すみこの山日記
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早春の散歩
2002/3/31
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3月に入ってからの気温は異常に高く、暖かいというより
暖かすぎる日が続いている。
今年の春はとても早い。もう桜も咲き始めた。
山の雪はどのくらいまで減ったのだろう。
気にはなるがこのところ週末の天気はかんばしくなく、
しばらく山には行っていない。
今日も午後から天気が崩れるというので予定を変え、
午前中日差しのあるうちに
家から歩いて20分ほどの小さな丘陵地へ行くことにした。
その周囲は宅地開発が進み住宅がたち並んでいるが、
ここだけは神社の裏山のせいかあまり手を加えられていない。
コナラ、アベマキ、シデ、ホンガヤなどの木が残った
小さな林になっている。
しかしその林は10分も登らないうちに突然終わり、
整地された芝生の広場に出る。
それは昔、このあたりの山を削ってつくったゴルフ場の跡、
今は上り下りのある芝生広場で、家族連れが時々遊びに来たりするところだ。
林らしい場所は、上からも下からも侵食されて
ほんの一握りしか残っていない。
しかしここは小鳥の多いところで、
3年程前にはエナガがここで巣をつくっているのを見たことがある。
勇治が見たのは、
枝に絡んだクモの巣をくちばしでむしりとっているところだった。
私は、木のまたにコケなどの巣材を付けて
巣作り真っ最中のところを見た。
どうやらエナガはここで繁殖をしている可能性がありそうだ。
エナガのほかにもシジュウカラやヤマガラ、コゲラはよく目にする。
時にはアオゲラの声を聞くこともある。
狭い場所だが、鳥たちの大事な生活の場となっている林だ。
その入り口にはスミレの花が咲いていた。
タチツボスミレだろう。
何ヶ所か株になってうす紫の花を咲かせている。
キチョウもどこからともなく飛んできて
いかにも春らしい。

歩き始めるとすぐ、シュンランの花が目についた。
思ったとおりもう咲いている。
今日のお目当ての花だ。
最近の山野草ブームで人気が出たせいかこの花の盗掘がふえ、
山からその姿が減りつつあるということだ。
しかしここでは行く先々で、地味だが微妙な色合いの花を見せてくれる。
毎年、春先には少しの時間を割いて、
ここへシュンランを見に来るのが恒例の行事となっている。
遠くからウグイスの声が聞こえてきた。
この季節に聞くその声はいかにも春らしく響いてくる。
雪融けと同時に咲くオウレンは種になってしまったが、
イカリソウの蕾はまだ小さい。
シュンランは今が花の盛りだ。ガマズミの芽もほころび、
伸び始めた緑の葉の間に
綿毛に包まれた小さい蕾の集まりが見える。
コナラやアベマキといった高木はまだ芽吹かず、冬枯れのままの
シルエットを空高く描いている。
しかしヤマザクラは
すでに花や葉を開き、時々差してくる薄い日差しを浴び
春爛漫という風情だ。

木にも草にもそれぞれに芽吹きの時がある。
その順序に従ってこれから次々と葉を開き花を咲かせる。
1年中で一番劇的に変化する季節、
めまぐるしく移り行く時期がやってくるのだ。
芝生の広場に出た。
これまでの林の続きの尾根は芝生の広場となり、
遠くまで続いている。
木は広場の両脇の急な斜面にしか残されていない。
しかしこんな場所でもそこを好む鳥もいて、
その歌声があちこちから聞こえてくる。
「一筆啓上」のホオジロだ。
広場の脇の木の高いところに止まってしきりに鳴いている。
元気のよいその声に送られて芝生の上を歩いて行くと、
先の方に白く彩られた木が見えた。
丈も高く枝を横に張り、一面に白い花をつけている。
それはコブシだった。
山でも春にはよく花を見かけるが、
これほど大きく、花の多いものは見たことがない。
その下にいる人が小さく見える。
いかにも咲き誇るという様子でその木は立っていた。
しばらく行くと、
今度はカワラヒワの群れに出会った。
20羽ほどの群れがチリコロチリコロと鳴きながら上空を飛んでいく。
行ったと思うとまた戻って来たりとなかなか忙しい。
時には高い木の梢にとまり、ひとしきり囀り声を聞かせもする。
そんな鳥たちを見、声を聞きながら行くと
桜の木が何本も広場のふちに沿って植えられているのが見えた。
もうすぐ咲くのだろう、
その木々の枝は濃い桜色に染まり
開花のときを待ちかまえているようだった。
いや、
もう咲いているものもありそうだ。
その下では気の早い家族連れが弁当を広げ、花見としゃれ込んでいた。
今はまだ薄日も差している。
暖かく、戸外で食事をするにはいい日だ。
それを見ると私たちもなんだかおなかがすいてきた。
そろそろ帰ろうかと踵を返し、
少し戻ると芝生の上を黄色いアゲハのような蝶が飛んでいた。
いくらなんでもアゲハとは早すぎる。何だろうと
しばらく蝶を追ってみた。
ついに止まったところを見ると本当にアゲハ、
しかもキアゲハだった。
こんなに早く出てくるとは・・・。今年の春は暖かすぎるようだ。
ところが、このすぐ後で今度はアカタテハが飛んできた。
この蝶は成虫で冬を越し、春になると真っ先に出てくる春一番の蝶だ。
その飛ぶさまは、厳しい冬を乗り越え
春を迎える喜びに舞い踊っているように見える。
今日もアカタテハを見て、
春が来たという思いが強くなった。

再び林に入ろうとするあたりで、
枝いっぱいに蕾をつけたクロモジが目に入った。
大きく太い幹。丈もこの木にしては高い。
先のとがった葉芽とその付け根にある蕾でワンセットだ。
それが細い枝の先すべてにつき、
日の光に輝いている。
明るさに満ち、堂々とした姿は春の象徴のようだった。
春を告げるクロモジ。
それを見ると、山の様子はどうなのか気になってくる。
来週こそは天候もよく、山に行けますように。
Sumiko