第一部 喫煙の現状
喫煙習慣が世界的に普及していった時期は明確ではないが、コロンブスらの大陸発見以後といわれている。わが国には元亀、天
正の頃、ポルトガル人の渡来により伝えられたといわれる。
わが国の成人喫煙率は、男の場合は、昭和41年の83.7%を最高に、昭和61年には62.5%にまで低下している。これ
に対して女の場合同じく昭和41年の18.0%を最高に、以後15%を前後し昭和61年は12.6%と低下しているが、若年
の女の喫煙率は増加している。喫煙者の約70%は、「禁煙したいと思って」喫煙を続けている実態も示されている。
行財政という視点から喫煙問題をみると、明治9年煙草税則、明治29年には葉煙草印紙税法が制定され、さらに明治31年葉
煙草専売法、ひき続き明治37年煙草製造専売法が公布され専売体制がすすめられ、現代の民営化にいたるまでの基本をなしてい
る。
一方、「未成年者喫煙禁止法」が明治33年に公布されている。
たばこ製品の生産消費をみると、製造量はここ10年間ほぼ同一の約3000億本であり、1人当たりの紙巻たばこの年間消費
量は、昭和50年以降約2600本でその後もほぼ一定している。
昭和60年度の国たばこ消費税は8837億円で、国家一般会計の約1.6%を占めている。一方地方たばこ消費税は、同年で
約8645億円となり地方財政歳入の約1.6%を占めている。
喫煙に関連する社会問題のひとつとして火災の問題があり、「たばこ」が、主要原因となっている。
戦後においては、たばこと健康問題がしだいに重要な関心事となり、昭和39年には厚生省児童局長通知および公衆衛生局長通
知が出され、未成年者の喫煙防止と国民保健の立場から喫煙の健康に及ぼす害についての啓蒙普及を要請している。その後は、昭
和46年専売事業審議会成分表示等答申、昭和55年喫煙と健康問題に関する衛生教育について公衆衛生局長通知、昭和59年医
療機関における喫煙場所の配慮に関する医務局長通知などが出されている。また、昭和61年には小学生を、62年には中学生を
対象にした、禁煙教育の手引書が作成されている。
喫煙の健康被害に関する研究等は、内外から報告されているが、喫煙対策という視点では、昭和39年2月にわが国政府から報
告された、「喫煙の健康に及ぼす害について」が重要であろう。その後の研究としては、昭和54年以来続いている、健康づくり
等調査研究委託費に基づいた「喫煙と健康に関する調査研究」や、環境庁の委託研究による「禁煙指導に関する調査研究」、さら
に昭和32年より開始されている専売公社の委託研究報告書などがある。
喫煙問題に関する教育問題としてWHOは、保健医療関係者の教育、一般大衆の教育、そして、子供に対する教育の3点につい
て考察している。学校教育で用いられる喫煙に関する教科書の研究報告では、「喫煙と健康に関する教育の重要性がいくらか認識
されてくるようになっている」という。
喫煙に関連した国際協力としては、WHOを基軸にしたものが主要である。一方、学会や民間の健康関連財団でも世界的レベル
で喫煙対策を推進している。
わが国での喫煙対策に関する市民活動グループは、昭和61年9月現在で49グループ、会員数約10万人になっている。