昭和60年会報12号
大分きのこ会会報No12        1985・3・10発行
 足元の大分で見た九州のきのこ(1)<私をひきつけた風変わりなきのこ>遠藤 正喜
1:成長が早い〜キヌガサタケ
 人里近くの竹林に多いキヌガサタケの姿は、普通に見かけるハツタケやエノキダケなどとちがう。かさの下にマントま
たはスカートと呼ばれたりするレース状の白いベールをつけている。雨の多い秋口に見かけることもあるが、大分地方
ではむしろ梅雨の終わりごろから7月半ば頃に多い。マツタケをきのこの王様に見立てると、このきのこはさしあたり
「きのこの女王」ということになる。小林義雄先生(1975)は、キヌガサタケをきのこの三冠王と称し、その特徴を三つ
あげている。
@菌類中で最も美しい
A菌体(きのこ)の成長が最も速い
B菌類中最も高等である
第A点の成長が速いことについて私は、1965年6月に、大分市碩田(せきでん)中学校で確かめたことがある。便所
の南側に小さな竹の茂みがあった。その中に数個のキヌガサタケの幼菌(卵状)を見つけ、夕方から朝方まで夜を徹し
て成長を観察した。
その結果、伸びる速さはきのこの部分や時刻によっていくらか異なるが、卵からマントが展開を終了するまでの延び
は、1時間に平均1.7Cm、1分間に2.8mmということがわかった。吉見昭一先生(キノコの女王、1977)によると、
最高伸長記録は1分間に3mmだという。
2:感動を呼ぶ〜ウスキキヌガサタケ
  今から32年前の1952年8月3日に私は、宮本光生君と宮崎県の酒谷村割岩口(われいわのくち)〜現在の日南
市〜付近で植物採集をしていた。その折り、道はずれの薄暗い森に中に橙黄色の大集団を見た。そっと近づくと、どう
やらきのこらしいものが30個以上群生していた。橙黄色のレースをつけたキヌガサタケならぬ未知のきのこは、威容
を誇っているように見えた。当時、服部植物研究所に居られた清水大典先生も、珍しい不明きのこということであった。
その後、ウスキキヌガサタケ(変種)と命名されたことを知り、初対面の感動を新たにした思い出がある。このきのこ
は、華中、台湾、朝鮮半島中部、本州、九州という分布圏が認められているものの、確認されている産地は極めて少な
かった。それが、1952年をスタートに足元の大分県でも見つかった。1969年10月12日に大分県宇目町のコジイ林
の端で7個、1979年9月15日には日田市大鶴のモウソウチクの生えたコジイ林では、眼が覚めるほどに鮮やかで形
の整ったもの2個、さらに1984年7月14日には大分市石川のモウソウチクの生えた常緑広葉樹林に5個生えてい
た。別に朝日新聞によると、1983年10月2日には福岡県の黒木町(福岡林試の金子周平氏)でも確認されているよ
うだ。これらを考え合わせると、九州では1940年以降、少なくとも6回6地点が確認され、ウスキキヌガサタケの分布
は、点から線となりやがては面としてとらえることができそうである。
3:珍しい腹菌類の発見
 腹菌類のなかのスッポンタケ亜目にはいるきのこには、きのこの形態に関する常識を一変させるものが多い。特に
珍品といわれてきたアカカゴタケ科のイカタケやアカイカタケは、その代表的なものである。イカタケは、今から13年前
の1971年9月27日に大分県千歳村でもみがら上に600個余り群生しているのを見つけたのが始まりである。
 このきのこが地元の大分合同新聞に取り上げられ、話題になった。その後私がイカタケの解説とスケッチを同紙に掲
載したことにより、その新しい発生地が私の手元に届き始めた。そして、1984年現在、大分県内だけで8箇所が確認
された。これらの観察結果をまとめると次のようになる。
@大分県内では、標高20〜150mの低地に分布する。
A2〜3年間雨ざらしになった古いもみがらに発生する。
B発生時の平均気温が19〜23℃の間、発生」1週間の降水量は108〜236mmであった。
C腕数は9〜12本で、100固体について調べてみたら10〜11本が最も多い。
日本におけるこれまでの知見をまとめると、次のとおりである。
@宮城(1923)鳥取(1934)愛知(1939)京都府(1961)高知(1976)大分(1971〜1983)の1府5県に分布。
A発生基物はもみがら、落ち葉、アセトン処理したアカムガシワのおがくず等
B発生地の最高標高は、鳥取大山の約800m地点
C発生期間は9〜12月
D元来熱帯に分布する種といわれている。
 イカタケと同じアカカゴタケ科のアカイカタケは、イカタケ以上の珍菌ではないかと思う。そのアカイカタケが、1979年
6月13日に別府市亀川で10個余り見つかった。その後、1981年に?回、1983年に最初の発生地から少し離れた
ところに?回発生した。全部で3地点4回27固体を確認した。別府市で観察したアカイカタケについての知見をまとめ
ると、つぎのとおりである。
@標高900m、別府湾をはるかに望む北北?の山腹の緩い斜面で、常時やや湿り気の多い場所である。
Aクス、シロダモ、タブなどのクスノキ科の植物が多い。森林生態学的にいうとタブ・イチイガシ群集へ移行中の林であ
る。
B発生した時の平均気温は21.8〜22.7℃、降水量は32〜88mmである。
Cアカイカタケの形態は関西型で、腕数は24本で先端部が二又状になっているのが普通である。
 日本におけるこれまでの分布地点は、京都府(1935)、福岡県(1938)滋賀県(1946)静岡県(1948)、愛知県
(1957)大分県(1979)の6箇所の日本中部から西南地方である。
昭和59年度 きのこ観察会報告
第30回 4月30日(日)大分市吉野天満社で行ったが、雨のため参加者は5名。めあてのハルシメジ(シメジモドキ)
の発生量も例年に比べて少なかった。−この日のことは大分合同新聞夕刊(5月9日)で「春のきのこ探し」と題して紹
介された。
第31回 5月20日(日)大分市柞原八幡宮自然林内を中心にカンゾウタケを観察した。参加者は17名。コジイの大
木、特に板状になった根元に牛の舌か肝臓を思わせる暗赤色のカンゾウタケを探し当てて大喜び。そのほかにオオツ
ルタケや有毒のニガクリタケも見つけた。
第32回 8月19日(日)大分郡庄内町の黒岳の落葉広葉樹林内できのこ観察を行った。
日照り続きできのこの発生は良くなかったが、目当てのヒメベニテングタケに出会い、色鮮やかなこけし人形状の姿を
鑑賞できた。また珍菌のアイゾメイグチなど約30種を確認した。参加者14名。
第33回 9月23日(日)宇佐郡安心院町の林。
この日は晴天で五Z丸の津房中学校」に10時集合、参加者は23名であった。遠藤会長欠席のため平嶋・辻幹事が
お世話をした。なお、林内は会員の大砂巌氏(毎年案内してくださっている岩尾氏の義弟)が先頭にたって案内役を務
めてくれた。午前中は、マツ、アラカシ林、午後はマツ、クヌギ林で観察・採集した。地方の型の話ではハツタケには少
し早いのではないかということであったが?日ほど」の雨が幸いしてか、お土産程度は採集できた。秋の味覚を手に
楽しい観察会は15時ごろ解散した。観察した主なきのこは次のとおり。
ウラムラサキ、オオキツネタケ、クサハツ、コクリノカサ、クサウラベニタケ、ワサビカレバタケ、トキイロラッパタケ、コガ
ネタケ、ハツタケ、マンネンタケ、キイボカサタケ、ナラタケ、イグチ・ベニタケ・テングタケの仲間など。カエンタケらしい
ものもあったというが、実物は行方不明となり、確認できなかった。(平嶋 関一 記)
第34回10月14日(日)大分郡庄内町白水〜男池一帯のクヌギ・コナラ・ミズナラ林のきのこを観察した。この日の目当
てはタマゴタケとムラサキフウセンタケであったが、どちらも見つからなかった。しかし、テングタケやシロタマゴテングタ
ケが見つかった。発生量が多かったのはホテイシメジ、ヌメリスギタケ、チャナメツムタケなどであった。
午後の観察会で初めて見つけたカキシメジは、肉厚で笠の径が13cm前後あるものもあった。本県産のカキシメジは
多少毒性があり、九州産のものは食用になると聞いていたが、落葉広葉樹林中の黒岳産のものについては何もわか
っていないのでお互い食べないように話し合った。参加者は約??名。名前のついたきのこ約30種を観察した。
*この日採集したカキシメジを試食した方から「家族で(おとな男女、子供)食べたら、全員中毒しました。腹痛、下痢な
どで少々弱りました。いずれ詳しく報告します」と連絡がありました。ご注意ください。

