2.神経系および感覚器の疾患

(1)パーキンソン病

  パーキンソン病は、潰湯性大腸炎よりも先に喫煙者におけるリスクの低下が報告されている疾患である。コホート研究による成
 績では、0.23、0.36と相対危険度の低下がみられ、症例−対照研究においても、男で0.27〜0.68、女で0.19
 〜0.68とやはり相対危険度は低下を示している(表・・6−3(略))。しかしながら、いずれの研究においてもはっきりし
 た量−反応関係や疾患の重症度との関係は認められていない。一方、パーキンソン病に対しては、患者の病前性格に特徴があるこ
 とも報告されており、日本における小川らの症例−対照研究では、女で内向性の性格、男で緊張的性格との関係が認められ、これ
 らの関係は、喫煙とは独立したものであった。したがって、喫煙とこの疾患の関係については、Kesslerらが提唱するよう
 にニコチンがニコチン酸に代謝されてアミン代謝に影響を与え、それがDOPAの生成を高めて予防的な効果をもたらすという仮
 説のほか、パーキンソン病患者に多い性格は、むしろ喫煙を抑制するように作用している可能性も考えられている。
     表・・6―3 喫煙者に対するパーキンソン病の相対危険度(略)

(2)聴力障害

  喫煙者における聴力の低下がしばしば報告されている。障害を受ける音域は報告により250〜500Hz、2000〜
 4000Hz、あるいは8000Hz以上などさまざまであるが、いずれの場合も障害の程度は大きくない。障害の部位としては、
 耳管の障害による伝音性の難聴、動脈硬化の関与した感音性の難聴の両者があげられている。

(3)脳萎縮

  日本において、脳の老化に及ぼす喫煙の影響について検討した成績がある。それによると、脳の萎縮に重要な役割を果たすと考
 えられている脳血流は、喫煙指数が200以上の喫煙者で有意に低下していた。CTから測定された脳体積指数は、図・・6―6
 (略)に示すように50〜70歳において喫煙者で有意な低下を示しており、脳血流の減少がひとつの要因となっていることが推
 測されている。
     図・・6―6 喫煙習慣別−年齢階級別の脳体積指数(略)