
2001年6月
2002年4月
噴水が止まるどさりと音たてて
噴水の真中真白き水の束
汗かきの母汗かきの我遺す
夜がふけて家も蛍も灯が消える
暮れてゆく空と薊と同じ色
薊咲く山に紫雲が掛りたり
生垣の裾を撫子彩りし
消灯の座敷窓辺に蛍の灯
黄に濁る川が滝にて真白なり
山脈の緑明るき梅雨晴れ間
竹薮の中より仰ぐ青き山
2001年7月
掬い来し金魚茶碗に移したり
綿菓子に夜市の灯り透かし見ゆ
兄弟が嘗め合う夜市の綿菓子を
夕立が去りて山道湯気の中
梅雨明けの河畔の砂の新たなり
山霧が白骨樹より白深し
白骨樹どれも傾く青き山
御来迎の滝石鎚の裏穿つ
大鳥居聳ゆ石鎚登山口
光が赤し満開の合歓の樹下
登山道尾根の白骨林に出る
石鎚の滝はどれもが痩せ細る
泳ぎ子の歓声峡に木霊せり
子が泳ぎ来る瑠璃色の淵にまで
水の無き滝に隈なく苔が生ゆ
一片の雲来るを待つ炎天下
2001年8月
虹かかる青き空より雨が降る
雷雲が高層ビルに掛りたり
藁葺きの山門涼しき風通る
皮むけば青き林檎が真っ白なり
五重塔九輪雷雲かかる
枝どれも秋天を指すポプラの樹
自噴井水は乳房の盛り上がり
犬が鳴く西瓜畑の真ん中で
入道雲ソフトクリームより白い
夕立の音に嬰児泣き出せり
夕立に高鳴る納屋のトタン屋根
雨濡れの蟻が我が差す傘に入る
沖めざしたった一人で泳ぎだす
夕凪の浜に小さな鯨塚
飼い主のボートに犬が付き泳ぐ
海の家軒の下まで波寄せる
嬰児が水着の母にしがみつく
天の川信濃の「塩の道」に沿う
泳ぎ子が灯台守の道帰る
水平線沿いに烏賊釣り灯が並ぶ
野尻湖を見下ろす青き牧場より
キャンプ場寝床の草の柔らかき
滝見橋渡る信濃の「塩の道」
松原の松が柱の海の家
子が泳ぐ岬に灯台点るまで
海の家テトラポットを礎石にし
岳人が大雪渓に黒き点
木道で渡るワタスゲの高原
白馬岳手綱にしたき虹かかる
夕焼けて赤き白馬の白馬岳
白馬岳独活が馬より白く咲く
砂日傘咲けり翡翠の多き浜
白馬岳裾に萩散る「塩の道」
潮浴びし糸魚川より「塩の道」
2001年9月
汗拭いつつゆっくりとペダル踏む
岩風呂の岩に張付く櫨紅葉
澄む水のせせらぎ耳に心地よし
山頂は風に波立つススキ原
山小屋の柱はどれも黒光る
台風の近づく夜の寝苦しき
山門の仁王足下に蟻地獄
夕日照る海に輝くススキの穂
赤蜻蛉群れ飛ぶ互いにぶつからず
2001年10月
咲く萩の一輪一輪帆掛け舟
鳴く虫も瞬く星も夥し
天高し川の底まで見晴らせり
親の列子供神輿に付きまとう
秋祭りテレビで砲撃とめどなし
秋天に坊ちゃん列車の煙立つ
清流の上で数多の柿が熟れ
町内が祭注連にて明るけれ
太陽の光に林檎輝けり
黄の光浴びる銀杏の並木道
皮むけば青き林檎の白深し
鶏頭のたった二本が咲き残る
防犯灯照らすたわわに実る柿
2001年11月
満月に森の中まで明るけれ
寒茜山が暮れ行く紫に
寒茜一番星が輝けり
中天に寒月我の影が無し
寝巻きにて朝刊取りに行く寒さ
今落ちる水の静かさ滝頭
比叡山の紅葉麓に下りてくる
