今回のご報告は、ごく身近な木について

地球に生物が誕生してから40億年。
生物たちは、この気の遠くなる長い年月をかけながら、その地域、その場所に応じて種を分化させてきました。その数は実に3,000万種、あるいはそれ以上。

さて、今回は私たちが住んでいる嬉野須賀町が舞台で、近鉄中川駅から南に向かう県道沿いに点々と見られるドングリのお話です。 
                       
以下は、「このきなんのき掲示板」に私、キッキーズが投稿したドングリについて、各地の皆様方から教えていただいた内容を、ご了解の上、紹介させていただきます。http://www.ne.jp/asahi/blue/woods/

キッキーズ:この木はなんの木ですか? 

このサイトで、過去の鑑定図鑑をみましたらカンサブロウという樹が見つかりました。その樹とよく似ているとは思うのですが、少し違うような不思議なドングリの木が我が家の近くにあります。今、ドングリが実っている形を見ると、愛・地球博で「この木はモンゴリナラで、実の先が凹んでいるのが特徴です」と解説されたものとそっくりなんです。
でも、我が家は三重県松阪市なのでモンゴリナラの分布区域外のようです。葉っぱとドングリの写真を撮ってきましたので、ご教授ねがいます。


@ A左の葉

KOKONOEさん:コナラでは?

モンゴリナラという木は知りませんが、コナラのようにみえます。
ありゃ!ホント、ドングリの先が凹んでいますね。ドングリは変異があるといいますが・・。ともかく、コナラの写真を見てもらいます。。そして詳しい方のレスを待ちましょう。


B A上の裏側

山東さん:ミズナラでは?

私はミズナラもしくはナラガシワではないかと思います。コナラにしては殻斗(かくと:ドングリの帽子)が大き過ぎるように思います。私がつい先日に撮影したミズナラの葉っぱとドングリの写真を見て、比較してください。


C

KOKONOEさん:ナラガシワには2〜3センチの葉柄があります。

私からもミズナラのドングリと、ナラガシワの絵を貼ってみます。キッキーズさんのもの、山東さんのものと葉柄を比較していただくといいと思います。
 

キッキーズ:森の自然学校でモンゴリナラに出会いました

みなさん、ありがとうございます。ミズナラの写真は我が家のそばにあるのとよく似ていますね。先日、愛・地球博の長久手「森の自然学校」でモンゴリナラという奇妙な樹を見てきました。(第73回で既報)ドングリの先が凹んでいるのが特徴なのだそうです。そのモンゴリナラという木のドングリは私の自然観察行動記録集にアップしてあります。

KOKONOEさん:モンゴリナラって面白い樹ですね。

行動記録集からモンゴリナラを見ました。ドングリの形がとても面白いですね。初めて見ました。「原色日本植物図鑑」には、モンゴリナラの分布は蒙古、中国北部・東北部、ウスリー・アムール、朝鮮となっていますが日本にも分布しているのでしょうか。神奈川県の県誌2001にホソバガシワの紹介が掲載されていて、「別名をカシワモドキ、ミズナラとカシワの雑種で、葉形はミズナラによく似ているが、やや大きい。葉身の長さは10〜20cm、葉面は白っぽい緑色で、有毛。1年枝、葉柄、表面主脈にはカシワに似た褐色の星状毛を密生する。直線的な側脈が11対、葉柄下面の毛量がやや少ない点にもミズナラの特徴が認められる。分布は北海道、本州中部以北でモンゴリナラと混同されやすい・・・」

