| 「月例自然観察会」行動記録 第122回 2009.08.16 |
| 実施報告編: ビオトープ池で21年度ザリガニ釣り選手権大会を実施しました。 底を這い回りながらエサを探し歩く、ザリガニを釣り上げるには、それなりのコツがあります。参加者のみなさんはそのあたりを思考錯誤しながらいつの間にか極意を伝授されたようであります。 そのあと、用水路でアユ獲りに挑戦しました。 結果は全部で17匹のアユ! わずか30cm幅の小さな水路にアユがいるなんて、想像もできない話ですが、これはホントのお話です。 さて、今回も少しだけ変わった観察会です。でも、面白くて昔の歴史が学べます。お話の中でいくつ、知っている言葉がでてくるでしょう? では、一緒に始めましょう。 今回のアクションプログラムは 1.地域に育つ里山の歴史を学びます。 2.生き物が生き続けるための最大の愛とはを学びます。 3.滅び行く動植物界のこれまでについてを楽しく学びます。 4.年令を問わず、心の豊かさを感じるお話です。 |
| むかしむかしのこと、今から500年ほど前のお話じゃ。 いせのくに、うれしのというそれはそれは豊かな村があったそうな。 ある年のこと、その年に限って村にはちっとも雨がふらなんだそうな。 それで村のものは大人も子どもも、おじいさんもおばあさんもみんな寺に集まってそうだんすることになったそうな。 「トイじいさんや、また悪代官(あくだいかん)がむりなんだいを言ってきたそうじゃな。」 『三神三獣鏡(さんしんさんじゅうきょう)(1)という鏡(かがみ)をめし出せなどと、かざかみにもおけぬ悪人(あくにん)め。』 「あの鏡は、この村に千年前から伝わるわしらの宝じゃからな。それを召し出せとはあまりにもひどいワイ。」 代官の悪口(わるぐち)ばかりで、話し合いはもうしっちゃかめっちゃか、カンカンガクガク(2)どころではなくなりました。 そんなみんなを前にしてトイじいさん(3)は静かに言い出しました。 「よいかな、村のしゅうたち。トイじいの言うことをよおく聞くがよい。鏡はさし出してもよいと思うのじゃ。なあに当分(とうぶん)の間だけというやくそくじゃからな。それよりもワシがしんぱいするのはひでりのことなのじゃ。このまんまでは大変なことになるやも知れぬ。いっつも言っておるが、畑の草はひっこぬいてはならぬぞ。大根の近くに生えた草は刈(か)り取るのじゃ。抜いてはならぬ。そして刈り取った草はまた大根の近くにかぶせておくのじゃ。よいかな、草はぬかずにかぶしておくのじゃ。ミミズもよろこぶでな。」 それを聞いていた村人たちはつかれたせいもあって、ハイハイと生へんじをするだけでした。 三神三獣鏡をさし出してから、ひと月ほどがたちました。 でも雨はほとんど降りません。 一部の村人たちは 「鏡さまのたたりやも知れぬのお。」とか 『三神三獣鏡さまがおいかりになられたのじゃ。』などと雨がふらないことをトイじいさんのせいにしてしまいました。 一人が言いました。 「トイじいさんはスベリヒユ(4)とかの草を大切そうにしておるが、あんな草のどこがええんじゃろか。」 また、別の一人が言いました。 『トイじいさん、アカザ(5)の雑草の前で手を合わせておった。あんな草、取っても取っても生えてきおる。ありゃあ、あつさでおかしうなってきたみたいやなあ。』 そしてまた別の一人が言いました。 「話をし出すとミミズさまを大切にしなさいと言う。いったい全体、ミミズのどこがえらいもんか、まったくわけがわからん。」 このように村人たちの中で、トイじいさんの悪口を言う声(こえ)が聞こえるようになってきたのでした。 それから三日がたった、お昼すぎのことです。 ガンガンとてりつけるお日さまの下に少し白い雲が見えました。 その雲は急に上にふくれあがりました。 ドンドンと空いっぱいになってゆくと、すぐに黒い色に変わりました。 生あたたかな風は、少しすると空からのひんやりした風に変わりました。 