3.代謝および内分泌系の障害

(1)糖尿病

  喫煙が糖尿病自体の発生を高めるという報告はないが、糖尿病に伴う微小血管障害、すなわち、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症
 の発症が特に男のヘビースモーカーで有意に多いこと、さらに糖尿病性網膜症のうち特に増殖性病変を伴うものが喫煙者に多いこ
 とが報告されている。しかし、それらの関係が認められないとするものもある。

(2)骨粗鬆症

  喫煙者のほうが、非喫煙者に比べ、加齢に伴う骨量の減少が大きいことが報告されている。これは男女ともで認められている現
 象であるが、男では55歳以下で喫煙者と非喫煙者の差が大きく、女では閉経以後、太っていない喫煙者で骨皮質の減少が大きい
 (図・・6−7(略))。エストロゲンは、骨粗鬆症に対し予防的な役割を果たすと考えられているため、女におけるこの現象は、
 閉経が早く、肥満者が少ない喫煙者では、エストロゲンが早期から低下するために起こるのではないかと推測されている。
     図・・6―7 60〜69歳の女性における喫煙習慣別・体重別、骨皮質の減少度(略)

(3)体重の減少

  喫煙者は非喫煙者に比べ体重が軽いこと、さらに禁煙により体重が増加することが、循環器疾患を対象とした研究なとで認めら
 れている。英国での職場集団における研究では、35歳付近までは、喫煙習慣による肥満度の差は少なく、それ以後の年齢におい
 て喫煙者と非喫煙者の差が顕著となっている(図・・6−8(略))。喫煙者の体重が軽い理由のひとつとしては、喫煙者では、
 脂肪組織中のリポプロテインリパーゼの活性が上昇しているために脂肪細胞への脂肪の蓄積が抑制されている可能性があげられて
 いる。また、禁煙者におけるエネルギー代謝の低下も報告されている。
     図・・6―8 喫煙習慣別年齢別肥満度(略)

(4)甲状腺腫

  喫煙の甲状腺機能に対する影響は複雑で、たばこ煙中のシアン化物から生じるチオシアン酸塩には、抗甲状腺作用がある一方、
 ニコチンによる交感神経系の刺激は、甲状腺機能を亢進させる。したがって、これまでに報告された喫煙者と非喫煙者の甲状腺機
 能の比較においては、血中サイログロブリンは上昇を示している例が多いが、T3、T4に関しては、上昇を示すものや下降を示
 すもの、差がないとするものなどさまざまである。しかし、触診による甲状腺腫の頻度、超音波検査により得られる甲状腺重量は、
 喫煙者で高いことが報告されている。