3.妊婦への受動喫煙の影響

  妊婦をとりまく周囲の者の喫煙が妊娠にどのような影響を及ぼすかについては、今まで国内外においてあまり研究が行われてお
 らず、両者の関連性について断定的な結論を下すことはできない。今までに報告された研究結果から、妊婦への受動喫煙が低出生
 体重のリスクを高める可能性のあることが示唆されている。
  わが国においては、最近中村らが妊婦1772人を対象に地域べースの前向き調査を実施し、夫の喫煙の低出生体重および早産
 の発生に及ぼす影響について検討した成績を報告している。それによると、非喫煙妊婦について夫の喫煙の影響をみると、夫が喫
 煙する者(Passive群)では夫が喫煙しない者(None群)に比べて低出生体重のリスクが1.2倍と少し高く、これを
 妊娠後就労していない妊婦に限ってみると、低出生体重のリスクは1.5倍と、妊娠後就労している者を含めた場合に比べて高く
 なることが示されている。
  なお、夫の喫煙の早産に及ぼす影響についても調べているが、明らかな影響はみられていない。
     図・・5−13 両親の喫煙と出生体重の関係(略)
  Rubinらはデンマークにおいて500例の満期産例を対象に、多変量解析を用いて夫の喫煙の出生体重に及ぼす独自の影響
 を計算した成績を報告している。
  それによると、夫の喫煙1本当たり、出生体重が平均6g有意に減少するという結果が得られている。一方、妊婦の喫煙による
 出生体重の減少は1本当たり平均9gで、夫の喫煙の出生体重に及ぼす影響は妊婦の喫煙のそれの66%に相当すると報告されて
 いる(図・・5−13(略))。
  また、Martinらは病院に受診した妊婦3891人を対象に前向きの調査を行い、妊婦への受動喫煙の影響を検討した成績
 を報告している。妊婦が喫煙しない場合について受動喫煙の影響を調べると、妊娠期間中1日最低2時間以上他人の喫煙による受
 動喫煙にさらされる妊婦は、そうでない妊娠に比べて在胎37週以上の低体重児(2500g未満)のリスクが2.2倍と有意に
 高く、出生体重は平均24g減少すると報告されている。受動喫煙の早産への影響についても検討しているが、明らかな影響はみ
 られていない。なお、Rubinら,Martinらの両調査とも、多変量解析を用いて出生体重に関連した諸要因の影響を補正
 し、妊婦への受動喫煙の出生体重に及ぼす独自の影響を検討しており、信頼性の高い調査といえる。
  わが国においては、妊婦への受動喫煙の影響を調べた研究はほとんどなく、結論が得られていない。
  わが国においては、男女の喫煙率の特徴から、たとえ妊婦が喫煙していなくても、家庭や職場で受動喫煙にさらされる機会が多
 いと予想される。今後、わが国においても本課題に関する研究を充実させ、妊婦への受動喫煙の影響を明らかにしておくことが必
 要である。