真っ白に蕪太りし畝の上
比叡山仰ぐ黄落の母校より
枯色のメタセコイアに朝日差す
鈴なりの柿の木越しに山仰ぐ
枝つきの柿並べ売る無人市
比叡山をコスモス越しに仰ぎ見る
具視隠れし岩倉が紅葉せり
実相院岩倉川の水が澄む
比叡山を借景とする紅葉寺
山寺の参道紅葉降り止まず
火祭の火の粉加茂川渡り飛ぶ
本願寺囲む銀杏の黄が深し
合掌の指の隙間に紅葉照る
浮寝鴨加茂の流れの心地よし
浮寝鴨群れる五条の橋の下
茶碗坂茶碗の中に紅葉散る
清水の紅葉散り敷く茶碗坂
挨拶の生徒も校長も息白し
学校へ急ぐ子誰も息白し
紅葉狩り口紅紅葉より赤し
煙降り来る炭窯のトタン屋根
虫が鳴く墓地に兵士の墓高し
誰も来ぬ兵士の墓に虫が鳴く
火祭の火の粉星より高上がる
火祭の火が満天の星照らす
並木道我に枯葉が降り止まず
枯葉散る街に地下鉄電車出る
2001年12月
大漁の船に大きな松飾る
大枯野鶏舎に暗き灯が点る
点滅が多彩聖樹のベルは金
寺多き町に鳴り合う除夜の鐘
降る雨に光鮮やか聖樹の灯
昨日散り今日もまた散る山茶花よ
百舌鳥が鳴くヒマラヤ杉の天辺で
熊手にて芝生の上の落葉掃く
海鳴りの島に木枯らし吹きずさむ
粥食す真白き息を吐きながら
宝石選ぶ手袋を脱ぎし手に
オンドルの煙畑に靡きたり
空港の島の周りは大干潟
ジャンボ機の壁に聖夜の飾り吊る
七つ目は雪達磨なり六地蔵
大干潟島と島とが繋がりし
枯れススキどれも静かに穂を垂れる
枯山の麓海老茶と紅残る
2002年1月
雪原に煙る地熱の発電所
降る雪に温泉の湯気立ち昇る
雪原に温泉宿の灯がひとつ
海地獄隣の池の蓮枯れる
竹の樋も水車も氷柱だらけなり
雪の中檜造りの露天風呂
温泉を目指す山道雪深し
沈下橋渡り若水汲みに来る
信楽の陶の狸に雪積もる
初旅の汽笛夜明けの湾に鳴る
初旅の夜明け街には灯が残り
初旅の夜明けの空は浅黄色
雪積みて白き千里の草千里
湯煙が雪の別府に数多立つ
露天風呂湯に牡丹雪降りしきる
肥の国の山の湯治場雪深し
初旅の船は大きな波切って
風強き枯野ひとつの灯が点る
浜に干すヒラメ枯葉の色になる
五色浜山と積みたる屑蜜柑
この雨で梅の全てがほころばん
鶏舎の灯ひとつ枯野の果てに点く
蓋をとる漬物桶に霙降る
春の海暮れゆく朱より紫へ
2002年2月
紙めくる音の静けさ入試場
答案に視線釘付け受験生
咳とめどなし入学試験場
枯れ色のメタセコイアより烏飛ぶ
百舌鳥が鳴くメタセコイアの天辺で
菜の花の匂いに潮の香が混じる
水仙が匂う砂丘の無人駅
菜の花の散り咲く鉄路錆激し
静かなる夜更け大雪注意予報
陸屋根に猫が寝転び日向ぼこ
残雪が夕日に赤き石鎚山
2002年3月
雨粒が光る枯れ木に日が差して
枯枝に光る雨粒夥し
忘潮多き沖まで歩き来る
鮟鱇の鍋より長き骨を出す
鮟鱇鍋肝がだんだん白くなる
鮟鱇鍋皆の頬が赤くなる
若芽売る発泡スチロールの皿で
湯に漬けてさっと若布が青くなる
魚屋の猫足伸ばし日向ぼこ
水の無き川に出てくる枯野道
枯川の賽の河原に砂の道
三椏が咲く清流にうつむきて