みるみるうちにあたり一面がくらやみになり、ピッカ〜と空が光って、ドッシャー、ズズズドーン。 いかずち(6)です。 その光の色は黄色(きいろ)でした。そしてその光の色は青色(あおいろ)にも見えました。村人の中には雷(かみなり)の色を赤色や桃色に見えるものもいたのでした。 ついにうれしの村にたいぼうの雨が降ったのです。 もう村のみんなはおおよろこびです。 雨が上がり、すずしくなったシャクゼンジのお寺の前にはとんだりはねたりする村人たちが集まりはじめました。 しばらくおどりをおどっていた村人たちは、トイじいさんの姿(すがた)が見えないことに気づきました。 「おいみなのしゅう、こういうとき、まっさきにお寺に集まろうと言うのがトイじいさんなのじゃが、どっか体のぐあいでもおかしうなったにちがいねえ、みなで元気づけにでも行こうかのお。」 『んだ、んだ。それがええ、そうすべえ。』 村のわかいしゅうがまっさきにトイじいさんの家の前に立ちました。 でもトイ爺さんの姿はありません。 みなで手分けし、さがしたすえに、半こくほどしてトイ爺さんは見つかりました。 なんと爺さんは森本いせきの水守石(みずもりいし)の前で見つかったのでした。トイ爺さんは自分の身と引きかえに悪代官をいましめたのでした。 おそうしきの中、村人たちの一人一人がだまってトイ爺さんの話を思い出していました。 「草はひっこぬくべからず、だったな。」 『草を根こそぎ、引っこぬくと畑がカラカラに乾(かわ)いてしまって、やせてしまうってことだったんだべな。』 「草は根っこを残しておいて、とちゅうから刈りとった草をその上にかぶせておけ、だったな。」 『んだんだ、そうすりゃあ、ミミズさんがふえるってこったわさ、こんだら簡単(かんたん)なこと、なんでわからんかったんやろかいな。トイじいさま、ほんまにわびてもわびきれへんこってす。』 トイ爺さんはわが身をもって雑草やミミズたちの大切なことを村人たちに教えようとしたのでした。そのことがやっとわかってみんなはとても後悔(こうかい)しました。気がつくのがおそかったのです。 それからというもの、村人たちはトイ爺さんの教えを末代(まつだい)まで語りつぐため、立派(りっぱ)なミミズ神社(7)を建てました。そして毎年、お盆が近づいてくると神社の前でミミズおどりをおどりながら、トイ爺さんの霊(れい)を供養(くよう)するようになったんだとさ。 たんとたんと つづく 1 三神三獣鏡。古墳からの出土品。 2 カンカンガクガク。はばかることなく、正論を堂々と主張するさま。 ケンケンガクガクとはさまざまな意見が出て、やかましいこと。 ケンケンゴウゴウとは多くの人が勝手に発言してやかましいさま。 3 トイじいさん。森本の戸井左近之丞。大飢饉で責任をとり切腹した。 4 スベリヒユ。世界の熱帯から温帯にかけて幅広く分布する多年性植物。 乾燥耐性があり、畑や路傍など日当たりの良い所に自然に生える。 農業においては畑作の害草として知られ、全般的に執拗な雑草として嫌われる傾向にあるが、地域によっては食料として畑作もされる。 5 アカザ。畑や空地などに多い雑草で、生長が早く高さ1m程度に達す。葉をゆでて食べることができ、同じアカザ科のホウレンソウによく似た味がする。 6 いかずち。雷のこと。 7 ミミズ神社。長野県長和町の中組に実際にある神社。北沢山の山根に蚯蚓(きゅういん)という地籍があって、そこに蚯蚓神社が祭られている。その蚯蚓というのは、みみずであり、その昔、大雨の時に北沢山から大水が出て、その時長さ一尺もあるようなみみずが群れをなして死んでいたそうです。丁度その年に、伝染病のコレラ、腸チフスが発生して、非常に困ったとき、だれが言うともなく、みみずのたたりだ、みみずのたたりだと言い出したので、お堂を建て、お祭りをしてみみずの霊を慰めたのが、始まりである。とにかく、昔から、みみずのいる様な畑にしなければ百姓はだめだと言われるほど、みみずと畑とは縁が深いので、みみずを神様と祭っても不思議はありません。 |