空 飛 ぶ 種

2000.10月号

 木の種には様々な形があるのはご存じですよね。翼や羽根をつけたもの(翼果)ドングリのような堅い殻をもったもの(殻果)、柔らかな実をまとったもの(汁果)などいろいろあります。

 例えば、マツやユリノキなどの種は、種の本体に一枚の翼を付けた形をそているし、カエデはこのような形の種2個が一緒になってヘリコプターの回転翼のような形をしています。 他には、種のまわりに翼が付いて平たい形をしたものもあります。
 空を飛ぶ種は、翼や羽根ばかりではありません、ポプラやヤナギのように、翼の代わりに綿毛を付けたものもあります。

ユリノキの種
ユリノキの種(翼果) 大きさ:長さ4〜5cm

 このような空飛ぶ種の翼は、単なる飾りでなく大切な働きをしているのです。それというのも、翼があることによって、木から落下する時に種は回転し、あわせて翼が回転することになります。そうすると落下速度が遅くなり滞空時間が長くなり、風の力を借りて平行移動の距離を伸ばすことが可能になるわけです。
 例えば、翼を取り去ったアカマツの種は秒速5.36メートルで落下しますが、翼があると秒速1.34メートルとゆっくり落ちます。ですから風速5メートルの時に高さ15メートルの場所からアカマツの種を落とすと56メートル離れたところまで運ばれることになります。

 さあ、こうして種を遠くに飛ばすことにどんな意味があるのかを考えてみましょう。 木は大地に根を張り移動しませんね。でも長い目で見れば生育場所を変えたり分布を広げたりして移動しているのです。 樹木自体は動かないのですが、自分の子孫繁栄の手段として少しでも広域に分布を広げようとするための手段として、種がその役割を担っているわけです。
 種の移動の手段として風の他には、鳥や獣、水といったものがあります。こういった場合には種は翼を持つ必要はありませんが、それぞれ※適した特徴をしています。
 日本には約99科の木本植物が生育しているといわれています。この中の32%が風に運ばれやすい形の種をもっています。そしてその樹種独特の形をしています。このような形の違いは種の歴史や生活条件への適応を示しているといえましょう。

適した特徴

(1)鳥に運んでもらう種:
 鳥は、春から夏にかけては昆虫食ですが、昆虫がいなくなる秋から冬は木の実などを多く食べますが、この時期に鳥がよく食べる実の多くは赤い実が多いことに気が付きます。これはある意味では樹木が種を鳥に食べてもらい遠くに行って糞として排泄する事で運んでもらうために『もう食べられるよ!』という自然界の合図なのでしょう。

(2)獣に運んでもらう種:
 獣に運んでもらう種は、ドングリ系が多いのはご存じと思います。ノネズミやリスといった小動物は秋になったドングリを巣穴に貯蔵したり地面に埋めたりします。その中の一部は忘れ去られ、地中に保存されたまま春を迎え発芽するという訳です。

(3)水に運んでもらう種:
 例えば、山地の沢沿いによくあるクルミの木は大きな水に浮く種を木から落とし川の水によって下流域に運んでもらうことで分布を拡大しようとするわけです。

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