第3章 喫煙と循環器疾患〔要約〕
虚血性心疾患は、喫煙者では非喫煙者に比べて、死亡率および発生率が高いことが、米国の5主要研究をはじめとする欧米の疫
学研究で明らかにされている。5主要研究では1日20本をこえる喫煙者は非喫煙者に比べて3.2倍の虚血性心疾患発生率を示
している。
日本における報告は数少ないけれとも、欧米と同様、喫煙者では非喫煙者に比べ1.6ないし4.6倍、虚血性心疾患の死亡率
または発生率が高い。
虚血性心疾患を発症する危険性は、1日に吸うたばこの本数が多いほど、喫煙年数が長いほど、煙を深く吸い込むほど、また喫
煙開始年齢の若いほど高い。
喫煙は虚血性心疾患の発症に対する主要な独立した要因のひとつであり、高血圧や高コレステロール血症が合併するといっそう
リスクは高くなる。
女では一般に虚血性心疾患の発生は少ないが、喫煙する女では虚血性心疾患のリスクが高く、また経口避妊薬を使用することは
リスクを増大させることが米国で認められている。
禁煙した人は喫煙者に比べて虚血性心疾患死亡率が大幅に減少する。禁煙前の喫煙本数が少ないほうが、また、禁煙期間が長く
なるほど死亡率の減少が大きい。
脳卒中に関しては、喫煙により死亡率、発生率が増大するという成績があるが、両者の関係を認めない、という報告もあり、両
説相半ばしている。日本の成績を主としてみた結果、現状では喫煙は脳卒中発生を増加させる可能性はあるが、まだ十分証明され
ていない。
女では喫煙と経口避妊薬の相乗作用によって、くも膜下出血発生の危険性が著しく高くなることが、米国で示されている。
高血圧は喫煙と独立して脳卒中、虚血性心疾患の危険因子であるが、喫煙者は非喫煙者に比べて血圧が低いことを認めた報告が
多い。しかし、逆の関係の報告、関連なしとの報告もあり、喫煙と血圧の関係は結論的にはいえない。
動脈硬化のうち、冠動脈、大動脈の粥状硬化については、米国の疫学研究によれば喫煙との関係は明らかであり、量−反応関係
も認められている。脳動脈硬化では喫煙との関係は認められていない。