2.受動喫煙の観察指標

  生活環境における受動喫煙により、たばこの煙が体内に吸入されていることを観察するための指標として最も有用とされている
 のが、血中あるいは尿中のコチニン濃度である。コチニンはたばこ煙に含まれるニコチンの代謝産物であるが、その生物学的半減
 期が長く、受動喫煙の程度とその血中濃度との相関も高いことが知られている。Matsukuraらは、成人非喫煙者について、
 家庭および職場での受動喫煙の有無、程度別に尿中コチニン排世量を調べ、家庭内受動喫煙のある者はそうでない者よりも高値、
 またより多くの喫煙者のいる職場にいる者ほど高値であることを確かめた(図・・7−2(略))。
  より間接的な指標として、たばこ煙中の二酸化窒素によって慢性的に体内につくられるハイドロキシプロリン(肺内結合組織の
 代謝産物)の尿中排世量は、慢性的な受動喫煙の程度をよく反映することが示されている。実際には随時尿を用いて尿中クレアチ
 ニンとの相対濃度(ハイドロキシプロリンークレアチニン比:HOP比)として用いられる。松木、春日らのグループの一連の研
 究によれば、尿中HOP比は、能動喫煙者においてはその喫煙量とともに高い値となり、また小学生においては同居の父母(特に
 母)の喫煙量とともに高い値となるが、同時にこれは、他の発生源、非排気型の室内暖房装置や調理用熱源から、さらに交通の激
 しい沿道付近の自動車排ガスに由来する二酸化窒素の影響をも受けることが示された(図・・7−3(略))。
     図・・7―2 成人非喫煙者について、家庭および職場に喫煙者がいるときの尿中コチニン排泄量の変化(略)
  呼気中あるいは血中の一酸化炭素およびそれに関連する血清チオシアネート濃度などは、能動喫煙についてはその客観的指標と
 してよく用いられるが、慢性的な受動喫煙の評価の目的上は必ずしも信頼性の高い指標とはいいがたいようである。また、ニコチ
 ンについては、生体内での生物学的半減期が短く、その血中、唾液中の濃度なども生活環境のなかでの受動喫煙の量的観察には適
 さない。
     図・・7―3 両親の喫煙習慣とHOP比(略)