第9回学習会 平成9年12月3日
土地区画整理事業とは
区画整理事業とは、世界各国で雑然とした都市を建設しなおす目的で行われている事業である。とくに、日本では関東大震災の復興手段として用いられて以来、無計画な市街地を整え、あわせて道路・公園・広場等の公共施設を改善出来る手法として広く用いられてきた。区画整理事業が、過去に多くの実績を持ち、いまも有効な事業手段として活用されているのには理由がある。
面的な総合的整備手法であり、公共施設の整備を公平な受益と負担配分によって実現出来ること。既存のコミュニティを維持しながら、民主的な手続きによって市街地の計画的整備が実現出来るなど、優れた特質を持っているからである。実際、事業を実施することにより、様々な都市インフラが整備され、良好な環境が整えられる。土地の利用価値は大幅に高められ、「減歩」によって土地を失う損失感を補ってあまりある。受益者は、みな事業成果に満足してきた。
しかし、その区画整理事業は、あくまでも宅地増進を目的とした事業である。生産緑地という宅地化を目的としない「農地」をエリアに取り組むとき、様々な矛盾を放出させる。また、みなが満足するといっても、それは土地地権者に限ってのことである。事業実施によって農地や緑が失われ、自然景観が失われてしまう。自然保護団体からクレームが出たりしはじめてもいる。一体、区画整理事業にはどのような問題点や課題があるのだろうか。
土地区画整理事業の仕組み<
区画整理事業が出来るのは都市計画区域の範囲である。区画整理事業には、都市計画事業による場合と都市計画事業によらない場合とがある。都市計画事業としての市街地開発事業を行う場合には、市街化区域内でなければやれないが、市街地開発事業に該当しない土地区画整理事業は市街化調整区域や未線引きの都市計画区域でも施工することが可能である。しかし、東京都では、調整区域で事業を実施する場合には、線引を変更して区画整理事業をすることになっている。
都市計画事業でやるのは大規模な公園などがある場合であり、また、都市計画事業として実施すると事業が繁雑とある。そこで、実施されている事業は、非都市計事業が多い。
区画整理の施行者には6つのタイプがある
施行者を見てみよう。これには6種類がある。
(1)個人や共同施行。有楽町の駅前にマリオンが有名で、あれは四者の協同施行の事例である。
(2)土地区画整理組合施行 オペラシティは、組合施行の事例である。これは54地区やられている。
(3)都道府県や市町村 公共団体が実施しているケースは39地区ある。
(4)の行政庁施行 災害その他、急施を必要とする場合である。
(5)住宅・都市整備公団や地域振興整備公団
(6)地方住宅供給公社 東京都の場合は住宅供給公社が行なっている。
東京都では、多摩部の青梅市、日野市、町田市などでかなり実施されている。八王子で200ha規模の事業が行われている場合もあるが、多くは20から30haの規模である。一方、杉並、練馬、練馬では都市計画決定がなされ、事業が行われているが、事業の範囲は、都心ではかなり小さく5ha以下。だいたい1〜3haである。区画整理の場合では面積要件がないため、一番小さいものでは0.1haとか0.07haというものすらある。 中央区の神田周辺には。地上げにやられた空き地が点在している。色々と対応はしているが難しい。
既成市街地でこそ区画整理が必要だ
現在、全く区画整理事業が行われていないのは渋谷区、目黒区などである。スプロール化が凄まじく、大震災があったら何万人死んでもわからない状況である。狛江、調布市なども何も行われていない。
要するに区画整理で一番問題になってくるのは、既成市街地をどうするかである。何度も言うようだが、既成市街地の中では区画整理をやっても地価が2倍・3倍になる世界ではない。2haの事業を実施したとしても、15とか20%とかの割合で道路・公園等の公共施設を作ると事業の採算があわない。そこで、苦しいながら、減歩を15%とかぎりぎり低くし、従前の評価を下げて認可していくしかない。事業の前と後とでの評価をイコールとするのである。
実は、道路については通達で、住宅系では6m、商業系で8mにせよ、という原則がある。ところが、場合によっては建築基準法の最低基準である4mにしないと23区では認可が出来ない。東京都では、3%以上公園がある場合に、これを買う補助金を出しているが、それでも地価が下がっている世界のなかでは、公共施設を差し引いて事業をした場合、個人施行では出来ない。事業のための費用を負担するのは、原則として施行者である。組合だと権利者が負担する。それも土地で負担するとなっている。
事業に参加する人の「質」
事務所を作って管理すると、3000から5000万円の経費かかる。そこで、経費を押さえるためには、施行期間もなるべく短くしたい。少なくとも2年から3年の間に終わらせたい。そこで、問題となってくるのが、事業に取り組む「人」の質の問題である。これまでは町会長などを理事長にして事業を進めてきた。しかし、最近ではなかなかこのような人材がいない。
組合施行では、理事、幹事がいて、通常では理事会で事業を進める。その他にも組合員全員の意志決定機関である総会がある。人数は5人から7人でやっているが、70とか80のよれよれの爺さんが理事になっている。理事の質も問われ、業務代行方式、つまり、ディべロッパーやコンサルが請け負ってやる事例がある。
PRも重要で、保留地を売らなければならない。いい人材がいて、先にPRがなされていればスムーズに進むのだが。
最近目玉となってきた土地整序事業
