2.喫煙と高血圧

  高血圧と喫煙は独立に虚血性心疾患の危険因子ではあるが(詳細は3.喫煙と虚血性心疾患の項を参照)、血圧と喫煙の関連に
 関する研究は数少なく、統一された見解はまだ示されていない。
  日本における疫学研究では、
   ・喫煙と血圧の間には関連なしとするもの、
   ・喫煙者のほうが非喫煙者に比し高血圧者が少ない、または、血圧値の平均値が低いとするもの、
  逆に、
   ・喫煙者のほうが非喫煙者に比し血圧値の平均値が高いとするもの、
  の3者がそれぞれ報告されている。これは海外の研究でも同様である。・に分類されるものとしては、鏡森らの断面調査成績
 (図・・3―1(略)に示す)、CriquiらのLipid Research Clinicsでの成績、Simonsらの
 ニュージーランドでの断面調査成績などがある。
     図・・3―1 嗜好(略)
     図・・3―2 喫煙習慣別にみた高血圧者の頻度(略)
  ・に分類されるものとしては、小澤らの循環器疾患基礎調査の解析成績(図・・3−2(略)、図・・3―3(略)に示す)、
 Arkwrightらの米国男性勤務者での成績、Go−finらのエルサレムでの成績、Langらのアルジェリアでの成績、
 Agnerらの70歳男女の10年追跡調査の成績、Raoのインド人の成績、Savdieの常習飲酒者での成績(量−反応関
 係ありとしている)、などがある。
  ・に分類されるものとしては、岡田らの断面調査成績(表・・3―1(略)に示す)、Elliottらの症例−対照研究、D
 yerらのシカゴでの計画調査(prospectivestudy)、Ahoのフィンランドでの5年追跡調査の成績、Bae
 rらの高血圧者での検討成績などがある。
     図・・3―3 血圧平均値(肥満度、飲酒習慣、年齢補正)―降圧剤服用者を除く(略)
     表・・3―1 喫煙者群別にみたWHO本態性高血圧症分類(男)(略)
  また、Tuomilehtoらは、ノース・カレリアにおける検討成績から、悪性高血圧者では・、その他の者では・という結
 果を示し、Friedmanらは、男では・、女では・という結果を示している。
  一方、喫煙直後の血圧値の変化については、日本、欧米の研究とも、一部に著変なしとするものがあるものの、心拍数の増加と
 ともに血圧値の増加を認める研究が多い。これは、エピネフリンの分泌増加によって説明されている。このことは、その機序から
 もわかるとおり、短期的な血圧変化について示したもので、長期的にみた高血圧に喫煙が関与することを示したことにはならない。
 事実、高血圧者に禁煙させても、その血圧値は下がっていないという報告がある(Framingham Study、MRFI
 T)。
  また、動物実験による研究でも、急性期反応としては昇圧が認められるものの、長期的には、ヒトの疫学研究と同様、暴露群で
 非暴露群よりも血圧が上昇する、血圧上昇が抑制されるなど、種々の報告があり、結論は出ていない。
  血圧に影響を与える因子としては、わが国の在来型の生活環境要因からは、主に過重な労働、食塩の過剰摂取、寒冷などが、欧
 米諸国では、主に肥満や精神的ストレスなどが指摘されているが、これらをも考慮して喫煙と高血圧の関連を検討した成績は少な
 い。
  以上より、喫煙は、短期的には血圧上昇をもたらすものの、長期的効果としては血圧にどう影響するか、全く影響しないのか、
 まだ決定されていない、というのが現状である。