Appendix 1
2000.7.7
1ヶ月間、石鹸を作る時間がとれず、頭の中でぐるぐると、オリジナルレシピを考えたりしていました。しかし、実際に作ってみないことには、どの油脂がどんな石鹸になるのか、想像がつきません。悶々とを考えているうちに、まずは単一原料の油脂による石鹸の性質について知りたくなりました。
ネットサーフィンしてみると、いろんな所の掲示板やところどころに掲載されていたりはするのですが、もっと詳しく知りたくなってきて、オリジナルレシピ作成よりも、実験計画を考えるようになってしまいました(←結局は、自分で一度やってみないと気が済まない性格なだけ(^^;))。まずは、作成編です。
材料:石鹸のベースとしてよく使いそうな油脂類
油脂 商品名 製造元 価格※1 オリーブ油(ピュア) ブイトーニオリーブオイル イタリア製 \298/228g ココナツ油 ミノーラココナツオイル フィリピン製 \1050/1000ml 米ぬか油 日本のこめサラダ油 ボーソー油脂 \298/500g※2 牛脂 牛脂 岩手フーズ \1/400g ※3 ラード 純製ラード 雪印乳業 \155/250g サフラワー油 日清べに花油 日清製油 \498/600g ※1:税抜き価格です。※2:発売元は生協です。
※3:これは生協の精肉コーナーにある「ご自由にどうぞ」に、精製済の一口サイズのものが、一袋に大量にまとめて1円と貼っておいてあったのです。
方法:コールドプロセス法で作成
作成条件(室温・湿度)をなるべく同じ条件にするため、一日で多種類のものを作る。そのため、バッチサイズは小さめ(例え250gとはいっても、これだけたくさん作ると置き場所もないので)。
早く作成できるように、またバッチサイズも250gと小さいのでシェイク方式(参考HP:杉原先生の理科実験室・ペットボトルでアッと楽々石けん)で作成。900cc程入る円筒形のタッパー型に、水88g(35%)に、10%ディスカウントに計算したそれぞれのNaOHを溶かしておき、油脂類250gを入れ(全体量400g前後)、シェイクする。
油脂類の種類に関わらず、NaOH水溶液共に40℃で混ぜ始める。※安全対策として、絶対飛び散らないように、蓋の部分に布ガムテープとウェスを巻き、ビニール袋に入れる。また、台所のシンク内でシェイクしました。
出来るだけ厳密に同じ条件で作成するため、シェイクの速度はメトロノームを使って同じ速度で撹拌するようにしました。
・最初の連続5分間:200回/1分間の速さ。
・1分休み
・連続1分間:200回/1分間
・30秒休み
・連続1分間:200回/1分間…以下繰り返し
以上の手順で撹拌しました(トレースまでの時間は休憩もいれたトータルの時間です)。
保温は、全部同じ発泡スチロール箱に入れました。
24時間経過したものは、型から出せなくても保温終了、箱から出しました。
油脂とNaOH分量(90%)、鹸化率の範囲
各油脂の90%の鹸化率(10%ディスカウント)で計算したNaOHの分量と、バッチサイズが小さく、また秤の精度が1g単位のため、90%として計算した分量でも、ディスカウント率に幅がでます。よって、このNaOH分量の場合の鹸化率の範囲も計算しました。
(これみると、やっぱりバッチサイズはある程度の大きさが必要だとしみじみ思います)
油脂 鹸化価 NaOH
分量(g)鹸化率
(%)オリーブ油(ピュア) 0.134 30 87-92 ココナツ油 0.19 43 90-91 米ぬか油 0.128 29 90-92 牛脂 0.1405 32 90-92 ラード 0.138 31 89-91 サフラワー油 0.136 31 90-92 ※鹸化価はTao's Hand made soap:レシピ作成の方法 参照
結果:(1)各油脂類とトレースまでの時間
各油脂類の常温での状態と、トレースにかかった時間(分)とトレース直後の状態です。室温25℃、湿度75%でした(クーラー使用)。
油脂 常温での状態 時間 トレース直後 オリーブ油 液体・淡黄色 27 コーンポタージュ(コーン)※ ココナツ油 固体・かすかに黄のかかった白 33 ヴィシソワーズ 米ぬか油 液体・黄色透明 5 缶詰めクリームコーン 牛脂 固体・白色 13 ヨーグルト ラード 固体・白色 29 ココナツミルク サフラワー油 液体・オリーブ油よりも淡い黄色 30 コーンポタージュ(ポタージュ)※ ※インスタントのクノールカップスープの種類で、よく特売で売られている最もポピュラーな二つ。コーンの方がポタージュよりもやや黄色いんです。
