日本一の恐怖







富士山に登ってきました。


人間というものは、突然できそうにないことをやってみたくなるもんです。

・・・・人間全体じゃなくて、地域限定なのかもしれないけど。



学生のバイトさんたちが夏休みに入ったくらいに、

今年の夏はバイトのみんなでどっか行きたいね

泊まりがけじゃなくて日帰りでもいいよね(24時間シフトのコンビニだから)

車で行ける近場だよね(この時点で夏休み期間3/4消化)

海はもう終わりだよね

山かぁ

そういえば富士山って登ったことないんだけど(彼女は静岡県民なのに)

俺もですよ

わたしも7合目くらいまでかな

登ってみたくない??

みたい!

今登らなかったら多分一生登らないっすよ(彼は来春から会社員)

じゃ来週末あたりに登ろうか

どうせならもっと人誘おうよ

金土休める人、休める人、休める人〜(あれこれやりくりして5人)

はい決定!!


車所有者が二人いたのでレンタカーはやめて、夕方シフトが終わる午後10時30分に店の前で待ち合わせ。
わたしはる○ぶ富士山を買い、有名で混んでいるという噂の河口湖口を避け、穴場と表記のあった須走ルート(実は下山道の砂走りを歩いてみたかった)を推し、なんとなく決定させてしまった。
決まれば何となくわくわくするもので、バーゲンでリュックを買い、当日の夕方にスーパーへ行き、お菓子やら雑貨やらをカート一杯買い込んだ。
メンバーの中で唯一体育会系の経験がないわたしの荷物が一番重かった。


当日、雨。
夕方から雨。
夜になっても雨。

5合目着いたら曇り。

さすがに雨の中登るつもりはなかったけど、曇りとなると微妙〜!!
しかも実際五合目にいるもんだからハイになっちゃって、車が止まった瞬間みんな黙々と準備を始めた。
山の魔力って怖いですねぇ。

午前2時、登山道入口で記念撮影をして、さっそく登り始める。
5合目半にも行かないうちに
カッパを着れば
止んだと思って脱げば

まだ雲の下なのに寒い寒い。
突風が吹くからさらに寒い。
でもね、休憩を取るごとに裸族になる人が約1名。彼の内燃機関は絶対人間外だ。

登り始めてから1時間、延々と続く森と岩場にいい加減足が悲鳴を上げ、須走ルートが穴場といわれるわけがわかってきた。
面白くないから誰も登りたがらないルートなんだってことが。
最初は異様にハイで、山小屋の人に「夜中なんだから静かに!!」と注意されるくらいだったワカモノ達も次第に無口になってきた。
わたしはと言えば、体力の消耗をできるだけ抑えて運がよければ登頂できたらいいななんて状態だから、元から無口。
6合目から7合目の、山小屋もなく一番長いインターバルにかかった頃には「絶対河口湖口の方が楽だった」という空気が背中からびんびん伝わってきた。

八合目半くらいでご来光かなと思ってたんだけど、全然進まなくて結局七合目よりずいぶん手前で夜が明けた。
でも曇ってたから、七合目の山小屋で休んでるときに太陽が雲から顔を出し「これがご来光」と勝手に決めて写真を撮りまくった。

そこからが、もう!!

体育会系の裸族ともう一名が高山病でグラグラ、元水泳部で登り始めに股関節を痛めたはずの女の子と現役バスケ部の男の子は高度が増すに従ってピッチが上がり、ザクザク登っていく。
両者との間は半合くらい開き、先頭が山小屋に着いて30分待つときもあった。
最初は気を遣ってた元気組も、最後には「座ってる暇あったら足動かしてくださーい」と無理を言う始末。
でも高山病って、上に行ったらひどくなる一方だからホントは少し下りたりとかした方がいいんだよね。


怖くて言えなかったけど。


ちなみにわたしは7合目過ぎたあたりから軽い頭痛がしてたんだけど、とにかく持病の喘息が怖くて最初からずーーーーーっとゆっくり(苦しくなると半歩ずつしか進まない)登ってた。
みんなより先に出て、みんなに追いつかれて休憩して、またみんなより先に出るみたいな感じ。
自分を嘲笑する意味もこめて「カメカメ作戦」と心の中で繰り返しつつ。

普段やかましい自分を考えると、なんて謙虚な(山に対して)。
苦しくなったら休むけど、行けるところまではとにかく前に進もうみたいな感じでのろのろのろのろ。
既に足元より遥か下になってしまった雲海や、立ち止まって眺めると地面が斜めってんのか自分が斜めってんのかわからなくなってくらくらする回りの景色(ものすごく殺風景)などで気を紛らわせつつ。
おかげで頭痛以外に障害はなく、何とか9合目までたどり着いた。

砂利坂あり、岩場あり、崖ありのコースに8合目から河口湖からの登山客が合流し、休みたくても避難場所がない状態になった。
しょうがないから登山道の脇に立ち止まるんだけど、ご来光を拝んだ後の下山客まで加わって、ただでさえ険しく狭い登山道は大混雑。
おまけに霧雨じゃない雨が、降るって言うか飛んでくるんだな。
途中晴れたからカッパしまっちゃってて、立ち止まって荷物を広げる余裕もない。
一番上に着たフリースに、中までしみないようひたすら祈るばかり。
二重にはめた軍手はびしょ濡れで、両親指はしびれて感覚がない。
寒いんだか痛いんだかわかんないけど、まだ息ができるだけましかな??っていう状態。

