「愛の渇き」(1952)三島由紀夫 新潮文庫
読了2003.7

三島の一連の倒錯的な恋愛を描いた小説のひとつである。

この手の小説はもう、得意中の得意と言っていい。

ひとつの主題を大きく演繹させてひとつの小説として完成させている。

演繹したものは広がるが、広がりすぎずクライマックスへ収斂する。



主要な登場人物は全員三島の化身である。

うるおしい肉体を持つ三郎、それに憧れる悦子、それに対してなにひとつ口を挟めない弥吉、

傍観者でありながら理屈っぽく(読者に向かって)状況を説明してくれる謙輔。

特に三郎の肉体とそれを愛する悦子のまなざしを描けるのは三島だけだろう。

そうした情景を執筆していたとき三島は官能にふけり勃起していたに違いない。

それは自分の化身であるトチローの活躍を描いているときの松本零司と通じるだろう。


小説の主題とその流れと同時に、三島由紀夫という人間をかいま見ることができる点でもおもしろい小説だった。

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