第6章 喫煙とその他の疾患〔要約〕
喫煙は、多くの疫学的研究により、がん、呼吸器疾患、循環器疾患以外に多くの疾患およびその他の身体状況に影響を与えるこ
とがわかってきた。消化器系に対する影響では、喫煙は、胃・十二指腸潰瘍の発生率、再発率、死亡率を上昇させ、治癒率を低下
させる。口腔粘膜に対しては、角化および色素沈着の促進が認められている。慢性萎縮性胃炎、肝硬変も喫煙者に多いことが認め
られているが、これらの発生には飲酒の関与も示唆されている。クローン病に関しては、まだ数は少ないが、そのリスクを上昇さ
せるという報告がある。喫煙は、また、脳萎縮、聴力の低下、骨粗鬆症を促進し、老化を早めることにつながると考えられる。喫
煙者では、体液性免疫の低下が認められるが、白血球数および細胞性免疫は、喫煙刺激に反応して、むしろ正常より上昇すること
が報告されている。喫煙者は、非喫煙者に比べ、体重が軽く、また、禁煙により体重が増加することは、禁煙を促進するうえでの
ひとつの問題点である。潰瘍性大腸炎、パーキンソン病に関しては、いくつかの研究で、喫煙者におけるリスクの低下が報告され
ている。しかし、これがニコチン、あるいは他のたばこ中に含まれる物質による防御作用であるという証拠には乏しく、禁煙を進
めるうえでの障害とは考えられない。