アグリタウン研究会 平成9年12月12日
スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークなどの北欧諸国、そして、ドイツ、オランダなどの国では大変環境教育がたいへん盛んである。そして、環境教育は教育関係者の間だけで閉塞的に行われているのではなく、環境運動に携わる様々なNGOと学校とが連携することにより進められている。地域社会との連携がなければ環境教育は進まないし、座学ばかりで体験実習がないといくら頭に知識を詰め込んだところで身につかない。NGOと連携して環境教育を進めるという方策は現実的であり、かつ実に効果的な方法であるといえるだろう。 日本でも、環境面での教育が必要であることは認知されていても、教師が大変に忙しく、地域の人材や市民団体と連携した学校教育のあり方が求められてきており、そのことを文部省の「中央教育審議会」も認め出した。 実際に、スウェーデン・ドイツ・イギリスで環境教育の現場を調査してこられた樋口氏に、ヨーロッパにおける環境教育について講義をいただいた。
無視しえないNGOの力強さ
ヨーロッパで環境教育が盛んな背景には環境保護団体の数が多く、NGOのパワーが大きいことがまずあげられる。例えば、イギリスではナショナル・トラストが230万人、グリーンピースが40万人、地球の友が30万人もいる。スウェーデンでもNGOが多く、自然保護協会には18万人、WWFには17万人、グリーンピースには16万人が加わっている。スウェーデンの人口は850万人だから、日本の人口に換算すると、それぞれが200から300万人に相当する。すさまじい多さといっていいだろう。有権者のだいたい5〜10%がNGOに関わっているため、政治的な影響力も無視出来ないし、企業が環境に優しい商品を開発したり普及したりする素地にもなっている。
NGOが環境教育のプログラムを開発する
では、具体的に環境教育がどのように進められているかと言うと、NGOが環境教育のプログラムを開発し、これと行政が利用する形で進められるケースが多い。例えば、イギリスではCEE(Council
for Enviromental
Education)が、国内の80ほどの環境保全や環境教育の団体と連携し、ネットワークを図りながら、環境教育を進めている。CEEは、1968年に設立された団体で、スタッフは8名。予算の6割が政府から出ている公的色彩の強い組織である。この団体が出版した「Our
World-Our
Responsibility」は環境教育開発のガイドブックになっており、政府の95年のナショナルカリキュラムの改定に伴うものになっている。
理科や社会科の授業の中で必要なものを環境教育として取り上げ、こうしたプログラムに基づき、教師が教えているのである。
ちなみに、授業の中で、環境教育という科目を独自に設けているのは韓国だけであり、これはいわゆる環境問題全般というよりも「公害」に特化した内容のものである。 もちろん、NGOには行政からの援助が多く出ているが、「モノを言えなくなるがいやだ」といって、CATのように意図的に行政からの支援を拒んでいる組織もある。しかし、そうした団体も環境教育に参加していないかというと、一般のナショナルカリキュラムをすでに理解した、より進んだステップの教育を行う場として、ちゃんと活用されているのである。
また、イギリスでは新たに環境を創造したり、再生することへの関心が強く、放置された空き地や荒れ地を再生し、自然豊かな場所にしていくプロセスは当然の感覚で行われている。グラウンドワーク・ハートフォードシェアのように、校庭の改造にアドバイスや援助を行っているケースもある。日本では考えられないが、環境教育とこのようなコンサルタント業務だけで飯を食っている団体がいくらもあるのである。
アジェンダとの連携
さて、1992年のリオの地球サミットでは1996年までに各国が「ローカルアジェンダ」を作ろうと呼びかけた。EUはその呼かけをかなり忠実に守って策定している。特にスウェーデンは熱心で、国内の287の自治体がローカル・アジェンダの作成に取組み、96年までにはほとんどの自治体が計画を作成しおえている。
学校段階でも、各校の独自性も持たせつつ、スクール・アジェンダ21が策定されている。 先に触れたイギリスの「Our World-Our Responsibility」も一種のスクール・アジェンダである。 では、スウェーデンでどのような環境教育が行われているかというと、例えば、「KRAV」のマークを集めようということが授業の中で行われて、教室にペタペタマークが張られたりしている。「KRAV」とはスウェーデンにおける有機農産物の認証マークで、国民の間でもよく知られているものである。また、洗剤には洗剤なりの「ツバメ印」のエコマークがある。こうした環境に良質な商品を子供たちが認識することで、逆に親も刺激を受けていく。
環境規制をビジネスチャンスとするしたたかさ
だいたい、スウェーデンにせよ、デンマークにせよ、北欧諸国は人口が少ないので政治的にも動きやすい。環境NGOの動きはすぐさま政治に反映される。先進的な北欧諸国では、「Recycle」はもはやあたりまえになっている。しかし、「Reduce」まではなかなか打ち出せないでいる。特に、気候が寒いだけに、車が減らせない。治安の問題もある。車を使用するにあたっても、菜種油で走る車を使用していくなど様々な前向きの検討がなされている。冷蔵庫もすでにフロンガスを使用する冷蔵庫は禁止され、すべてペンタンに切り替えられている。
日本では環境規制というと業界から猛烈な反発が噴出するが、単に環境を規制と捉えるのではなく、したたかな経済戦略としても捉えている面もある。全世界的に規制が強化された場合、ノウハウの蓄積があれば、より有利な立場に立てるからである。事実、スウェーデンの政府は、環境保全の分野で日本の55万人に相当する4万人の雇用を新たに創出するプランをたてている。
ドイツはどうか。ドイツもNGOと連携した環境教育がいろんな団体でなされてはいるが、イギリスやスウェーデンほどは進んでいない。この背景には、ドイツは日本と同じく教師の待遇がいいということがある。イギリスやスウェーデンは、教師の給与が安いのである。 日本の場合は、アジェンダ21をいかに反映するかの意識が低いし、教育指導要領とマッチしていないため、ほとんどの機材が学校教育で使えない。
KRAVについて ![]()
KRAVは、(1)有機農産物と有機農法を促進、(2)有機農産物基準の開発、(3)有機農産物の認証、(4)有機農業についての情報提供を目的とし、国民の70%の間で認知されている団体である。 スウェーデンでは、現在、2500戸の農家が10万haの農地で、有機農業を行っている。2000年までに国内生産物の10%を有機農産物にすることが目標とされている。7200頭の牛乳、1500ha以上での根菜類やじゃがいもの作付、350もの食品加工会社の参入などがKRAVで行われている。
KRAVのパンフレットSwedish organic food.The natural choiceより
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