この文面を読む限りですが、モンゴリナラが日本に分布するとも、しないとも書かれていないのですがホソバガシワと間違えやすい点ははっきりとしています。

このきなんのき所長:モンゴリナラは謎の多い木です。

モンゴリナラは正体がはっきりしない謎の木で、日本では愛知県と岐阜県の一部や北海道の日本海側に、それらしき木の分布が知られています。ただ、研究者によっては見解が異なるようで、図鑑によっては日本には分布しない、と書かれてあるものも多いと思います。長久手会場には私も行きましたが、珍木モンゴリナラを間近かに観察できる良い場所ですね。写真の木は葉柄(ようへい:葉の柄の部分)が認められることからミズナラではないように思われます。ナラガシワが候補にあげられますが、葉の付け根部分が耳状になっている(ミズナラやカシワの特徴)ことが気にかかり、雑種の可能性があるのではと思います。ミズナラ×ナラガシワのナラガシワ、ミズナラ×コナラのミズコナラなどを候補に挙げたいですが、正確に区別することは難しいかと思います。KOKONOEさんが書かれているように、カシワとの雑種の可能性もありますが、写真の葉は鋸歯(きょし:葉の縁のギザギザ)がとがっていて、毛がさほど多くないように見えたことから、カシワの血は入っていないのではと感じました。

ぶらいあん:モンゴリナラには思い出があるので・・

思い出のあるモンゴリナラの話だったんで、投稿します。混乱しまくっている樹木ですよね。私なりの見解ではモンゴリナラと日本で呼ばれている植物は、少なくとも二つのものが入っていると思うのです。一つは北海道や日本海側に出てくるもの。もう一つは愛知県、岐阜県周辺の丘陵地に出てくるものです。そしてこれら二つのものは自分が見ている限りでは別のものだと思っています。北海道のものは、ホソバガシワと同じミズナラとカシワの雑種ではないかと思っています。ぱっと見の形では東海地方のものとよく似ていますが、カシワ的な毛が多くてカシワの匂いがプンプンするように思うのです。しかも、近くにはミズナラやカシワがある所が多くて、これは雑種であろうと印象を強く持ちました。

一方、東海地方のモンゴリナラと言われるものは明らかにカシワの匂いはなく、あくまでもミズナラ系のものと思います。この東海地方でモンゴリナラと呼ばれるものとミズナラの一番の違いは葉縁の鋸歯や葉先がミズナラのように尖らず鈍いことで、確かにこの点はカシワと共通ですが、毛が少ないことや変異が少ないことからカシワとの雑種ではなく、ちゃんとした種(または変種)という印象を持ちます。周辺にはミズナラやカシワはまったく見られませんし・・。ただ、これが大陸にある本物のモンゴリナラか?と問われれば、答えられる人は誰もいないというのが実状でしょうね。はっきりさせるためには、大陸の各地の(本物の)モンゴリナラを多量に採取して、東海地方のものと差がないかを確かめなくてはなりません。そもそも大陸の分布域は広大ですし、DNAなんかの分子情報から調査すれば面白いのでしょうけど・・。

CATさん:私も雑種の可能性かと思います。
キッキーズさんの葉だけを見ると、コナラにみえますが、ドングリの写真を見るとコナラよりずんぐりとしていて、ミズナラっぽい感じがします。やはり所長さんの仰るように雑種かなという気がします。コナラ、ミズナラ、カシワはそれぞれ雑種ができることはよく知られているし・・。それから、よく動物の雑種の場合にありますが、子供が直接の親には似ていないので、はるか何代も前の先祖の特長を現すことが時々ありますが、植物にも同様なことがあるのではと思います。数年前に、とある場所にポツンと1本だけ立っている大きなカシワの木の下で3個のドングリを拾ってきて、蒔いて育てたところ、2本は親木とそっくりな、どこから見てもカシワ的な特長を持つ木なのですが、あとの1本は葉の形や表面の様子がミズナラに酷似しているんです。
ただ、大きさだけはカシワ並みで、ミズナラにしては巨大なのですが。このことはミズナラが付近には見られないようなので、潜在的に親が持っていた形質が発現したのかな?と想像しています。
それから私の住む地域では、コナラが多く存在しますが、コナラの場合、個体差が非常に大きいですね。葉もミズナラに近いものから、クヌギかと思うぐらいに細長いものまで色々です。

