溺 れ る 二人が出遭ったのは、真夏の陽射しが一分の隙間も逃さず斜めに照射し尽くす 木造の一室であった。五人の女子学生を前にして、砂原は黒板に依頼書を転記 し終え、振り返り彼女達を見渡した。 幾度も繰り返し述べている口上を復唱しつつ、目線が一人の女子学生を中心に 移動しているのを意識し始めたが、努めて冷静に最後まで話し終えた。 砂原は当地に赴くまで恋愛という行為に生活を乱された経験がなかった。交際は それなりに不自由なくしてきたが恋愛に心縛られることを認めず、常に二義的に 扱っていた。こころ砕くべきはそこに在らずという時代背景も手伝っていた。 しかしながら、泣き崩れる交際相手を路上に放置したまま去ったことへの自責の 想いを消し去るほどの信念や信条を形成するには至っておらず、最近ではむしろ こころ砕きべき方向に迷う日々が続いていた。 容子は一年近く交際していた大学の先輩と半年前に別れたばかりで、未だ立ち直れず 過ごしていた。自分の優柔不断さを指摘されたことが起因していた。 相手の男性が積極的に彼女を恋愛の世界に引き込み、彼女の意思を無視して先走り 挙句の果てに彼女の親に結婚を申し込むという無謀な行為を起こしてしまった。 父親の怒りは男に集中し、男の両親へ怒りは伝えられあえなく別れることになった。 容子への叱責はなく、事の結末に対する反省は自分ですることになったが未だに 反省を整理できず、恋愛への過剰な警戒心を抱くに至ったままだった。 ー続くー