第7章 受動喫煙〔要約〕
喫煙している人のそばにいたり、彼らと部屋を共有している人が、他人のたばこの煙を浴びることにより、自分自身は喫煙しな
いのにたばこの健康影響を被ることが問題になっている。この受動喫煙(あるいは不随意喫煙)においては、喫煙者が吸い込む煙
(主流煙)とたばこの点火部分から立ち上る煙(副流煙)の2種類の型の煙を吸い込む可能性があるが、後者は前者に比べて刺激
性が強く、また発がん物質などの有害成分の含有量も高い。
受動喫煙が起こる環境は交通機関や事務室、家庭など広範にわたるが、それによる室内の空気汚染は多くの観察で示されている。
受動喫煙の直接の効果は、受動喫煙者の血中あるいは尿中に排世されるコチニン(ニコチンの代謝産物)の上昇としてみることが
できる。より間接的にはたばこ煙の二酸化窒素が肺内の結合組織の代謝を促進することにより体内に作られるというハイドロキシ
プロリンの尿中排世の上昇としてみることもできる。心理的な不愉快感とは別に、受動喫煙の生体への急性影響は煙の粘膜刺激に
よるもの、および肺からの吸収によるものとがあるが、いずれも生理学的な方法で客観的に測定しうる。これによれば、これらの
反応は常習喫煙者よりも非喫煙者において強いという。
受動喫煙の慢性影響としては、特に肺がんについて多くの研究が最近発表されている。このことについて最初の報告となった平
山の非喫煙婦人に関する前向き研究によれば、日本の喫煙男性の妻の肺がん死亡率は、非喫煙男性の妻のそれよりも明らかに高く、
しかも夫の喫煙量とともに高くなることが知られた。多量喫煙者の妻の肺がんのリスクは自ら少量の喫煙をした場合に匹敵すると
いう。その後この問題に関する報告が各国からなされ、約半数のものは受動喫煙の肺がんに対するリスクを明らかに認めている。
そのためいろいろな国でこの問題に対する公衆衛生上の注意が喚起されるようになっている。
肺がん以外のがん、成人の呼吸機能の障害、虚血性心疾患についてもいくつかの研究で受動喫煙によるリスクが報告されている
が、リスクがみられなかったとする報告もあり、一致した結論は得られていない。