平成7年10月

地元スーパーが語る地場農産物への期待

スーパーよしや青果部門長 金川氏


 「地場流通」というと、すぐ直売所による直販を思い浮かべる人が多い。しかし、地場流通といっても多様な手段があるはずである。「らでっしゅぼうや」のような宅配便があってもいいし、八百屋の店先で売られていてもいい。スーパーの一角に地場産コーナーがあればもっと望ましい。大切なことは、売られている農産物が、どんな畑で作られたものか、どんな農民が作ったものかが、ちゃんと消費者にわかることである。
 東京の農業は目に見えるといわれてきた。しかし、消費地のまっただ中で生産が行われているといっても、消費者だれもが畑が見える場所に住んでいるわけではない。とくに、市街地に住む人達にとっては、スーパーという流通手段は魅力的である。そこで、今回は東京の地場農産物にこだわるスーパーを訪ねてみました。


blue.gifあえて地場農産物にこだわる
板橋区にある「よしや」は、あえて地場農産物にこだわるスーパーである。練馬区大泉地区で作られる地元の農産物もこのスーパーが扱っている。

 
MT
 よしやさんは、練馬区・板橋を中心に十店舗ほどの売り場があるそうですね。
金川
 はい。
MT
 練馬区の大泉地区の新鮮組合とは、地場農産物の取引きをはじめて、もう十五年になるそうですが、どのようなきっかけではじめられたのでしょう。
金川
 うちはもともと、青果商から出発しているんです。そこで、社長の野菜に対する思い入れも強いものがあります。せっかく近くに練馬という生産地があるので、地元の野菜をブランド商品として取り扱いたかった。そう思っていたところ、折りよく東京青果から紹介されたんです。最初は、リーダーの早川氏を中心に六名の農家でスタート。現在では、十七名に増えています。しかし、メンバーは厳選しているので、常時出荷しているのは十名といったところでしょうか。
MT
 今、取り扱っている商品にはどんなものがありますか。
金川
 キャベツとほうれん草から出発しましたが、だんだん品目も増え、ブロッコリー・カリフラワー・春菊・こまつな・ダイコン・トマト・レタス等色々ありますが、キャベツ、レタス、ダイコンの三品目がメインです。量的には、キャベツが春と冬にそれぞれ700個。春先(四〜五月)のレタスが日量1000個。ダイコンが四月と十二月に日400本です。この三品だけで全体の八割から九割を占めます。
 以前は、農家が、それぞれ自分で出荷してくるものを入荷していたんですが、私が担当になってから、ここ三年は、これを最低のロットとして出してもらっています。消費者に確実に販売したいからなんです。
MT
 レタスが日量1000個といいますと。これは量的に結構、大きいもんなんでしょうか。よしやさんにおける地場農産物のウェイトというのはどんなものなんでしょう。
金川
 春先には、レタス、キャベツ、ダイコンは100%が地場のものでまかなえています。しかし、このキャベツやレタスが野菜の売上げ全体に占める割合は、わずか1%ですね。というのは、春先には果菜類が出始めるでしょう。一人から二人の世帯が客層の70%を占めるこの地域では、大型野菜は、それほど出ないし、販売するの難しいんですよ。また、夏場には、きゅうりやインゲンがあるものの、それ以外は、ほとんどありません。ですから、販売出来るのも、全店舗のうち、一か二店舗だけです。今後は、夏場の野菜を増やしてもらいたいと思っています。

 

blue.gif量は少ないが、客よせの目玉に
MT
 1%ですか。そんなもんなんですか。
金川
 ええ。量的にはね。でも、消費者の評判はいいですよ。例えば、トマトなどは消費者が直接手で触れられるように、バラ売りにしていますし、ダイコンについても、葉つきのまま売るとか、地場の特色を生かす工夫をしています。 価格的にも、地場ということで少し安くし、新鮮さを強調していますので、地場の方が売れいきがよく、客よせになるんです。それに、冬場(十二〜一月)のブロッコリーのように、市場が不足するものを補うという点では、大いに助かっています。
 それと、市場で手に入りにくい品種なんかも置けるでしょう。農家が自発的に作った新たな商品については、うちの要望を加えた上で、売ってもらってます。
 昨年は、桃太郎ではなく、踊り子を置いたところ、酸味も強く大変評判がよかったんです。私は、トマトは果樹だと考えているので、これには結構うるさいんですよ。
MT
 それでは、江戸・東京ゆかりの野菜。大蔵ダイコンとか、後関こまつなとか。こういう野菜はどうですか。関心ありますか。
金川
 いいですね。こういうのは、好きですよ。どっかで作ってるんでしたら、手に入れたいですね。ものがものですから、大量に販売するのは無理でも、いい宣伝になりますからね

