「音楽」 (1965) 三島由紀夫 新潮文庫
読了 2000.12
はじめに、この小説と僕との因縁を書こうと思う。
この小説は、大学に入ってちょっとした頃読もうと思って一度地元の図書館から借りてきたことがあったが、
10ページほどしか読まずに返してしまった。
別に図書館の貸出期限が来たからではなく(期限を守ったことがないです、すいません)、
内容がうさんくさげに思ったからである。
しかし、4年生になった今は精神分析も自分と違った視点から心をとらえる方法のひとつとしておもしろく読むことができた。
この本のあらすじは、精神分析医の汐見和順が患者の弓川麗子を治療する過程を描く、というものである。
本の解説のところで渋沢達彦氏も書いているが、この小説は推理小説の手法によく似ている。
語り手である精神分析医は探偵訳、被害者は患者の弓川麗子で、加害者は弓川麗子のトラウマである。
弓川麗子は不感症、チック、「音楽」が聞こえないという症状を持ち、これを治すためにカウンセリングを受けることから物語は始まる。
これらの症状が過去における性的な事柄に由来しており、その謎が徐々に解けていく。
この辺が推理小説っぽい。
ひとつめのヤマは、麗子が「音楽」が聞こえるようになったという手紙を汐見が読んだ場面だろう。
ここから先は推理小説の犯人をばらす行為に似ているから書かないが、この小説を推理小説というのは決して悪い意味だけでいっているわけではない。
世の中に精神分析を扱った本はプロの精神分析家のものを筆頭に数多くあるが、これほど面白い本はそうはないと思う。
また、三島通俗文学という意味でも、「永すぎた春」「潮騒」と並んで読む人を問わない、良質な小説だと思う。
映画化されてないのかな。