六合目に着く前に「富士山をなめてた」って思ったけど、まあこういう展開は予想できた。
予想できたけど、実際やってみるとシャレになりません。

それでも何故か登るんだよね。
「わたしホントに何やってんだろ」と心の中で繰り返しながらもとりあえず登る、みたいな。
別に諦めちゃってもいいんだけどさ。歩けるうちはとにかく上へっていう、ド根性みたいなものがあったみたい。
そんなもん、わたしには絶対ありえないと思ってたんだけどね。

自分にびっくりだ。

9合目を過ぎ、もういい加減頂上が見えてきてもいいはずなのに風雨のせいで次のコーナーすら見えない。
でも下山客の「もう少しで鳥居が見えてくるよ」の声に何とか望みを繋ぐ。
鳥居って、山頂の神社の鳥居です。
鳥居をくぐればゴールなのです。

半分意識がない状態でひと休みしていると、先鋒の女の子が「鳥居見えたよー!!」と叫んだ。
マンガみたいにどこからかぶわーっと活力が湧いてきた。
そこで調子に乗ってガンガン進むと多分死ぬから、自分を抑えつつゆっくりと。

で、とうとう鳥居をくぐる!!

鳥居をくぐった!!

くぐり抜けた!!



・・・・・・!!


そこには、今来た道と全く変わらない山道がそそり立っていた。
ついでに、上を見上げても頂上の賑わいらしきものは見当たらない。


詐欺だーっ!!


高山病じゃなかったら間違いなく叫んでたね。
山彦どころじゃなく地滑りが起こるほどに。


すんげぇ(非松浦○弥)がっくりきたけど、とりあえず歩き出す。
だって先があるんだもん。
たとえ詐欺まがいの鳥居だったとしても、頂上が近いことに変わりはないはずだから。
自分を慰めるのも、励ますのも、諦めさせるのも自分自身。
山って高く登るほど孤独になるものみたいですね。

どんどん道が狭くなり人は多くなり風雨は強まり、頭痛とブチ切れ度がピークに達する頃、唐突にそれは現れた。


狭い山道に迷惑なほど留まっている人だかり。
その先からかすかに聞こえるFMの音と食べ物の匂い。
霧の中時折光るフラッシュ。

そして、鳥居。



今度こそ本物です。
だって周りに狛犬とか碑とか立ってるし、何よりその先が石段。

これだ!!

これが山頂だ!!


しかも鳥居の下に例の体力無尽蔵な女の子がいる。
わたしの名前を呼んで手招きしてる。


人波をかき分けつつダッシュしたつもりなんだけど、
その子の目には突き飛ばされながらのたのた上がってきたようにしか見えなかったらしい。

とにかく、着きました。
山頂です。


実は鳥居の先にまだ階段があったんだけど、
写真を撮って階段上りきる前にバテちゃってみんなに置いてかれちゃったんだけど、
やっと地面が平らになったとこまできた頃には、みんな山小屋の中でしっかりくつろいでたりしてたんだけど。

登っちゃったよ!!
着いちゃったよ!!
富士山頂だよ!!!


相変わらず霧雨で景色どころか10メートル先も見えなかったけど。
それに、とにかくめちゃくちゃ寒かった。
五合目でみんなにバカにされまくったフリースが1人勝ち。
それでも歯の根が合わない合わない。

おかげさまでコップ1杯400円もするココアだのお椀1杯800円もするラーメンだのをみんなで食べる羽目になった。
ぼったくりだよなぁ。
トイレ200円だし。
おにぎり持ってたからまだ良かったけど、山小屋で満腹になろうと思ったら2000円あっても足りないかもしれない。


どーでもいいけど、山小屋の人ってなぜかみんな裸足にサンダルなんだよね。
スキー場ですらそんな人いないって。
小屋の中だって暖かくはないのに。

・・・・・ちょっと怖かった。



お腹が少し落ちついて、みんなに眠気が出始めた頃、
急に外が明るくなった。

何で明るいんだろ??と思って入口を凝視していると、
なんと外には日の光による影ができているではないですか!!


わたしは1人、カメラを持って外に飛び出した。



相変わらず吹き荒ぶ強風と、頭上に広がる青空。
さっきまで立ち込めていた雨雲はどこへ消えたのか。

眼下には雲海。
突き刺さる日差し。


絵に描いたような山頂のビジョン。



秋の運動会とかで良く見る「澄んだ青空」よりも色は薄くて、それよりもずっとずっと透き通っている。
「透き通る」空の描写って何度も読んだけど、実際に目にしたのは初めてだった。



後で写真を見て、その透明さが紫外線の強さだったことを実感したわけですが。



とにかくあの晴れ方はマンガみたいだった。
変わりやすい山の天気って言ったって、まさか数分の間に180度変わるなんて。

「ウチら、ちょっと強運??」とか思っちゃったもんね。
山をよく知る人には普通だよって突っ込まれそうだったけど。

でもわたし達が8合目あたりですれ違った人たちは「山頂にいてもずっと雨だった」て言ってたから、ラッキーだったことには変わりないと思う。
初登山で晴天だもん。ちょっとすごいよ。


まなぼちホームへまだあるんだよ