わいずさん:私もハイブリットでは、と思います。

我々蒙古班を持つ日本人もモンゴルの血を引く人種ですが、植物も然りで、その血を引くものがあるわけです。所長さんが仰るQuercus  Hybridesは私ごときにはどうなるものでもありませんが、キッキーズさんの葉を見ますと、確かに多国籍の印象がありますね。一つ、前から気になっていたのですが「ミズナラ」の学名表記に幾つかばらつきが有り、混乱しています。
Quercus mongolica var.grosseserrata
Quercus crispula
Quercus mongolica var.crispula とありますが、命名規約上は3番目が正式名称となっているようです。日本では単独crispula種として扱うことが多いようですが、学術上ではモンゴルナラの変種として考えられているようですね。
となると、キッキーズさんのミズナラハイブリットの個体にはモンゴリナラの特長が隔世遺伝的に出ているミズナラ×ナラガシワの「ナラミズガシワ」、ミズナラ×コナラの「ミズコナラ」と仰られる所長さんのご意見に感服いたします。

なな@二つさん:モンゴリナラが見つけられる可能性もあるのでは?

ナラ/カシワは和名一般名として、何れが何を意味して、その語源はどこから、そんなことを考えつつも、この二つに地名や色、あるいは季節または物質などの名詞をかけあわせると、主に北半球に広がる数限りないコナラ属(Quercus)を見渡せるでしょうか。その一つ、モンゴリナラのドングリをアベマキと一緒に蒔き、長年観察された広木先生のお話を伺い、感銘を受けました。

http://kyoshoku.coop.nagoya-u.ac.jp/kakehashi/FN/63.html

大陸と我ら列島が地続きであった太古の由来・・・
すると自然に、多くの日本種を含むコナラ属の祖が想像されてきます。祖がなければ米東部ホワイトオークと英国オーク、それに日本列島のミズナラ・カシワ・ナラガシワをしっかり一括りする公約数を説明しづらい・・。
人類の祖はアフリカにあるが如し。多分、それはゴンドワナやワナドー何やらという一つ大陸の時代。
キッキーズさんのナラ種がハイブリットか、広木先生の仰る東海域に生き残った太古の血を次ぐモンゴリナラかは、今後の皆さんの談義を追わせていただきます。冬樫は17〜18世紀に軍船用材として乱伐され、今では希少です。でも、夏のように見えながら密かに冬の血を持つ木々に出会う幸運が年に数回あります。彼らはつまりハイブリットです。コナラ仲間も躊躇なく互いに交わるようです。みなさん、上記のサイトを拝読しますとモンゴリナラを見つけられるのではないでしょうか。それらしき東海雑種ならば、遭遇する機会はかなり増えるように感じられます。蒙古班を持ったロシア連邦の人々が多いように・・。

キッキーズ:もう少し、樹の環境を説明しますと

みなさん、ありがとうございます。ハイブリットの可能性が高いということで、私からもう少し、このドングリの環境を説明したいと思います。伊勢平野、水田地帯に隣接する里地、雑木林がこの樹がある場所です。
この木は、その林が点在する用水路沿いにあって、実生のものです。

   

その中で、特に大きいものはカブトムシの木と呼んでいて、胸高直径が40cmほどのものがあります。その樹皮の写真を見てもらいます。この樹に実るドングリは先が凹んでいません。冒頭でお尋ねしている写真@のドングリは、その近辺にある木の実で、多くの木の実が@と同様に凹んでいるのです。

KOKONOEさん:やはりミズコナラによく似ていました。

所長さんが「ナラミズガシワ」「ミズコナラ」を候補にあげられたので、ミズコナラの写真を撮ってきました。
  

撮影の場所は北九州市内の山です。樹皮は胸高で直径は30cmぐらいです。

そして葉の表と裏です。葉身は16cm、葉幅は9cm、葉柄は1.5〜2cm、葉の表面は無毛で、裏面は主脈と側脈に白い毛があります。葉柄はちぢれた剛毛が見えます。肉眼では汚れた感じです。枝は無毛です。そして側脈は15〜17対です。
次に芽鱗と葉の基部のアップです。頂芽、側芽は5稜です。芽鱗の先は比較的に長い毛が多くあります。