九州では初めてのキノコの本「九州のきのこ」出版
 九州に生えるきのこの本をつくろうという話があって、5年余りを経た昨年(1984年)の11月3日ようやく出版にこぎ
つけた。本郷次雄先生の監修による熊本きのこ会・大分きのこ会編著「九州のきのこ」熊本日日新聞社発行(¥250
0)B6版、304ページ、オールカラー。この本の刊行記念行事は、昨年の11月3・4日の二日間、熊本市の熊日ホール
を中心に行われ大分きのこ会会員も多数参加した。主な行事は、滋賀大学教授本郷次雄博士及び大分きのこ会会長
遠藤正喜氏によるきのこの後援とスライド映写会。また会場には、きのこの標本約100点、パネル約60点を展示し一
般に公開した。本は、熊本・大分をはじめ全国的に販売され、好評のようである。しかし、きのこ愛好家や生物の研究
者からは次のような注意をいただいている。
◎りっぱなカラー写真だが、産地や日付、撮影者の記録が無いのが惜しい。
◎余話は面白いが、同じ人が何回も現れ、しかも執筆者名がゴチで少し目立ちすぎる。
◎観察記録がもう少し欲しい。種名の誤りもあるようで、次に出すときは改めて欲しい。

赤尾のアカマツ林できのこ狩
 1984年10月10日中津商高の同好者によるきのこ狩が、ケ佐氏の赤尾の山で行われた。お目当てはハツタケであ
ったがだめだった。しかし、ウラベニホテイシメジ、サクラタケ、カノシタ、トキイロラッパタケなど15種余りを見つけた。
量は少なかった。(E)

大分市旦野原でキノコ研修会
 1984年10月11日には、大分県教育センターの職員研修会が開かれた。内容は、自然の中のキノコの生え方、食
用キノコと毒キノコの見分け方、大分県のキノコ分布などであった。クサウラベニタケの採集、ニガクリタケ・ツキヨタケ・
カキシメジ・ドクツルタケの実物観察、アカイカタケ・イカタケ・ササナバの分布はスライドでと盛りだくさんの内容で40名
余りの所員・研修生は熱心に研修した。講師は遠藤研究部長。

会員の声・会員の動き 省略

黒岳原生林伐採反対を陳情
 黒岳原生林の伐採計画を中止して欲しいと1984年11月17日に大分営林署へ申し入れた。大分きのこ会からは平
嶋副会長が他の18団体の代表と共に保護を訴えた。

会報12号をお届けいたします。冬のきのこエノキタケやヒラタケにお目にかかれましたか?4月のハルシメジを皮切り
にまた自然の中できのこを楽しみましょう。



トップへ
トップへ
戻る
戻る