第1回学習会 平成8年6月10日
東京の農林水産業を取り巻く4つの潮流
(1)国際的な潮流
東京は日本の首都であるから、農林水産業だけにこだわらず幅広く考えていかなければならない。東京の農林水産業を取り巻く状況を4つの方向から見てみたい。
まずは、国際的な潮流である。
全体としては、世界は農業国と工業国の国際分業の色分けがなされ、その中で日本は非農業国に向かって進んでいる。しかし、これでよいのか。
例えば、世界の森林の伐採量の4割が日本への輸入向けであるといわれる。環境破壊に対する世論も高まりつつある。二酸化炭素の増加によって異常気象となり、現在はかなり肥沃と思われている土地も世界的には駄目になっていく。いま輸出国である食糧生産国も輸入国に転化し、地球的規模での食糧危機となる。バイオテクノロジーも国際摩擦が起きた時の戦略となる。アメリカなどは国防的見地からその研究をやっている。
先週の金曜日には国連海洋法条約も批准した。つまり、従来の漁業は許されず、資源管理型の漁業ということでの締めつけになっていく。これらのことを頭に入れておく必要がある。
(2)日本の流れ
全国的な潮流はどうだろうか。まず、見逃せないのが規制緩和と地方分権という大きな流れである。都庁が進めている行政改革も農林水産部に大きく影響してくる。
人口全体が高齢化し、少子化も進んでいる。企業が新規担い手に走るゆえんである。農業後継者の確保はこの面からも厳しいであろう。
また、インターネットを含め情報化が進んでいる。流通・販売戦略が情報化へと進む中で、農林水産業もインターネットに遅れるとまずいであろう。
すでに言われはじめて久しいが、国民の間では、ゆとり、うるおい、個性化志向が出てきている。国民の成熟化である。これとリンクすることだが環境に優しいというテーマも出ている。リサイクル運動も盛んになってきている。NGO・NPOと直接結びつく話ではないが、政府や自治体にたよらない市民の動きも出てきているように思える。
また、財源も意識しなければいけないが、税収不足が定着化することは念頭におかなければならない。
食糧法で米も革命的な動きが出てきている。
林業関係では、林業労働力を支援するセンターを設けよという法律が新しく出来た。
住専処理での農協の責任も避けて通れない。
こういう動きが全国的にはある。
(3)東京圏の動向
東京圏については、どうだろうか。まず、関東エリアの分業という考えが常にある。また、業務核都市(厚木、浦和、立川など)育成の動きがあるのだが、ここが市街化調整区域とか農振地域とダブルっている。農地が開発対象となっていく。
加えて、東京はなんといっても都市的利用と農業的利用とが競合している地域である。生産緑地法が出来たとはいえ、市街化区域内の農地は安定ではない。
例えば、都市計画局が出した都市白書では、生産緑地を住宅用地として転用したときの検証がされているし、東京商工会議所からは生産緑地が景気回復の足枷になっているという意見も出ている。
一方、これと反対の動きだが、首都機能の移転により、近いうちに東京が首都でなくなるかもしれない。これによって潜在的な都市の需要動向が大幅に減る可能性もある。
(4)東京都庁内の動き
最後に東京都庁内の動向である。言うまでもないことだが財政が硬直化している。スクラップ&ビルドの要請は常に財政当局からでてくる。ラフに言えば農家数は全部あわせても2万戸しかない。本当に農業を応援する必要があるのか、今後はこのコンセンサスは相当得難いものがあるであろう。
また、情報公開の動きもある。官々接待の決着が一段落すれば、これからは都民の目は政策へと向く。施策の一つ一つが検証されることとなる。都民を意識した政策を行わない限り都民の理解も得られないであろう。
また、地方分権の推進も動きもある。国に頼らない行政ということである。とかく農林水産行政は農林水産省の補助金に頼っているところがある。東京都としては地方自治体の中で先陣を切って地方分権を進めているのだから、国、国ということは、「都としての主体性がどこにある」とかえって財政サイドからのクレームを招きかねない。
他部局との関わりなくして農林水産行政はありえない
また、「農林水産行政は農林漁家だけを相手に産業政策だけをやってればよい」という意見もある。しかし、本当にこれでいいのだろうか。もっと幅広く政策を展開していく必要があるだろう。
例えば、都民と生産者とはギブアンドテイクの関係である。農林水産業によって都民は様々な公共受益を得ているし、そのことを意識していかなければならない。生産側にも、新鮮で安全でおいしい農林水産物をどう都民に提供していくかという産業としての使命と、農地・森林による都市環境の保全とをあわせて、やっていくことが大切である。この都市環境の保全の部分がなければ単なる農業県の政策と大差なくなってしまう。両方あっての東京における農林水産業ではないだろうか。
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