結果:(2)保温中の各石鹸の状態
石鹸 2時間後 4時間後 6時間後 8時間後 12時間後 オリーブ油 不変 3割ジェル化 5割ジェル化 全ジェル化 芋ようかん・栗きんとん ココナツ油 一部の地表が盛り上がる※ 噴火口と亀裂が出来る そのまま固まった? 噴火の恐れなし でも噴火口と亀裂はのこったまま 米ぬか油 ジェル化の兆候 8割ジェル化 すりガラス状・固まり始め? 固まり始めている 表面は固いけど中がやわやわ。 牛脂 もう固まっている・熱い 相変わらずがちがち・砂糖菓子のようだ 相変わらずがちがち 相変わらずがちがち 相変わらずがちがち ラード 不変 外側がすりガラス? 固まってしまってたらしい 固まっている 牛脂やココナツ油よりは少し柔らかい。 サフラワー油 5割ジェル化 全ジェル化 芋ようかん すりガラス状 表面は少し固まった。米ぬか石鹸よりもやわやわ ※:地学で習った、昭和新山の噴火の話を思い出しました。
結果:(3)24時間後の各石鹸の状態、型出しの可・不可
型は牛乳パックで、内側にワセリンを塗っておきました。
石鹸 24時間後の状態 型出し 備考 オリーブ 栗きんとん・やわやわ 不可 保温箱から出し、2日後に冷凍庫に3時間入れて、牛乳パック分解して取り出しました。 ココナツ油 牛脂より固さはない 可 いとも簡単に取れました 米ぬか油 かなり黄色・爪の後がつく位柔らかい 冷凍庫※ ぶんぶん振り回しました 牛脂 白くて石膏のよう・がちがち 可 ぶんぶん振り回しました ラード 白くて少し柔らかい 冷凍庫※ いとも簡単に取れました サフラワー油 白くてラードよりも固い 冷凍庫※ 牛乳パック分解※※ ※冷凍庫には4時間入れました。※※これは、オイルの性質のせいというよりも、これだけがパックのつなぎ目からオイルが漏れていたので、取り出しにくくなってしまったようです。
考察&反省
シェイク方式で作成したことについて
同じ条件で作成するには、ハンドミキサー等の機械を使う方が人間の手でやるよりも、撹拌条件が一定になるのですが、シェイク方式にしたのは単純にハンドミキサーを持っていないからなのです。
それに、かつて生クリーム泡立てるのに使ったとき、ハンドミキサーって、ビーター部分に結構クリームが残ってた記憶もあって、その分がバッチサイズに関わらず勿体ないと思ったり、過去に生クリームを飛び散らかした経験有り…、とハンドミキサーはなんとなく気が進まなかったのです。
また、「杉原先生の理科実験室・ペットボトルでアッと楽々石けん」では、「より安全で効率的な攪拌方法」で、かつ「ハンドミキサー攪拌よりも優秀」とあったので、こっちの方法に飛びついたわけです。(長所)
・NaOHのついた洗い物が少なくて済む。
・小さいバッチサイズの撹拌に適している。
・トレースが早い(短所)
・大きいバッチサイズには適さない。
・容器に関しては、十分な安全性が必要。効率よく十分にシェイクするためには、入れた材料の分量に対し、容器にある程度の空間が必要となります。ということは、バッチサイズが大きければ大きいほど、使用する容器が大きくなります。
また、バッチサイズが大きいということは、重いということです。重くなるほど、容器をしっかり封印しなければ危険なことになります。また、当然のことながら、重くなるほどシェイクするのが容易ではなくなります。トレースは、泡立て器でかき混ぜたときよりも、はるかに早くトレースが出ました。オリーブオイルで30分以内ってのは、相当、撹拌効率が良いと思います。
しかし、さすがに連続6バッチは疲れました…。トレースが出るまでの時間
何と言っても、米ぬか油のトレースが出るまでの速さは、感動的です。
前評判で、米ぬか油は早いというのは知っていたのですが、これほどまでとは思いませんでした。
牛脂は、「The Soapmaker's Companion」の96p.で、「Quick trace」とチェックされていたので、ある程度早いとは思っていましたが、ここではラードもチェックされているんです。ラードってそんなに早くないというより、寧ろ遅かったのだけれど?何か間違えたかなあ?
