第5章 妊婦,小児に対する影響〔要約〕
女性の喫煙と不妊の関係については、喫煙により妊孕(妊娠)性が低下し、不妊症のリスクが高まることが示唆されている。喫
煙と閉経の関係については、喫煙により閉経が1〜2年早まるとの諸外国の報告がある。
妊婦の喫煙の有害性が近年の数多くの調査研究により明らかにされてきている。なかでも、妊婦の喫煙と低出生体重、早産、周
産期死亡、妊娠合併症の関係については、因果関係を立証する際の判定基準(関連性の一貫性、強さ、量−反応関係、特異性、時
間的関係、生物学的妥当性など)がほぼ満たされており、そのメカニズムとしては、たばこ煙に含まれるニコチンと一酸化炭素が
主要な役割を果たすと考えられている。妊娠中の喫煙による自然流産や先天奇形のリスクの増加は、これを示唆する報告もあるが、
なお因果関係を立証するにはいたっていない。なお禁煙の効果としては、妊娠前のみならず、妊娠後(妊娠初期)においても禁煙
すれば、出生体重をはじめ妊娠・分娩のリスクが改善されることが認められている。
妊婦の受動喫煙の影響についての研究はまだ少ないが、低出生体重の原因となることが示唆されている。
喫煙により母乳の産生が抑制されるかどうかは明らかではないが、ニコチンが人の乳汁中に分泌されることは確実である。乳汁
を介しての微量のニコチンにより中毒症状を起こした事実は報告されているが、慢性毒性については不明である。
母胎を介さず、小児自身がたばこの煙を受動的に吸った場合、肺機能は低下するようである。呼吸器疾患との関係についても肯
定的な報告が多い。身体の成長の抑制を示唆する報告もある。
青少年期になって、たばこを直接吸うことにより、肺機能低下、咳・痰などの症状の増加という形で、明らかな呼吸器障害が認
められている。さらに、わが国では、成人後に喫煙を開始した者に比べ、未成年での開始者のがん・心臓病リスクが特に高いとの
報告がある。