  

そしてそのドングリの写真です。ドングリは長さが1.5cmです。木についているのを撮りたかったのですが、木が高かったので落ちているのを拾いました。

それから樹皮ですが、樹皮は私にはコナラかミズコナラかの区別ができず、どちらもソックリに見えました。

別の角度から撮った両種を貼ります。

  

この木の紹介ですが、私が知ったのは「北九州市立自然史博物館・山田緑地の自然」という本でした。見つけられた方は元大学教授で、現在は山田緑地の館長をされています。ここの面積は345haで、弾薬庫として使用されていましたが、昭和47年に返還され、緑地として管理されているため自然が残っているようです。
ナラミズガシワは似ているかどうか、実際に見ていないのでわかりませんが、ミズコナラを今日、初めて見てさすが所長さんだと思いました。

なな@二つさん:葉に着目して見ます。

@の葉っぱの写真で、この葉は「生活道路に沿った林に多く見られます」とあり、一本の木から採取されたものなんですね。葉柄は耳たぶ状葉脚の左右幅はやや短いようです。しかし、はっきりと「長さ」が認められる。カシワとミズナラはほとんど直付きですから、アオナラガシワやコナラの長さの血でしょうか。日本に自生のモンゴリナラの説明によると

http://uesugi2-web.hp.infoseek.co.jp/genjyo/mongori.htm

その葉は、直付きに見えるそうなので、このキッキーズさんのナラ種はモンゴリナラではない、ということ。一つ解決かな。
では二つ挙がっているハイブリットのどちらか?

その一つミズナラをKOKONOEさん新ツリーにて詳細に見せていただきました。ぱっと見による葉形はミズナラ/カシワ/モンゴリと同じスピッツのある逆長の二等辺三角形です。そしてキッキーズさんのと同じような葉柄があります。ミズナラ×ナラガシワは画像がなく、不明ですがミズコナラが大筋でキッキーズさんのに似ているのはKOKONOEさんが仰るとおりです。しかし、@の葉は上記の他種と決定的に違う点は「二等辺ではない」ことで、つまり左右非対称であることが目立って面白い。最大幅の位置が左右で異なり、一方は上記の他種と同じ葉先側、反対側はほぼ真ん中にあります。非対称葉コナラ属種は他にもありますが、最大幅の位置が異なる例は珍しい。後者真ん中の位置は一般的で、コナラ属においても(逆長二等辺三角形グループに対し)一群をつくり、コナラはその親分格です。ミズナラ×コナラのコンビでも、親の雌雄が逆な場合、それぞれ個体差以上に異なる性質を持つ交雑種が出てくるようです。@の葉の最大幅において、一方の半分はミズナラ型で、もう一方はコナラ型ですからミズコナラの1つであり得ますね。あり得ますが、ミズナラ×ナラガシワのコンビや他の組み合わせにおいても左右非対称となるかも知れません。
他の可能性としてはKOKONOEさんミズナラが再びコナラ(又はミズナラ)と「返り交雑」する場合など、自然界の気まぐれによる種が考えられましょうか。

なな@二つさん:親戚つぽいので、我が森の写真を貼ります。

ミズナラでもコナラでもない。細部を探すと違いがありながら、山田緑地も我が森のものも、親戚みたいなので写真を貼ります。

このきなんのき所長:雑種ということは難しいです。

雑種というものは難しいですね。この木は、鋸歯の様子や葉の大きさはミズナラに見えますが、確かに葉柄が長めだし、樹皮もほとんど剥がれていない点にコナラ的要素が見られるのでしょうね。私はこれらの画像だけを見て、「ミズコナラ」という勇気はありませんが、この木はミズコナラとして知られているようですし、KOKONOEさんは他の葉のサンプルもご覧になっているということでミズコナラなのでしょうね。

キッキーズ:みなさま、ありがとうございました・



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