「信州のタヌキ」要約
タヌキの一日の生活パターンは?
タヌキの行動圏の大きさは?

 タヌキの社会構造を解きあかすための鍵になると思われる日周活動及び行動圏について、ラジオテレメトリー法を用いて調査を行った。


1)1990年4月から1991年8月まで、13頭、再捕獲個体も含め延べ15頭のタヌキに発信器を付け、その周波数により個体識別し、追跡調査を行った。

2)本調査地では、季節による個体群密度の変動がみられた。繁殖期から夏まで密度が高く。冬期には低くなった。冬の寒さが原因しているものと思われる。

3)捕獲できた13頭のうち8頭はオスで、しかも、その中の6頭は単独オスであった。これは出産性比の偏りによるものと思われる。

4)本調査地のタヌキは夜行性であり、日没前30分から日没後1時間までに泊まり場を出て活動し、日の出前1時間までに泊まり場にはいる場合が多かった。

)日没後泊まり場を出て活動したタヌキは、夜半前後にその日の泊まり場か以前使ったことのある泊まり場で休息し、2度目の活動に出た。2度目の活動の方が遠くまで出ていく傾向があった。

6)ラジオテレメトリー法により得られたトレースより、一夜の歩行距離を求めると、ペアが2Km前後であるのに対し、単独オスでは3Km前後と長くなっている。単独オスでは谷の中心部から離れた山の中に泊まり場をとるためである。

タヌキの追跡トレース

7)季節による採食食物の違いにより採食場所も変わるため、タヌキの夜の採食コースは季節により変化した。

8)タヌキの主な採食食物は、人家からの残飯、畑のトウモロコシ、水田のカエル、クワの実やカキの実などであった。これらは、季節的であり、一時的に多量に得られるものである。また、谷の中心部に集中していた。

9)ラジオテレメトリー法による観測点から6.4haから218.2haの行動圏が得られた。その広さは、個体により30倍以上の違いがみられた。
タヌキの行動圏の構造

10)行動圏を構える位置は、ペアが谷の中心部であるのに対し、単独オスでは山側に構える傾向があった。

11)山側に行動圏を構える単独オスも、谷の中心部まで採食に訪れるため、ペアや他の単独オスとの行動圏の重複が生じた。

12)タヌキの泊まり場を分析すると、本調査地では使用頻度の60%が石づみや人家の縁の下などの人工物の中であった。

13)特に、谷の中心部では、点在する石づみとその周りの広葉樹の薮が、泊まり場や食事場、ため糞場としてタヌキにとって重要な場所となっていた。


14)採食場に近い、谷の中心部の泊まり場は、何個体かのタヌキに時間を変えて利用されていた。

15)採食場に近い、谷の中心部のため糞場は、多くの個体に利用された。また、ため糞場より新たな餌場の情報を得たような行動がみられた。

16)単独オスは、ペアの行動圏内の採食場へも、ときどき訪れるが、ペアが利用した後時間を変えて現れている。

17)人家の数から残飯の量を、トウモロコシ畑の広さからトウモロコシの実の量を推定し比べてみると、谷の中心部に行動圏を構えるペアの方がその密度が高いことがわかった。タヌキの行動圏の広さは、彼らの餌の密度によるものと思われる。

18)谷の中心部に並ぶペアの行動圏は食物量が豊富で繁殖にも都合良いが、人間や野犬、飼犬など彼らに対する危険も多い。

19)タヌキは行動圏が重複する割には争いの場面が全く観察されなかった。臭いやため糞場からの情報より、互いの位置を認識し、互いに適当な距離をおいているているものと考える。
タヌキの行動圏
       生後間もない子タヌキ
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