廃屋に咲く三椏の白深し
藁葺きの家三椏の花囲む
傘立てに錫杖立てる遍路宿
洗濯機止めて遍路の衣が浮かぶ
遍路衣の背に墨書きの南無阿弥陀
地虫出る縄文人の洞窟に
山寺に遍路の読経とめどなし
雨の中散る雪柳霙なる
春一番並ぶ自転車薙倒す
爪先でそっと弾くよ土筆の穂
爪先で弾く土筆に粉が立つ
春一番叩く海原真白なり
ひと房の花を選びて近づけリ
新聞を配る少年息白し
島山に花の並木の一文字
縁側に緋毛氈敷く枯山水
花山の裾に白亜の発電所
南天の一樹が熟れる枯山水
枯山水土塀の上に花の比叡
鴨川に出てくる花の並木道
枯山水海に一枚枯葉散る
清水の舞台に落花舞い上がる
哲学の道も疎水も花が散る
花筏流るる速さに歩を緩め
枯山水真白き海に地虫出る
満開の桜の幹に暗き洞
銀閣寺高き垣根の椿咲く
白砂の白川流るる花筏
白川の白砂が堰く花筏
手旗振るロボット路傍に陽炎へり
暮れゆける谷に桜の白深し
満開の桜の枝の先が反る
花吹雪路地の角にて逆巻けり
満開の花が黄砂にまみれ咲く
鳳凰に春の雪舞う金閣寺
大仏に唐の黄砂が降り積もる
銀閣寺向月台にて馬酔木咲く
杉苔の斜面転がる牡丹雪
香を炊く七堂伽藍雪が降る
延暦寺菜の花の咲く近江見ゆ
青空に辛夷はどれも白深し
核実験場の黄砂が混じり降る
紫と白の木蓮並び咲く
満開の桜水銀灯照らす
花を見に沖の小島に渡りたり
長き州に紫添える浜大根
満開の桜の幹に絡む蔦
黄砂降るゴビにて死せる兵の墓
葉桜の中に一輪咲き残る
遍路道落花散り敷き真白なり
真っ青な空に向かいて桃が咲く
島山の裾を彩る桃の花
木が全て芽吹き鎮守が膨らみし
鶯が今日も我が家の松に来る
石ころに止まる羽ぼろぼろの蝶
鯉幟垂れる尾鰭に庭狭し
柿若葉光る産毛に薄緑
青畳楓青葉の影青し
山に入る道に暖簾の藤の房
藤の房手で分け渡る丸木橋
棒切れで子供が壊す蟻地獄
藤棚を白と紫二分して
2002年5月
鯉幟尾鰭藁葺き屋根を擦る
流木が白き河原の陽炎えり
新緑の山を削るは採石場
虹鱒を新樹の下で釣り上げる
焼き魚匂う河原のキャンプ場
泣きじゃくる水遊びにて濡れる子が
コーヒー沸かす水の良きキャンプ場
水笛を鳴らす河原のキャンプ場
玄関の傘立に立つ捕虫網
お大師の噴井底には白き砂
水軍島寺に蜜柑の花が咲く
山寺の参道横切る登山道
高縄山忽邦諸島が霞み見ゆ
本堂の裏に筍夥し
筍の皮が散らばる庫裏の裏
蟻地獄跨いで通る仁王門
夏氷プラスチックの匙が立つ
五月雨や火は燃え盛る地獄絵図
高波を蹴って入港鰹船
マストより高き港の鯉幟
新緑に煤ける鰹節工場
新緑の港に並ぶ鰹船
青葉する樹下に遍路衣薄緑
潮風にぼっと膨らむ遍路の衣
風呂の湯に漬かり五月雨聞こえ来る
2002年6月
川に入り洗う田植えの泥の足
畦道に田植えの泥の足の跡
撫子の紅白鉢を一にする
藁苞で拭う田植えの足の泥
石垣が田植えに濡れる千枚田
村中の田植えに濁る川の水
田植女が畦に履物揃え脱ぐ
青岬沖に散ばる島黒き
黒潮が青き岬の裾洗う
石垣に田水が滝の千枚田