 

blue.gif重要となるイベントやPR
金川
 実は、もう三年ぐらい続けていますが、11月には、生産者とともに、店頭販売をするイベントの日を設けているんです。この間の7月に作付の打ち合せをしたところなんです。光ケ丘支店でやった、アンテナショップも大変な人気でしたから。こういう場で販売できたら、評判になるでしょうね。
MT
 あのアンテナショップは、東京都の事業のひとつとしてやったんです。
金川
 ああ。そうでしたか。これからは、スーパーも産地情報を提供するようなことも必要なんでしょうね。
 うちは、「農耕民族」の農産物も、市場を通さずに直接契約で扱っていますが、産地見学会の企画なんかをよく持っていますよ。先日も、群馬の生産者グループから、そういう話があったばかりです。
MT
 有機農産物で有名な、つくば自然派ネットワークのやつ。
金川
 そうです。シェアは3%といったとこです。もちろん、有機農産物といっても、うちが現地で確認が取れないので、有機ではなく無農薬で売っています。有機農業事業をやっている大泉の農産物も、低農薬、産地直送、地元の野菜の表示だけで有機については、あえて明記していません。もっとも、地場のものは、うちが生産方法を確認できるわけですから、今年から顔写真入のマークをつけてPRしてゆく計画です。今後は、生産者や現場見学も含めて、市場のものよりも評価があがって欲しいんですがね。
MT
 まだ、価格的には差がないと。

 

blue.gifコスト的にはひきあわずロットで苦労
金川
 地場農産物は、東京青果のその日の相場の一割増しということで、引き取らせてもらってます。もちろん、中卸さんが入るわけですが、はっきり言って市場を通じてものを購入した方が、仕入れ価格が安いため利益率は良く、地場を扱う価格的なメリットはないんです。
MT
 価格だけからすれば、輸入ものもどんどん入ってますよね。
金川
 ええ。カボチャやアスパラガスの一部で、やむをえず輸入品でまかなってますが、うちは、輸入品を扱う気持ちはありません。あえて、地場にこだわろうと思ってます。
MT
 地場のものを評価して下さいまして、ありがとうございます。で、地場農産物を扱う上で、何か苦労されることとか、生産側への希望といったものがあったらお話下さい。
金川
 一番、苦労する点は、品質とロットですね。品質というのは、例えば、天候に恵まれず出荷時期が伸びて、作物の最適の出荷時期を逃してしまうとか、低農薬栽培のために、虫がついていたりすることとかです。
 また、ロットというのは、とくにダイコンを売るのが結構苦労するんです。
 うちは、予定していたより多く生産者が出してくれたときも、事前に折込みチラシで特売にしたりして、価格調整した上で、売らしてもらっていますが、今後は、計画生産・計画出荷を目差したいですね。あとは、夏物野菜を含めて、年間を通じた量の確保です。
MT
本日は、忙しいところをどうもありがとうございました。

blue.gif取材を終えて
 消費者の立場に立って、いいものを売る。有機農産物といっても生産者のいうことを丸呑みしない。一方、コストだけで判断せず、地場の産地を育てようとする。そんな誠実な商人気質が伝わってきたインタビューだった。地域の人達とともに生きる街中の八百屋さん、といったイメージだ。大型店舗でないよさであろう。スーパーというと「市場原理を透徹させた販売戦略」という思い込みがあっただけに、ちょっと意外な気がした。
 そういえば、店先に「消費者の食と健康を考える」そんなキャッチフレーズが掲げてもあった。

 一口に、計画生産・計画出荷といっても、実際には難しい。生産者はほうれん草をマルチ栽培しするなどスーパーの意向に向けての生産努力を重ねているが、解決しなければならない課題は多い また、練馬がキャベツ一本の時代は終わり、これからは、葉物含めて、他品目栽培へと向かっていくのだ、という傾向はわかる。しかし、それを無条件に評価してよいものか。
 例えば、夏場の果菜類を含めた施設栽培が始まれば、確実に「農地」は余る。いまでも、芝畑とかもてあまらしているというのにだ。地域として農地を守っていく重要性は、ますます高まるだろう。克服しなければならない課題は多い。そんな、想いが脳裏をかすめた一日であった。


darkorange.gif都市農研のHP

HOME.gif

lawngreen.gif都市農業ウォッチング

BACK.gif