ドングリの行方

2000.11月号

 春咲いたコナラやクヌギの花が、ドングリとなって木から落ちるのは秋になってからですが、この頃の野山には、アケビやヤマブドウ、クリなどいろんな木の実もなる頃で鳥や獣達は冬支度をするために余念がありません。

 地面に落ちたドングリは、動物達の餌や保存食になりますが、一部は樹上でも食べられてしまいます。それと言うのも鳥たちもドングリを食べるからです。
 長野県の菅平高原で行った調査では、カケスが大量にドングリを運び、しかもミズナラなどの分布を拡大するのに役立っていました。餌台の上にドングリをまとめて置いたところ、カケスがやってきて5〜6個づつくわえて運び、1個づつ地面に掘った穴に入れコケや落ち葉で覆って隠しましたが、1週間以内にその半数以上がまた別の場所に運ばれていました。これは、後で食べるために貯蔵しておいたものと考えられますが、食べ忘れたり貯蔵した持ち主が死んでしまったりしたことで翌年芽生えることになるのです。その結果、近くのアカマツ林の中にミズナラがたくさん発芽するということになりました。

 ノネズミも重要なドングリ摂食者であり運び屋です。ケージを使った調査によると、カゴの中に置いたドングリはほとんどの場合、巣室内ないしケージの決まった位置に運ばれ、そこで食べられました。
 囲いの中での野外試験でも、アカネズミの1日の摂取量を大幅に超える量のドングリが消失したことから、まずドングリを運び、それから食べるのがノネズミの習性と考えられます。 さらに北海道での調査では、林内に置いたドングリを同じエゾアカネズミ繰り返し運んだところが全自動カメラで撮影され、さらに置き場所周辺に数個づつ分散貯蔵することも確かめられました。また分散貯蔵の後、巣穴に貯蔵し直すことも明らかになりました。
 ドングリの親木がない海岸の林の中に、カシワやコナラの発芽がしばしば見られますが、これには鳥や獣たちの働きが関係していると考えられます。

 しかし、実際にはやはり木から落ちたドングリが落ち葉の布団に覆われて春に発芽するというものが一番多いわけで、冬が終わり春が来て地中の温度が摂氏5度を超えるようになると、ドングリは水分さえあれば盛んに根を伸ばす準備が出来ます。このように木から落ちたドングリも、行方不明になったドングリも発芽の条件はその場所や環境、そして動物たちの行動に依存しています。
 一本の木になるドングリの量は、木の大きさや樹齢、林の状態や周りの環境で様々です。

こんな事を考えながらドングリを拾ってみるのも面白いのではないでしょうか・・・

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