畦道が田植えに濡れる千枚田
長雨に朝から皆が押し黙り
水源の森に紅濃き合歓が咲く
満員の電車に蜂が紛れ込む
大学の正門涼しき風が吹く
船の旅朝から長き雨が降る
梅雨湿る船室長き旅に出る
2002年7月
佳き風に椰子の葉擦れの音涼し
万緑に椰子の一本抽んでて
台風が近づく夜の寝苦しき
喉鳴らし飲み干すコップの岩清水
岩清水注げば直ぐに壜曇る
赤蜻蛉一尾曙光の中で飛ぶ
畑仕事帽子に止まる赤蜻蛉
油差す歯車多き芝刈り機
梅雨最中寺に火炎の地獄絵図
洗車機の飛沫に街の風涼し
水を遣る松葉杖にて身を支え
太陽のほとぼり籠もるトマト摘む
噴水の傘の心棒水の芯
噴水が水でお手玉遊びする
京近江見晴らす比叡の登山道
バス停は電柱のみの炎天下
青葦原裾に出入の鮒の群
聳つ鷺に燕飛交う道後の湯
大日照り道後の出湯止め処なし
蝉時雨激し目覚めの夜明けより
2002年8月
塩の道白馬の登山道に出る
蝉丸の逢坂の関蝉時雨
近江富士裾の際まで青田波
原子炉のドーム真白き青岬
原子炉の空を飛交う赤蜻蛉
翡翠峡出づる姫川草茂る
渓谷の鉄路に縋る蝉の殻
姫川に沿える鉄路の陽炎へり
旱にて鎮まる水力発電所
発電所碍子に縋る蝉の殻
旱川翡翠を探す人多し
蝉時雨激しき峡に発破音
鉄橋を列車が渡る旱川
旱川水車の窓にガラス無し
山小屋に熊除けの鈴並べ売る
山小屋で子が熊除けの鈴鳴らす
紫陽花の下に野兎顔を出す
満天の星の下にてキャンプする
テントの灯次々消えるキャンプ場
恐竜の化石出てくる登山道
塩の道行く岳人の列長し
白馬村虹の脚立つ塩の道
塩の道にて白馬の虹仰ぐ
姫川の橋にて白馬の虹仰ぐ
清流の光るブナ林風涼し
大糸線落石網に百合が咲く
山百合が白馬の雪渓より白し
春日山囲む越後の青田波
二の丸に紫陽花咲けり春日山
鶏頭が白馬のの鑓より高く咲く
春日山米倉跡にねこじゃらし
雀には鉄砲となる猫じゃらし
空堀に蛇とぐろ巻く架す春日山
空堀の石垣蟻の列登る
連山に点くはキャンプの灯りのみ
滝道が出湯の宿に行き止まる
自動車のタイヤの溝を蟻登る
どの滝も濁る工事の多き山
キャンプ場下に出湯の一軒屋
右に佐渡左に弥彦夏の航
松原の松の間をヨット航く
親不知浜に数多の砂日傘
飛魚が佐渡の沖にて飛交ヘり
弥彦にも佐渡にも雷が鳴りしきる
飛魚が佐渡の上空長く飛ぶ
灯台も烏賊火も点る佐渡島
空に星山にキャンプの灯が点り
港町片影長き倉庫街
多島海島のひとつで揚げ花火
吉野川廃車の山に葛茂る
夕焼けが迫り真っ赤な吉野川
山門の下で浮浪者昼寝する
仏具屋の街に風鈴鳴り渡る
海峡の橋脚洗う土用波
足長蜂足の先より着地する
一陣の風に震える虫時雨
淡路島海を見ながら枇杷を摘む
岳人が双眼鏡にて峰仰ぐ
大原の一隅暗き紫蘇畑
風鈴が家並みに響く鯖街道
大原が暮れ行く紫蘇の畑より
氷菓売る平安神宮大鳥居
夕焼けの海に向かいて山下りる
瀬が白し夕焼け迫る吉野川
吉野川海には雲の峰が立つ
吉野川遍路が混じる舟遊び
履歴書の清書額の汗が落ち
2002年9月
朝顔が絡む一樹に数多咲く