「嬉野自然観察会」行動記録    第7回   2000.02.13
2月の自然観察は1年を通してもっとも気温の寒い、所謂(いわゆる)「厳寒期」です。

人も動物も、昆虫類も、山の木々さえもが息をひそめ合って、ただじっと暖かい春の到来を待っています。動物は穴に入り、冬眠をするものもいます。
昆虫も朽ち木の中で休眠状態に、植物の多くは呼吸を少なくしながら成長を休めています。

野菜はどうでしょうか。辺りを見渡して、そんなことを考えながら観て見ると、野菜類は、この自然の法則に反して随分と色々な種類のものが畑に耕作されていることが分かります。何千年という歴史的な背景がある品種改良に加え、特に最近のバイオ技術の恩恵の結果なのでしょう。
キャベツと白菜との
F1種だとか、キャベツと蕪の遺伝子操作による何々とか、これらは人類の英知の結果による産物なのでしょうか。
これらは作りやすくて、美味しいことも確かなのですが

2月厳寒期での嬉野自然観察会は親子の参加者がなく(小学校へ案内は送ったのですが)、今回は自然観察指導員のメンバー三名だけの、私も入れて総勢3名での出発となりました。
出発待ちの時間を前にして図書館内の紹介コーナーを見ますと「三重のメモ蝶」という小冊子が目にとまりました。これは同じ嬉野町内に在住の多田弘一さんが直に足で歩かれ、それらを集大成されたものです。
学術的価値の高い素晴らしいものですから是非、ご覧いただきたいと思います。
さて、定例のとおり図書館西方の雑木林を観察します。
私たちが近づくと「ピーピーッ」と、ひときわオクターブの高い鳴き声で、このことを仲間に知らせるのは
ヒヨドリです。生物学者は、この行動を「利他行動」であると認める人が多いといいます。
ヤマバト番い(つがい)は何かを用心するように、左右にせわしく首を振りながら辺りの気配を感じ取ろうとしているようです。真冬の雑木林は、この鳥たちの活動を除けばひっそりとしずみかえっているかのように思えます。
林の奥のほうで「チャッチャ」とかわいく鳴いているのはヤブスズメスズメメジロでしょうか。
そのような息をひそめ合っている雑木林の縁にも良く観ると様々な生命の源を発見することが出来るのです。
ヤマイモのツルは枯れあがってはいますが、所処にムカゴがくっついたまま残っています。その3枚羽をした種子はまだツルについたままです。
ジネンジョイモの3つ目の生存戦略である地下茎は、人の手で掘り上げられた形跡が見られます。たった数歩、林の中に足を踏み入れると、そうした掘り上げられた穴があちらこちらに見られます。穴は埋め戻してほしいですよね。
林の縁に戻って観察を続けていると
カマキリの卵を見つけました。
頭上の抱卵の様子をよく見てください。これは駐車場の方向から西方に向かい、雑木林を見ているものですが、5メートル程の所に3個が見つかりました。
コカマキリのものやハラビロカマキリのものです。そのすべてが縁の外側、つまり開けた方角、明るい方角の南東側に向かい産卵されているのが分かります。
越冬対策として卵は発泡スチロール状の泡で包まれています。
しかし油断は出来ません。
カマキリタマゴカツオブシムシとかオナガアシブトコバチといった天敵は、たやすく、この障壁から侵入してくるからです。

(注:報告)事後談ですが、実際にカツオブシムシにやられちゃいました!
仮にですが、この「卵塊」を移動させて、野菜を食べる青虫の天敵に利用しようなどとは観察会を行った人は、決して思わないで下さい。
彼女たちには人間の能力では及ばない何らかの理由付けがあっての産卵行動なのですから。

