養豚が切り開く循環型まちづくり

豚でる発想でリサイクル

都市農業研究会


blue.gif日本の自給率は4割だ

  現在、日本の食料自給率はカロリーベースで42%に過ぎず、食用及び飼料用をあわせた国内で消費される穀物の約70%は輸入に頼っています。食肉の供給量を見ましても、平成8年には牛肉150万トンのうち輸入は約6割の90万トン、豚肉では220万トンのうち輸入は約4割の93万トンにのぼり、豚肉の輸入量だけでフィリピン一国の年間生産量に匹敵します。まさに経済力に任せて、世界中から食料を集めている状況です。

blue.gifゴミ処理という無駄をなくそう<
 一方、毎日大量の残飯や生ゴミが発生しています。平成8年度の農業白書によりますと、1日1人あたりのカロリー供給量は2630kcalなのに対し、同じく摂取量は2000kcalにすぎません。この差、つまり供給されたカロリー量の1/4にあたる部分が、食べ残しや生ゴミとして捨てられていることになります。そしてこれを多くの経費と労力をかけて焼却処分しています。平成8年度清掃局の統計では東京だけで年間165万トンの生ゴミが発生し、その処理経費は930億円にも達しています。この膨大な無駄を解消し、循環型社会づくりを推進することが急務となっています。

blue.gif生ゴミ処理はコンポストだけではない
 生ゴミの再利用として、家庭や学校などでコンポスト化が行われております。東京都でも、平成10年度から都庁の生ゴミをコンポストとして再利用する実験がスタートします。しかし、ごみ問題を解決する方法は、それだけではないはずです。そこで、都市農業研究会では、残飯や生ゴミから直接人間が食べられるものを作れないかと考えました。そしてその答えが豚でした。

blue.gif東京の生ゴミで190万頭の豚が飼育できる
 残飯などをそのまま豚に与えることもできますが、保存性・衛生対策、また水分が多いままでは給餌量に制限があるなどの点から、加熱乾燥したものを飼料とします。これで子豚から肉豚として出荷するまで4ヶ月豚を飼いますと、1頭につきおよそ850kgの残飯が必要になります。ですから、先ほど申し上げました生ゴミの量を、すべて飼料にしますと、年間およそ190万頭の豚が飼える計算になります。これだけの豚を飼うと、鹿児島県、宮崎県に次いで全国第3位の養豚県になります。ちなみに、現在東京で肉用として飼われている豚は約6千頭、全国でも980万頭ほどです。

blue.gif4億食のトンカツ・726万人分の肉の提供
 子豚から出荷に適した100kgを越える程度の豚に育てるために約4か月必要ですから、1年に3回転として、1度に飼う豚の数は64万頭になります。これだけの豚を飼うためのスペースとして100万平方メートルほどの面積がいります。たいへん広い面積のようですが、高層ビルにすれば、都庁第1庁舎が5こ分の床面積になります。また、1頭の豚からとれる肉の量はだいたい44kgほどですから、全部で8万3600トンもの肉が生産されます。仮にこれをすべてとんかつにしますと、なんと4億食分に相当します。1人あたりの年間豚肉消費量からみますと、726万人分の肉が供給できることになります。

 さらに、豚は1頭約3万円で販売されていますから、190万頭では570億円になる計算です。現在都内の養豚生産高が5億円ですから、産業として約110倍に成長する可能性もあるわけです。

blue.gifメタンガス醗酵処理すれば、5万世帯分のエネルギー

 それだけではありません。豚が残飯を食べて出す糞尿も有効に利用することができます。糞尿をメタン発酵しますと、4頭で毎日1m3のメタンガスが発生しますので、190万頭の豚を飼うと年間5840万m3のメタンガスを発生します。これを一世帯あたりのカロリー消費量に換算しますと、5万3千世帯分に相当します。また、これを使って発電しますと、およそ3万5千世帯分の電力を賄うことができます。これだけの電力を電力会社に売ることになれば、10億円近い収益が見込まれることになります。

 もちろん、メタンガスを取ったあとの発酵かすは、肥料として利用できますので、畑に還元して、有機農業の推進にも役立ちます。

blue.gif経済効率の重視が都市から豚を排除してきた
 このように、養豚によるリサイクルの大変すばらしい点を述べてきましたが、これは決して斬新な発想などではありません。昔から、アジアでは残飯や人間の排泄物を食べさせ、豚を飼ってきました。かつて、東京の郊外など都市のすぐ近くでも、残飯やとうふ粕などを利用した畜産業が発展し、残飯養豚、粕酪農などと呼ばれていました。しかし、安い輸入穀物の流入、残飯処理に手間がかかる、あるいは畜産は汚いと追いやられるなど様々な理由で、現在ではほとんど姿を消してしまいました。

 特に、経済性のみを追求する社会となって、私たち農業関係者もいつの間にか効率ばかりを重視するようになってしまいました。同時に、消費者は農業の生産現場とはますます切り離され、家畜のえさのことなど考えず、ただ霜降り肉などおいしいものを求めるばかりでした。そして、私たち行政側も、生産者や消費者の、こうしたニーズをそのまま受け入れるばかりだったのではないでしょうか。しかし、循環型社会づくりが必要となった今こそ、生産者も消費者も一緒になってもう一度考え直す時であると思います。その中で私たち農林行政を担う物は、今まで以上に重要な役割を担う必要があると思います。

blue.gif都市で豚を飼うための技術はすでにある

 豚を飼うために必要な技術もすでにあるのです。大量の生ゴミを加熱処理し、飼料化する技術はすでに確立しており、スーパーから出る生ゴミなどを鶏の餌として利用している企業もあります。また、北海道では生ゴミを飼料化する大型プラントが、今年から稼動する予定です。大量の豚を飼う施設も、臭いなどが問題にならないウインドレス豚舎、つまり密閉豚舎で飼うことができます。糞尿の発酵処理については、すでに海外で実用化され、オーストラリアでは売電を行っている養豚農家もありますし、ヨーロッパでもたくさんの報告があります。今年京都府八木町で、家畜糞などを利用した町立のメタン発酵プラントが建設されています。

blue.gif農的発想を循環型社会づくりに生かそう

 はじめに申し上げました通り、日本は大量の食料を買って、大量に棄てている不思議な国です。少し知恵を働かせれば資源となる生ゴミや残飯を、燃やしているのです。人とともにごみも日本一多い東京でこそ、残飯の輸送コストはかからず、こうした技術を生かし豚を飼う意義があるのです。私たちは、おおいなる無駄を解消し、豚を通じた新たな循環型社会づくりを東京から提唱していきたいと思います。

平成10年2月10日東京都自主研究グループ活動発表大会「東京都職員研修所」にて発表

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