そこで、最近では、「減歩」を伴わない土地整序事業が着目を浴びている。マリオンは0.9haで土地整序事業をやった事例である。朝日新聞、東宝、松竹など4つの地権者があったが、この場合は土地の増進がない。土地は分有である。土地の共有化は原則は出来ないが、住宅で100平方メートル、商業で65平方メートル以下の場合には、職権で共有が出来る。建物の共同化は出来る。最近はこういう区画整理事業が目玉になっている。
区画整理法では「農地」も「宅地」と定義される
さて区画整理事業で作る公共施設は、道路、公園、広場、河川等等である。この公共施設を除いたものはすべて「宅地」となる。つまり、畑、山林、水田などはすべて宅地と扱われる。要するに、宅地の定義が広い。この定義が重要である。
そこで、実際には農地であっても、すべて宅地として評価され、減歩されることとなる。ここが問題なのである。
実を言うと区画整理法は、一見他の法令とはきちんと整理されているようになっているのだが、詳しく見ていくと農地法、生産緑地法、不動産登記法、不動産鑑定評価に関する法律などと整合性が取れていない。
例えば、農地については、宅地として評価することは出来るのだが、不動産鑑定評価法では評価出来ない。地目の変更は出来ない。また、不動産登記法での登記上は畑になる。生産緑地法では、宅地化農地についても評価上は農地で扱わなければならない。このように各法律の間に矛盾がある。
減歩という問題
ポイントを絞りこもう。宅地の場合は、いまの経済原則でいう交換価値、農地の場合は生産価値である。宅地は取り引きを前提としているから、通常の売買で事業後に価値の増進があったかどうかが問題になる。しかし、農地の場合は、生産価値として存在しているのであって価値の増進は原則的にはないはずである。ここが違う。
もともと違うものを同列に扱うことによって、何が問題になってくるかというとつまり、減歩である。区画整理事業を実施する場合には、普通減歩がある。減歩には二種類があって、一つは道路、公園になる公共減歩。もう一つは、財源として確保する保留地である。この二つをあわせて「合算減歩」というのだが、だいたい公共が15%以上、保留地減歩が、20から30%になる。これだけ、土地が取られても、地価があがるから総価格があがる。これでバランスが取れるようになっているわけである。
要するに、施行前を1とすると2倍、3倍に土地の評価額が高くなる。そこから、保留置として売るもの、減歩などが産み出せる。そういう前提で進められている。
ところが、宅地を宅地にしたところで、その評価額は変わらないが、農地の場合は事前の評価が低いために、事業をやったことによって農地が宅地となるとすると、減歩率が多く働く。つまり、農地がより多く減る換算になる。しかし、生産緑地や一般の農地は評価上は減歩あまり取れない。そこで、苦しんでいる。区画整理事業に農地を取り込んだとき、街づくりとして破綻してくる。そこが、区画整理事業上の最大の問題なのである。
開発行為の場合は、宅地利用の増進がない。しかし、区画整理の場合は1.3倍位の増進がないと駄目なのである。そこで、保留地減歩として取ったものを財源にするのだが、保留地も売れない。農家が自分の家屋を担保にして農協から金を借りて事業費を捻出していく。平成3年ころまでは比較的上手く行っていたが、それ以降は大変な状況になっている。
事業の中で工夫して農地の減少を押え込む
最近、区画整理事業の中でも色々な制度が創設されてきた。例えば、緑住区画整理事業は、区域設定する場合には、農地を含めても構わないが、全体でやる必要はないと通達指導がなされている。それはこういうことだ。例えば、1.0haの区域があり、半分の0.5haが宅地部分であったとしよう。公園は法律上3%は設置しなければならないとされている。そこで全体をカウントすると300平方メートルの公園を作らなければならない。しかし、宅地部分だけで3%カウントすれば、公園は150平方メートルですむ。少しでも農地減少が防げる。このように、我々は農地を残そうといろんな工夫をしている。
土地改良事業の導入の検討を
高齢化が進む中で農家側からは区画整理事業を推進して欲しいという依頼が毎年のようにある。27地区が認可されているし、その後も、かなり出そうな雰囲気だ。財源が限られているので、その中で優先順位をつけて実施している。しかし、区画整理事業の場合は、あくまでも宅地利用の増進を図ることが目的で、宅地の利用の増進と公共施設の整備改善。つまり、これがないと認められない。今の状況からいくと区内には農地が残らないのではないか。そういう危機感がある。
都市計画法が出来て以来、宅地と農地とのすみわけ論が上手くいっていない。なおかつ、市街化区域内には都市農業が残っている。そのあたりがバッティングする。そこで、これをどうするかである。
実をいうと関西では関東とは少し違いがある。今年の2月に大阪府で調査をしてきたのだが、関西では、宅地と農地とのすみわけをある程度きちんとやっている。東京都のようには曖昧にしていない。
我々はサイドは限られた財源を投入してまで農地の整備までやる必要がないのでないか。農地の場合は、土地改良のような方法で整理するべきではないのか。
以前から農林水産部の土地改良担当部局には、「土地改良事業をしてほしい」と話してきた。我々は農地に手をつけたくはない。農地と宅地とは共存していかなければならない。農地サイドとのよい共生が出来ればいいと思っている。
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