平成8年度第5回学習会 平成9年2月24日
昨年の秋から大豆やトウモロコシなど遺伝子組換え農産物が輸入されている。品種改良と同じだから安全であり、表示もいらないというのが政府の判断だが、安全性を確認出来ないことからヨーロッパをはじめ世界各地で反対の声が高まり、消費者の間ではボイコット運動も起きている。東京都議会も平成8年の12月18日に全会一致で政府に対して「安全性の確認の努力と表示義務づけ」を要望したことはご存じのとおりだ。この問題の背景には日本の自給率が低いために、食糧輸出国のいいなりにならざるをえないという面もある。今回の遺伝子組換え農産物は、外国の農産物だけに依存していてよいのか、日本の消費者へ改めて大きな問題を投げかけたと言えるかもしれない。
今回は、国民生活センターで長らく消費者問題に携わってこられた国学院大学の久保田助教授をお招きして、遺伝子組換え農産物を取り巻く問題について、話をうかがった。
以前は国民生活センターにいたが、現在は国学院大学の産業消費情報学科で教鞭を取っている。消費者運動の歴史や実態を研究対象にしてきて、その中に有機農業運動もあり、かかわっている。今回は、消費者運動の状況遺伝子組換えや遺伝子組換え作物が本当に大丈夫なのかについて、耳学問での話をしてみたい。
遺伝子組換え食品とは
これまで消費者の間で問題となってきたのは「バイオ食品」である。しかし、バイオは広い概念であり、大きくわければ、大量増殖、細胞培養、細胞融合、遺伝子組替の四つの範疇にわけられる。このうち特に今問題となっているのは、最後の遺伝子組換えである。
例えば、農薬メーカーモンサント社は、除草剤に強い微生物の遺伝子を組み込んだ大豆を作っている。普通、大豆は発芽する前に除草剤を蒔くのが、この新大豆は除草剤をかけても枯れない。弱い農薬を3回かけていたのが1回ですむから減農薬となるし、効率がよくコストダウンが出来ると売り込んでいる。また、スイスの薬品会社のチバガイギー社は、微生物(バチルスチューリンゲンシス)の遺伝子を組み込むことで、作物体内に「毒素」を持ち害虫に強いじゃがいもやトウモロコシを作り出している。これまでは外から農薬を散布していたのが、作物内部で毒素が生成されるため、省力化が可能となるわけである。「毒素」といっても生物農薬として使われている毒素であり、人間には害がないとされているが長期的な影響やアレルギーの可能性はわからない。
また、食品添加物を作るのに遺伝子組換え技術を使うものとしてキモシンがある。これはすでに認められている。また、アメリカのカールジン社はひもちのよいトマト(フレーバーセイバー)を売り出している。
超スピードでの認可
さて、日本へは昨年の4月にこれらのメーカーから、大豆、菜種、ばれいしょ、モロコシの4種類、7品目の作物に対して安全性評価申請がなされた。そして、9月には安全性評価指針に適合しているとした食品衛生調査会答申を経て、厚生省が輸入を認めている。
その経過を見ると、食品衛生法第4条には新たな食物を規制する条項があるのだが、それを直接的に適用していない。96年の2月に安全性の評価指針を出し、これをもとに食品衛生調査会が検討して、超特急で7月に調査会の答申が出ている。申請からわずか半年で結論が出されたのである。
また、10月には同調査会はさらにトウモロコシなど12品目の作物に対しても「安全」との評価を下している。
これに対して私は次の3点が問題であったと考える。
本当に安全なのか
農水省は「従来の品種改良の延長線上にあるもの」との見解に立っている。しかし、自然界には存在しなかったものを遺伝子レベルを操作することで、種の壁を超えて新しい品種を作り出すわけで、本質的に違うのでないか。つまり、全く新しい食べ物であり、人類が食するのは初めてのことである。倫理的な問題のみならず、次の5点のような問題が課題としてあげられる。
表示がないことが問題
以前、消費者の間では「放射線照射食品」が問題とされたが、今回の遺伝子組替食品とは次の2つの点で問題性が共通する。
放射線照射食品については、食品衛生法を改正したときに全面的に禁止され、禁止された上で特別に品目ごとに認める(現在、認められているのはジャガイモだけ)という体系になっている。また、表示についても義務づけられている。しかし、毒性が出る恐れのある点では遺伝子組換え食品でも同じであるにもかかわらず、遺伝子組換え食品については表示義務がないのである。
話がとぶが、いま有機農産物の基準を国際化する動きが出ており、それがコーデックスの表示部会で検討されているのだが、ヨーロッパと日本政府は「農薬を使わなければよい」と提案している。つまり、遺伝子組換え農産物が有機農産物とされる可能性がある。有機農業関係のNGOが大反対しているため、現在のところは遺伝子組換え食品は有機農産物には含めない方向で検討されているが、今後とも注意が必要である。
欧米での政治的動き
アメリカでは、1994年に遺伝子組換えトマトが商品化されたとき大問題となり、FDAが表示をしなくてもかまわないといったが、カールジン社は積極的に表示をつけて売り出した経過がある。また、ヨーロッパでは遺伝子組換え作物へ大反対しており、欧州会議が「表示をしなければならない」との決定を下し(すべての食品が表示されるわけではない。加工食品については表示しない)、この1月16日から表示が義務づけられている。
日本の場合、最初に規制を緩めてしまったため、輸入された後、どうなっているのかまったくわかっていない。表示がないため、流通実態もわからない。野放し状態である。
とにかく、基本的に「疑わしきは使用せずという態度を取れ」というのが消費者の願いなのだが、政府はそれと正反対の動きである。規制緩和からみもあって、安全性については現時点で危険性がわからなければかまわないという極めて無責任な立場に立って行われている。
混ぜられているから区別はできないといわれているが、現在のところ大豆とナタネが2%位の作付なのでどこで作ったかわかるらしいし、検査をする方法もある。消費者としてはボイコットをする。買わない。食べない、売らせないのキャンペーンを張っているため、今のところカナダからは入っていないのだが、今後の力関係いかんにかかっている。
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