「勤労観」の欠如、「忍 耐力」の不足を挙げています。長崎市で開催された「大学、短大並びに高専就職指導 担当者と大学等求人予定事業主との懇談会」においても、事業主側から「他の職種に 変わりたくないとか、転勤をしたくないとの理由で2年以内に2名が辞めた。職業に 対して認識が不足している」とか、「職業意識を持っている学生」や「働く意欲のあ る学生」に育てて欲しい、と大学側に注文を付けています。 一方、長崎県内で就職活動をしている大学生が直面している悩みは、「厳しい就職 環境なので就職できるか不安」(33.9%)が多いのは止むを得ないとして、「面 接で自分の売り込み方がわからない」(18.8%)、「自分に向いている仕事がわ からない」(16.2%)、「企業・職業についての情報が不足」(15.6%)な どの職業教育に係る内容が50.6%にも達しています。 ![]() 資料出所: ハローワーク長崎調べ 学生・生徒が就職活動に直面するまでの間、職業や産業の実際について知らなかった り、働くことの意味を考えること無く、また、その経験に乏しいことや、将来の職業 生活に対する認識が不足していることなどが原因と考えられます。 産業界の立場からも、学校サイドの立場からも、学生・生徒が職業社会への移行が円 滑に行われることがこれまで以上に重要である、という問題意識が広がりつつありま す。皆で何とか若者を育てましょう! 全国で雇用ミスマッチ対策が緊急課題として取り上げられてますが、長崎県にも「長 崎県雇用ミスマッチ対策会議」が設置され、若年失業者対策が始まりました。 経済産業省、厚生労働省、文部科学省など政府内にもインターンシップの導入対策な どで、若者を何とかしましょう!という気概が現れはじめています。 (失われた40年を取り戻しましょう!) どうしてこんな事になったのでしょうか。我々は40年間も豊かさを求めGNPも 所得も世界のトップクラスに押し上げてきたのに。経済発展を国是とし、高等学校や 大学の増設を進め、子供に高等教育を行うことが可能となり、産業界も成長のために必 要な高学歴マンパワーや技術者の採用を可能にしてきたのですが、新卒一括採用、終 身雇用、年功序列の雇用形態と密接に結びつき、企業にも家庭にも学校にも学歴主義 を根付かせることにしてしまいました。子供の資質、能力を充分に生かし伸ばすには、 真理と正義を愛し、個人の資質を尊び、いかに生きるかを教授すべきなのに、大切な 時期に、学校は子どもたちの個性を殺し、一つの物差しに過ぎない偏差値による順位 づけや受験のノウハウを教授する場になってしまったことがあるでしょう。音楽や、 図画や技術やスポーツが好きな生徒たちも偏差値が低いと、受験生中心の教室の中で 疎外感や劣等感で自己否定に陥り、その能力を伸ばす機会が失われていくことになり ます。 家庭や町内も学校も子供を叱り躾けることを止めたため、礼節を知り、人を愛し人の 痛みを知り、我慢や挫折を知り、社会のために貢献したり、国を想い、人のために自 己犠牲をいとわない心を育てる、という体験や知見が得られないままに育ってしまっ た子供達は、今、組織の中堅として企業や官庁、学校や病院に勤め、更にその子供達 が学校で依然として受験勉強、家庭では個室でTVゲ−ム、IT、Iモ−ドで一人遊 びをし、人と人の関係が作れないままに子供の心は荒廃し続けているのです。 子供を甘やかさず、手抜きをせず、向かい合って人生を語り、育てることは、子供と の血みどろの闘いになります。父親が会社に逃げ込み、仕事に打ち込み、子育ては奥 さん、ということでは駄目です。子育てや学校行事や地域のことに関心を持ちましょ う。 「2003年長崎ゆめ総体」は長崎県内の高校生が一人一役でボランティアとして参加 し、総合開会式をはじめ各競技会場における運営を行いました。開会式での大会賛歌 「大空へ・・・」の素晴らしい900人の高校生の演奏、2100人の高校生の素晴らしい公 開演技、そして練習期間を考えるに、受験以外にエネルギーの方向を変えてやると、 高校生のパワーはつくづく凄いな、と感じたところでした。 原因は分かっています。40年かけて失ったこれらの回復には時間がかかりますが、根 本から時間をかけて、総合的にやり直しましょう。 さあ 皆んなで次世代を任すことになる若者を大切に育てましょう! 1 若年労働者の就業意識や転職・移動に関する調査研究 学校卒業後、最初に就職した会社を3年以内に辞める割合が、大卒で3割、短大卒で 4割、高卒で5割と言われており、若年労働者の定着率の悪さが社会問題になっている。 これは職業選択におけるミスマッチが原因と考えられる。学生・生徒の自立心と職 業意識の確立、働くことの意義、自分のやりたい仕事をいかに探し出すか、そのため にどのような指導をするかを実態調査、意識調査、そして授業(キャリア概論)等を 通して調査研究するものである。 2 「長崎県雇用ミスマッチ対策会議」での検討 未就職卒業者をはじめとする若年求職者や中高年求職者などにみられるミスマッチ による失業者の発生について、雇用に向けてのミスマッチ対策を講じて、失業者の増 加を防止させ、発生を防止することが必要ということで、会議が設置され中間報告が なされた。 金子源二郎長崎県知事に中間報告をする浜 民夫長崎県雇用ミスマッチ対策会議会長 (15年3月26日) ![]() ![]()
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