(注)カマキリの卵塊は必ずと言ってよいほど、南の方角を向いています。
ヤブニッケイの葉っぱ2ミリほどの小さな突起物を見つけました。これは何でしょう。

1枚の葉に多数、それは周囲一面に観察することが出来ます。
すべて葉の表側に見られる現象です。一つの葉を取って、丁寧に突起物にメスを入れ、中の状態がどのようになっているのかを観察することにします。
中は空洞になっています。
そしてその中には何か黄色い生き物が居るようです。
他のこぶ状のものも同様に慎重に開いてみますが、結果は同じです。
何かがいます。
ルーペで拡大観察をすると何やら
サナギのようにも思えます。
そこで
ネイチャースコープ「ファーブルミニ」でもっと大きく観て見ることにしました
すると、その正体がはっきりと見えてきました。サナギです。
アブラムシ
の形ではありません。
コバチの仲間でしょうか。カブトムシのサナギを超極小に小さくしたような錯覚さえ感じられます。
これは何なのでしょう。
とにかく葉っぱのこぶの原因は虫の仕業に違いありません。
このように昆虫は変態をします。住み処や食べ物で争わなくてもいいのです。
体を小さくして隠れることも出来ます。変態することで成長も早く、結果的に進化を促しているわけです。
これが
昆虫類の生き残り、拡大繁殖の戦略なのです。
次に雑木林の奥に入ることにします。
そこで厳寒期の朽ち木の中にいる
「生き物」の姿を観察してみようと思います。
ここから図書館をはさんで逆の方向、徒歩で5分ほどの所です。
周囲の植林はスギの木ばかりのようですが、少し中に入ると
クヌギ、カシワ、シラカシ、ミズナラなどもある様子です。
林道沿いの杉林は管理されていません。

スギ
の枝打ち作業がなされないまま、昼前でも薄暗いほどです。
この場所には豊かな生態系は存在していません。
少し入り込むと、広葉樹の落ち葉が目立ってきました。
私たちは
ドングリの仲間が残されている空間に立ち止まります。
そこには直径が30pほどの
カシワの切り株があり、数本の「ひこ生え」が成長しています。
所謂、
萌芽(ほうが:萌え出たばかりの芽)による成長更新です。
スギ
ヒノキでは、この ような更新能力はありません。
人工林を面積伐採する弊害
所以(ゆえん)はこのことを指しているのです。
シイタケ栽培の原木に不適とされたものか、落ち葉に被覆されて朽ち木がありました。
この朽ち木を丁寧にめくってみましょう。
中から出てきたのは
ムカデです。
1〜2年生のようです。
大型の
ムカデ昆虫ミミズなどを食べるそうです。
ハサミムシハネカクシも休眠中を起されて右往左往しています。
カブトムシやコガネムシの幼虫は、腐りかけた落ち葉や朽ち木を食べてサナギ期までを過ごすものが殆どなのです。
丁寧にめくっていると出てきたのは
「コクワガタの成体(♀)」でした。
周りには
ザトウムシダンゴムシも観察 されました。
ダンゴムシは掃除屋さんで、優秀な分解者です。
別の朽ち木にはシロアリの集団が見られました。
そして今回の観察会で最も特筆すべき、思いがけない発見があったのです!

それは
アカミミズの発見です。
3センチほどと
4センチほどの2匹のアカミミズです。
写真をご覧下さい。
フトミミズのように丸くはありません。
シマミミズは健在だった!
4センチのミミズを良く見ると、後部の所々が黒っぽく透けて見えます。
これも
捕食活動をしているのでしょうか。体をウニョウニョとくねらせています。
何ということでしょう。

これは
キャノワームの中で生の有機物、野菜残渣を食性(正確に言うと微生物の関与と共に)としている、あの「アカミミズ・シマミミズ」と同じものだとしか思えません。

他にも小さいのがいます。
畑ミミズ(ふつうみみず?)も同居しています。が、事実なのでしょうか。

しかし目の前にして実際に観ているのです。未知の生物でしょうか。
生物群における種の数というものは実は判っていない数のほうが圧倒的に多いのですから。
いずれにしても思い込みはいけません。
この同定については温かくなってから再度、当地を訪れ、
キャノワームのような増殖環境に置いてみることで確定することが出来るはずです。
続いて林の中を抜け、槇垣根が並ぶ農家の小道を通ることにします。
ここは、私が30年前まで育った思い出深いところなのです。
原風景の昔の姿と少しも変わっていません。

