都市農業研究 横浜市の食生活
生鮮品から遠ざかる食生活
現代の都市の食生活というのは、豊かになればなるほど、食が外部化するような仕組みになっている。構造的に、農産物と直接接する機会がなく、そのうえ一次産品の農産物が全くなくても毎日の食生活には不自由しない。こういう暮らしが実現してしまっている。
総務庁の「家計調査」によれば、生鮮食料品の支出が減り、その分加工食品のように手間をかけずに食べられるものが増えており、大体、食費の6割は全く手をかけないで買ってきただけで食べられるものになっている。
ハンバーガ、フライドチキン、サンドイッチのように食事の材料の準備は外部に依存しているが、食べる場所は家庭で、コスト的には外食よりも安くてすむものを「中食」という。これが大きく伸びている。
家計は増えても食費を削る若者たち
この傾向は若者でさらに大きく、特に20代の若者では、これが7割に及ぶ。20代の若者は野菜で60代の半分しか買わないし、果物では4分の1でしかない。80年代に消費支出は全体で20%伸びたが、食料費の伸びはわずか4%であった。それも、ほぼ横ばいを保てたのは、60歳以上の高年齢層がいたからである。20代は16%、30代は12%と生活費が伸びているのに、食費は年々低下している。20代の食費に占める青果の割合は14%に過ぎず、すでに外食の22%よりも低い。若者は他のレジャーなどの支出と比べて、食を著しく軽視している。家計が豊かになっているのに、食費を削るというビヘイビアはこれまで例がない。
(注)消費に水をかける構造的物価上昇
青果は、農業の高齢化や気象災害によって値上がりしている。80年代の10年間で青果物は40%上昇した。消費全体では20%の値上がりだから、その分、消費が減少した。つまり、消費者は工場生産で価格が安定しているもやしや加工済のサラダが割安に感じられるため、これらを購入することで生活防衛したのである。
農業体験なき世代への交代
昭和30年代生まれの若者は高度生産大量消費のシステムの中で育った、生まれながらの都市生活者である。物心がつくころには、すでにスーパーマーケットが普及し、青果物も自然物よりは単にモノとしてイメージする世代である。彼らには、自分で畑で野菜をもぐといった直接体験がなく、農業は単に通学路で目にする景観でしかない。
また、40年代生まれの世代では、コンビニ、ファミリーレストランなどの普及により、食から調理すら欠落する傾向が見られる。要するに、こういう若者がこれからの食生活市場の中核を占めるのである。生鮮食品と接する機会も薄れ、青果物の消費も減っていく。今後は生鮮野菜や果物のマーケットは一層の縮小が予想されるし、農業や農産物への理解も一層希薄となっていく。
直接ベネフィットをもたらす農業へ
若者たちは農業に、大半が無関心か、あってもあまり念頭にない。行政などが実施する農業側のPR活動も、大半の無関心な消費者には全く届いてない。一方、農家に対しては土地持ちという冷淡な反感がある。こういう環境の中で、説得性のある都市農業を提示していかなければ、とうてい市民の理解は得られない。
農地に大型情報版を設置したり、全戸に農業の情報をチラシ配布するなど、広く浅い地域活動が望まれる。
組織的な対応も難しく、実際に農家を見たり、ゲリラ的PRをに拠点ごとに実施し、少しづつ味方を増やしていくしかない。
また、都市環境とか緑地の保全といった公的な利益という安易に持ち出されるレトリックも、観念的すぎる上にわずかの農家の利益保護になるとして、反感が強い。花卉園芸農家が植木のホスピタルを行うなど日々の暮らしの中で実感できる実益を提供することが求められる。
【参考文献】
三沢 ひろこ「現代食生活と都市農業」
『都市農業問題に関する研究』(1992)横浜市都市農業問題研究会
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