それよりなにより、ココナツ油にもチェックしてある!ココナツ油なんて、一番トレース出るのが遅かったのに。
それにしても、トレースの速さは、何によって変わるのでしょうか?
脂肪酸なのかな(反省:ちゃんと洋書を読む)。それと、牛脂は「そろそろトレースが出るかな?」と思って、2,3回振った瞬間にいきなりヨーグルトのようなトレースが出ました。それまでポタージュ一歩手前だったのに。
あまりにもあっという間で、型に入れたらぼこぼこになってしまいました。あと、油脂と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜ始めたときの温度が、40℃で統一してしまったので、油脂によっては最適温度ではないのもあったと思います。(「The Soapmaker's Companion」に温度に関する章があるんです。読まねば〜)
保温中の状態
同じ保温箱に入れたのは、間違いだったかなあ?
そう思ったのは、ココナツ石鹸が噴火を起こしたからです。原因は、暖め過ぎになってしまったようです。かき混ぜ過ぎという可能性は、あまり考えられません。というのは、トレース時の状態がヴィシソワーズ。完璧なトレースというよりは、字が書ける?ような気がするというトレースだったからです。
それと、24時間経ってオリーブ石鹸が型から取り出せなかったのには吃驚しました。
これは、季節的なものも関係してるのだろうか。
冬に作ったときは、なんの苦労もなく固まって、するっと型から出てきたのに(でも、「お風呂の愉しみ」方式だったから、ジェル化はしていない)。
でも、こうしてみると各油脂にとって、最適なトレース状態って違うのかも?オプションは入れない場合ですが。
しっかり字がかけるトレースの方がいいとか、ポタージュ状で、字が書けるかもしれない?という状態の方がいいとか、あるのだろか?
要は、油と水が分離しなければいいのだと思うけれど、かき混ぜすぎてもいけないみたいだし(この辺の説明って「The Soapmaker's Companion」に書いてあるかな?→早くちゃんと読めって(^^;))。それと、材料によってはジェル化しないのもあるのだろうか?
今回、どう見ても牛脂とココナツはジェル化していなかった。ラードもおそらくジェル化していない。でも触ってみると、非常に熱かったのです。だからジェル化はしていないけれど、十分な発熱反応はあったように思います。
他の油脂のように発熱反応はあっても、ジェル化しないのか、それとも暖まりすぎない方がいいのかなあ?。ココナツは暖めすぎなのに、ジェル化していなかったし。でも、噴火口の原因はかき混ぜすぎだと仮定するとどうなる?
ココナツ、ラード、牛脂。
これらに共通するのは、固い石鹸を作るということ。ということは、固い石鹸になる油脂はジェル化しないということなのでしょうか。型出しについて
型出しのしやすさは、単純に石鹸の固さによるようです。
それと、ジェル化したかどうか、かな。
一番型出ししやすかったのが、最も固い牛脂。
次がココナツ。
取れそうで取れなかったのがラード。
米ぬかとサフラワーは、ちょっと難しそう。
と言うわけで、最後の3つは冷凍庫行き。
冷凍庫から出すときは、ラードが簡単に取れ、米ぬかはちょっと苦労。
サフラワーは、まあ運が悪かったかなあ、ということで。
でも、トレースが漏れていた継ぎ目で引っかかったところ以外は、すぐはがれたので、もしかすると、もっと簡単に取り出せたのかもしれません。実はワセリン塗ったのは初めてだったのだけど、かなりすっぽり取れることが判りました。
石鹸の色
石鹸の色は、基本的に白なのですが、こうして並べてみると、白とは言っても意外と違う色になりました
白さ順に、ココナツ=サフラワー>ラード>牛脂>オリーブ>>米ぬか、です。
ラードは、ほんのり赤みのある白(Why? どこにほんのり赤くなる要素があるんだろう。パッケージは赤だけど?(^^;))で、牛脂はほんのり黄色。
オリーブは、黄色がかった白で、米ぬかはクリーム色。
油脂の状態では、牛脂=ラード>>ココナツ>サフラワー>オリーブ=米ぬか、という感じだったのに。さいごに
トレースにしろ色にしろ、同じ種類の油を使っても、製造業者によって多少の違いはあると思います。この結果のすべてを一般化することは出来ませんが、それぞれの油脂による石鹸作成中の性質の傾向は掴めたと思います。
各石鹸の使用感についてはAppendix 2に続きます。
(但し、一ヶ月後)