しかし取り壊した家の跡地に植栽した木々に、あの
オオカマキリの卵泡は見当たりませんでした。
近年、徐々に少なくなってきていることが気にはなっていたのですが。
さて、気になっていることが、もう一つあります。
「枡に閉じ込められているお魚さん」
のことです。
このまま
降雨がないと干上がってしまい、何よりも厳寒期ですから寒いと思うのですが。
天気予報では大寒波がやって来ると報じていました。
枡構造というのはコンクリートが5面という環境で、これが致命傷になります。
自然農法実顕地の片隅には小さな溜池を掘ってありますが、秋にはザリガニの赤ちゃん2ミリほどでした(既報10月号参照)
今日、この泥に埋まった溜池を掘り上げてみたら
2センチほどに成長したアメリカザリガニや、その親と思われる大きさのものが見つかっています。
従って、この枡も
少なくとも底打ちコンクリートでなければ救いの道が開かれるのではないでしょうか。
一坪(3.3u)ほどの枡の中を覗くと小魚が無数に、100匹程度が見えます。
私たちの救出作戦はタモ網で掬い取るという原始的な方法を使いました。
最初の一掬いでは10匹ほどの小魚が採取できました。
ところが2回目以降からは空振りなのです。
そこで二つの網で囲い込むように掬い取ろうとしました。
が、やはり魚の能力のほうが勝っているようで、
「掬い取れ」ません。
「救い採る」という親心がお魚さんには伝わらないようです。
水深は、わずか15pにも満たないような環境なのですが、今回は
残念ながら50匹程度で救出作戦を終えることにします。
(注)後日談ですが、この枡の中で大きな鯉を掬い取りました。
魚種は多分、「タモロコ」「オイカワ」であろうと図鑑から推測しましたが、玄米のおにぎり(丹下さんの特製)をぱくつきながらの調べですから「おそらく」の文字が冠していることをお断りいたします。
「日本の淡水魚図鑑」(山と渓谷社)によれば
タモロコ(Gnathopogon elongatus elongatus)コイ科モロコ亜科タモロコ属
全長10pで、体はやや太い紡錘形で、背面と腹面が丸みを帯びてずんぐりしている。

吻はまるく、口は吻端の下方にある。
1対の口ひげがある。中略。川の中・下流や細流、湖沼、池などの淀んだ水域の中層や低層を主な生息場所とする。中略。産卵期は4〜7月、地方によっていくらかずれがある。卵は水草や抽水植物の根などに産みつけられる。中略。

タモロコの形態は、生息場所の違いにより著しく変異する。止水域に生息するものは、河川に生息するものに比べて、体が細長く、縦列鱗数・脊椎骨数・鰓
?数が多く、口が上を向き、口ひげが短く、対になっていないひれの後縁が鋭く切れ込むといった、一定の進化傾向が認められる。
後略。
オイカワ(Zacco platypus)コイ科ハエジャコ亜科オイカワ属
全長15pで、ハヤ・ヤマベ(関東)ハエ・ハイ・シラハエ(関西)ともいう。中略。
産卵期は5〜8月で、岸寄りの流れがゆるい平瀬の砂礫底で産卵する。
以下省略。

などの記載がありますから同定については、これらの文献を
嬉野図書館で調べていただきたいと思います。
そしてみなさんが生き物の生息環境を良く理解され、積極的に行動されることを願っています。
放流している灌漑貯水池(現在では唯一の繁殖生存可能域の以前の形態は土堤であったことをどうぞ覚えておいてください。

        
どうぞ、この映像(ビオトープではない構造)を認めないで下さい。
40年前の私は、小学生でした。そしてこの池の周囲で良く遊んだものでした。

色々なチョウ類や色々なトンボ類が本当にたくさん飛びまわっている昆虫の学園だったのです。
そしてギンブナ、モロコ、ウナギ、ハヤ、タナゴ、ハゼ類、カワムツなどの色々な魚を釣って楽しんだ思い出深い場所なのです。
それこそ今、思い起こせばあれが桃源郷の世界だったのでしょうか。
あれは夢だったのでしょうか。


もはや人類の英知を結集しても取り戻すことの出来ない世界なのでしょうか。
これからみなさんと一緒に考えていこうと思います。

今回の講を終えるにあたり、明るい話題を頂きましたので、ご紹介しながら次回へ移ることにします。
それは冒頭の「三重のメモ蝶」の著者、多田様からの報告ですが、「・・本日(17日)、早速お教え頂いた現場に飛んでいきました。
ずらりと並んだ蛹の大集団を見て、ただ唖然としました。
このような光景は、今まで見たことがありませんし、本で読んだこともありません。丁寧にカウントして、1281個体の生蛹と数個の羽化殻、数十個の死蛹を確認しました。驚くべき事は、これだけのジャコウアゲハの幼虫が育つのに足る十分なウマノスズクサが存在し得たことです。後略。」 
       

では次回にお会いしましょう。
ひとくちテスト
カマキリのたまごを見ると、明るい方向に向かって産みつけてありますがなぜですか?

答え
「太陽の持っている自然エネルギーを感じているのでしょう。
私たち人間には分からない超能力を持っているのでしょう」」

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