| 「月例自然観察会」行動記録 第130回 2010.04.18 |
| 平成22年度開幕編: 「自然観察」とはどういうものなのか、それはこの物語を読むとわかります。 むかしむかしのことでな。 今のいせのくにに「うれしの」というゆたかな村があってな。 その村はお米がたくさんとれて、「うれしいのお」というみんなのきもちがそのまんま、村のなまえになったんじゃと。 そしてこの村には、あちらこちらにいずみがわいていて、きれいな水がさらさらと音をたてながらながれておったんじゃ。畑もみみずや虫さんたちなんかのせいで、こえておって、村人らも朝からばんまでいっしょうけんめいにはたらくものじゃから、ますます村は栄えていったんじゃそうな。 そういう日から300年がたった、あり日のこと。 「むらおささまあ、豊田村のむらおさのリュウガオウさまあ。」と大声がする。 『なんじゃなんじゃ、さわがしいとおもうたら東組のガシンではないか。どうしたんじゃい。』 「リュウガオウさま、さっきから木がこげるようなにおいがしまするのでみはり木にあがらせてもらえねえですか」 『なになに山火事だと?おまえさんの目とはなは千里の道もみとおすからのお。』 ガシンはむらおさのこえをうしろにききながら、大きな杉のみはり木に走りました。そして見る見るうちにみはりだいまで上がるとさけびました。 「山がもえとる、青い山がもえとるぞお。 火はやおろしのおくから、かもだのほうへと広がっていて、あしゃかのほうにも白いけむりが見えました。もう村中が大さわぎです。 カエルやウサギ、ヘビたちもぎょうれつをつくりながら田んぼへと逃げ出しました。「シャクゼンジ前だぞ、みんな、シャクゼンジ前の田んぼにあつまるんだ。」とせんとうのカエルがみなをひっぱりました。 キツネやタヌキ、イノシシたちは中村川に飛び込みました。 「テンゲイジ前だぞ、みんな、テンゲイジ前の中村川にあつまるんだ。」とせんとうのキツネがみなをひっぱりました。 村人たちはヘビさんやイノシシさんたちがにげるのをみましたが、いっしょになって逃げるわけにはいきません。クリや干したたべものをかごにつめないといけないからです。 この山火事はみっかみばんつづきました。 それからまた300年ほどがたちました。 豊田村には、また前のようなゆたかさがもどってきました。 そして村人たちはお寺をたてることにしました。 シャクゼンジという名前のお寺です。寺の前にはテンノウサンという小さな丘があって、その丘と小川とのあいだに大きな赤松がありました。お寺がたってまもなくのころ、コウノトリがやってきて、その赤松のてっぺんにすを作りはじめたのです。村人たちはそのコウノトリをとても大切に見守っていたのですが、その年にかぎって長い間、雨がふらなかったのでした。 田んぼはからからにひあがってしまい、カエルやフナもいなくなってしまいました。そして村人たちはコウノトリがだんだんとやせていくのでとてもしんぱいしました。 そんなある日のことです。 むらおさのトイじいさんはみんなの前でねんぐとりたてちょうを読み上げました。 ねんぐとりたてのこと、4つがかいてあって 1.こめだわら5ひょう 2.こんぺきにかがやくせんす1本 3.コウノトリのたまご3個 4.さんしんさんじゅうきょう1面をひとつきのうちにさしだすべし。 「あくだいかんめ」『どうしてくれようか』と村はもぅ大さわぎです。 村人たちはまいばんのようにお寺にあつまって話し合いましたがケンケンガクガク、ケンケンゴウゴウ、これはというめいあんがうかんできません。それで10日目から村中ぜんいんでということになり、子どもたちも話し合いの中に入り、シャクゼンジの広い板の間はいっぱいになりました。 コウノトリの卵とこんぺき色に光りかがやくせんすをどうするか? するとヘイキチが大きな声でしゃべりだしました。ヘイキチという名の子どもはいつも青いはなをたらしていて、はなたれこぞうとみなからからかわれている10才の男の子です。 そのヘイキチが言いました。 「おとなたち、そんだらことで長いこと、なやんでおったんか?こんぺきのせんす、おいらしっとる。泉の森の中にヤマモガシという木があって、あおのヤマモガシの木にすんでいるサツマニシキというチョウのはねをつかえばええ。」 それを聞いたむらおさのトイじいさんは 『そうか、それは名案じゃわい。』とばかりにひざをぽんとたたきました。 そしてみなもウンウンとうなずきあいました。 つづいてはなたれこぞうのヘイキチは言いました。 「こんぺきにかがやくせんす、おいら、他にもしっとる。テンゲイジ山にコンテリクラマゴケがあるからそれも使えばええ。すがじんじゃに住むタマ虫もつかえばええ。こんだら時じゃから、虫の神さまもゆるしてくれるわい。」 それを聞いてみなもウンウンとうなずきあいました。 『それは名案じゃが、もう一つのコウノトリの卵はどうすることもできんなあ。あれはわしらの守り神じゃ。コウノトリさんのおかげで子どもらもふえ、みなもしあわせにくらせとる、そのおんをわすれたらてんばつにひとしいことじゃからなあ。』 するとまた大きな声でヘイキチがいいました。 「テンゲイジ山には白い砂がある。おいら、その場所を知っとるから、その砂を水でこねて卵のからをこさえればええ。」 するとそれを聞いてむらおさのトイじいさんは『そうだ、それは名案じゃ。』とばかりにひざをぽんとたたきました。そしてみなもウンウンとうなずきあいました。 「さて、卵の中身はどうするんじゃ?」と村の一人がいいました。 ここまで元気がよかったハナタレこぞうもさすがに卵の中身をどうしたらいいのか、いい考えがうかんできません。 「さあ、こまったぞ。」 『こまったなあ、こまったなあ。』 村のみんなは黄色のきみと白色のどろどろしるをどうやってつくったらいいのかとなやみぬき、とうとうだまりこんでしまいました。 それからいっこくがたったころ、お寺の前でヘイキチを呼ぶ声が聞こえました。 お寺の前にあるひょうたんの形をしたオカメが池のカメさんでした。 「ヘイキチさん、ヘイキチさん、いつも私たちとあそんでくれてありがとうございます。今、わたしたちイシガメとカエルたちに会議で決めたことですけど、コウノトリの卵の中身はわたしたちの卵を使ってくださればいいです。どうぞお使いください。」 そのカエルはヘイキチが助けてやったイシガメのくみちょうでした。 たんとたんと。 (嬉野昔ものがたり) |