マングローブ植林の意義
 
 日本の多くの海岸線はコンクリートでできた堅固な堤防で区切られている。堤防の建設には日本の土木技術の粋が集められ、現在では大しけとなっても滅多に堤防決壊する事がなくなった。特に波浪が強い海岸には巨大なテトラポットが太い鉄筋で幾重にもつなぎ止められ、正に人間の英知が自然の災害を防いだ良き例と言える。そのテトラポットに近づいて見てみると、隙間にはカキや海苔など生命力旺盛な生き物たちが息づいているのに気づく。
 
 途上国の場合、資金力に乏しく、国土全体を日本のような堤防で区切るのは至難といえる。しかし、天はその弱き点をカバーするかのように、すばらしい植生を生んでくれた。マングローブ林である。
 マングローブとは、 「熱帯・亜熱帯の海岸線(潮間帯)に生育する植物群落(主として樹木)」の総称で100以上の樹種がある。強い波浪を和らげる正に天然のテトラポット。また常葉のマングローブが落とす葉や小枝が腐蝕しそれがプランクトンの餌となる。それが稚魚の餌となりさらにその稚魚は中型、大型の魚の餌となる。食物連鎖の中心はマングローブである。
たこの足のように幾本もの支柱根を大地におろし、豊富な酸素を放出する。熱帯の強い日差しを常葉樹木陰をつくり、水温が高まるのを防ぎ、魚達にとって快適な環境となっている。生き物にとってマングローブ林は竜宮城。また、波や潮流で浸食された土砂はその根元に留まる。その土砂が周辺に広がれば珊瑚や海草を死滅させることとなる。マングローブ林があることによって漁民は豊かな魚介類を捕って、自然と共に生活出来るのである。
 ところが近年異変が起きた。第二次世界大戦以降の爆発的な人口の増加、それによる家庭燃料となる薪や炭の需要が急激に増えた。マングローブ林の伐採が始まった。それに拍車をかけるように、商社や地元有力者が主にOA用紙や上質紙をつくるための良質チップ材として注目し(その国ではこれら高級紙の需要は少ない)海岸線マングローブの伐採を奨励した。
 そして跡地を池にして海老の養殖を勧め、「現金収入こそ幸せを呼ぶ」と貨幣経済優先文化を持ち込んだ。こぞって人々はおいしい話しに群がり、1985年頃から急激な乱伐を始めた。陸の材木に比べマングローブは船で運ぶことが出来、安易に伐採できた。海老の養殖も日本の食生活に助けられブームとなった。ところが、バブル崩壊から海老の国際的な価格暴落によって、状況は一変した。当然かのように各社は採算の合わない国は切り捨てた。豊かになったのは他国と一部特権階級の人達でとりのこされたのは住民である。養殖池はそのまま放置されたばかりか、村を守っていた囲いが取り除かれて住居近くまで海が迫るという現象も出てきた。それまで生活の糧としていた漁業の漁獲量が急激に減ってしまった。気がついてみれば、存亡の危機に追いやられていたのである。
 子供達は純真だ。大人が持ち込んだ環境荒廃は結局のところ彼らが引き継ぐ。大人達も豊かな自然があってこそ人類が生きられると、苦い経験から学んだ。現在、大人も子供もすすんで苗を集め、植林活動が進めている。純真な心を多くの生き物たちのために、また永遠に続きたい子孫のために力を注ぐ。奉仕の気持ちを基礎とした未来づくり活動、それが現地で行っているマングローブ植林である。
 
マングローブ植林方法
 
 マングローブには、海流で果実が運ばれて分布するものと、果実が枝についたまま発芽し、幼茎が50〜60cm位にのびてから落下して泥にささり、そこで成長する種類のものがある。(今回後者の幼茎を集めて植林する)植林は干潮時をねらって、木の棒で深さ20cm位の穴をあけ、そこに苗木を差し込んでいく。苗は、満潮時にはその突端が少し水の上に出ていなければならないし、干潮時には、その根の部分が湿っていなければならない。波が大きいところでは幼木はすぐに流されてしまう。潮流の早いところ、或いは防砂を目的とする場合は、20cm間隔の密植をする。流れてしまう場合があり、後、村民により補植してもらわねばならない。
 
※ マングローブ生態系のもつ機能と価値
 
  ● 沿岸部、河口部および河岸部の安定維持
  ● 潮汐および河川水からの後背地の保護
  ● 生物多様性の維持
  ● 鳥類をはじめとする諸動物の生息地
  ● 学術研究・教育の場としての価値
  ● レクリエーションおよび景観的価値
 
 
子供の森での植林樹種、解説 (一部)
 
マホガニー 
・オオバマホガニー:主に中米、南米北部に分布し、克高は45m、径は2mにもなる。樹皮は褐色で成長すると割裂し、卵形の果実がなる。材は赤褐色で黄金色の光沢があり美しい。耐久性が大きく、家具、高級指物、内装用、化粧合板、箱に用いられる。
 
ジェミリーナ 
・キダチヨウラク:インド、東南アジアに分布。直立落葉中高木で成長は早い。葉は緑色で裏には白い毛がある。花は径 2.5cmほどで橙黄、短筒状で先端が5つに分れている。黄色く小さい実は食べられ、樹皮や根とともに薬用にも用いられる。材の耐久性は小さい。建築、家具、楽器、額、マッチ、パルプ、合板に用いられ、痰「枝葉は肥料になる。
アカシア・マンギウム 
 ・ マンギウムアカシア:
インドネシア、オーストラリア北部に分布。常緑の高木で樹高3〜10mに達する。3月には黄色い花を枝の先端につける。庭園樹、公園樹、街路樹、切り花に利用される。