2000年度、第一回IFOAMアジア理事会報告

                           橋本慎司

 

 去年の11月、第4回目のIFOAMアジアの大会がフィリピンで開催され、総会で5人の理事が選出されました。今回の理事会は新体制での始めての会合で、次の総会(2001年)までにどのようにしてアジアでの有機農業のネットワ−クを広げ、有機農業運動を推進していくか積極的な話し合いが行われました。開催地はインドのア-ウラガバ-ド、前理事会でコ−ディネタ−を努めた、ダニエル氏の活動拠点になっている地域開発センタ−(IIRD)で6月27日から7月1日まで6日間に及びました。インドのア−ウンガラバ−ドは観光地としても有名で、エロ−ラ、アジャンタなどの有名な仏教史跡を訪ねる拠点にもなっています。ダニエル氏の地域開発センタ−は都市郊外の農村地帯にあり、ここで、農村の貧困解決、有機農業の推進を目指して、地域の農民にさまざまなトレ−ニングコ−スを実施しています。インドでは2億人の人々が飢えに苦しんでいるといわれ、しかも貧富の差が激しく、コンピュ−タ−産業が発展する一方で、農村での生活はきびしく、人口が都市部に流れ、スラム化の大きな原因になっています。センタ−では学校を卒業できなかった農民に文字を教えたり、有機農業に必要な技術を農民が自主的に学べるようなカリキュラムを用意したりして地域の農村復興を支えています。各理事はここの研修所と宿泊施設をお借りして会議を行いました。

 

1.各理事の紹介

 前回の大会では、アレキサンダ−・ダニエル氏(インド)、橋本慎司(日本)、アレックス・バンチレス女史(フィリピン)、S・バヒサン氏(スリランカ)、ルウ・ゼンフイ氏(中国)が理事として選出されました。ダニエル氏はIIRDで地域で有機農業を推進する他、インドでの有機農業団体のネットワ−クを形成し、インドの国内有機農業基準作りに力を入れています。IFOAMでは2期IFOAMアジア理事会のコ−ディネ−タ−を努めた他、IFOAM世界理事にもなった経験を持ち、現在はアジアの地域基準作りに大きな力を注いでいます。アレックスさんは彼女の夫と共にフィリピンのNGO・AVDFを組織しています。AVDFはミンダナオ島の有機農家を支えるためにできたNGOで現在では6000から8000の有機農家の農産物を仕入れ、マニラの消費者に販売しています。農産物は店舗販売の他、旬の野菜を箱詰して消費者の注文を受けたり、病院などにも卸しています。またフィリピンの有機農業団体間の連絡組織OPTAの副代表も努めています。バヒサン氏はスリランカのNGO・SUNRHに勤め、検査・認証に関わるほか、農民の農業研修・教育プログラムを実施しています。現在はスリランカの有機農業団体間のネットワ−ク化に向けて帆走しています。ルウ氏は中国の農務省管轄の有機茶調査開発センタ−に勤めており、有機農法による中国茶の栽培技術の研究。比較調査、有機茶の加工・販売・基準作りと検査・認証など中国茶の有機生産を推進しています。

 

2.各理事の担当と今後の動き(役割分担)

.橋本

コ−ディネタ−(IFOAM・その他外部との窓口、理事会での議長)

担当プロジェクト (オルタ−ナティブマ−ケティングプログラム)

担当ワ−キンググル−プ(農民グル−プ)

・今回の会議でIFOAMアジアとしてオルタ−ナティブマ−ケティングプログラムを遂行することが決定。今年の秋に4人の研修生を選抜して日本で受け入れのプログラムを考えること。できれば将来、アジア内で地域内流通を進めている団体のネットワ−ク化をはかること。

・IFOAMの農民組織と連絡をとりながら、アジア内での農民のネットワ−ク化をはかること。

.ダニエル氏

事務局(理事会開催予算の取得、各理事からの意見を集約して理事会の開催計画、会議の討議事項その他資料の用意)

担当プロジェクト(アジア地域基準、アジアの有機農業団体のネットワ−ク化、第5回IFOAMアジア大会開催協力、WTO関連)

担当ワ−キンググル−プ(ロビ−イング、マ−ケティング)

・アジア地域基準作りを担当。アジア地域基準の草案を練って、理事会に提出すること。基準検討会議を開催しアジア各地からの声をまとめること

・各国の国内での団体間のネットワ−ク作り、国内基準作り(ベトナム・インドネシア)の手助け

・有機農産物のマ−ケティングの発展促進

・アジアのWTO反対NGOと連絡をとりWTO問題を検討すること、各団体とのネットワ−ク化をはかり「WTO体制でのアジアの農業に与える影響」をまとめること

.バイヒサン氏

副コ−ディネタ−(コ−ディネタ−不在の場合の代行、書記と議事録の保管)

担当プロジェクト(有機農業教育研修プログラム)

担当ワ−キンググル−プ(教育・研修)

・有機農業推進に必要な農民教育のカリキュラムづくり、アジア各地の有機農業研修教育の実態調査とそれにともなう会議を開催すること

.アレックス女史

理事担当(次回のニュ−スレタ−の発行・編集、印刷はIIRDで行う)

担当プロジェクト(アジア地域における女性の地位向上)

担当ワ−キンググル−プ(女性グル−プ・伝統的な原住民の農業形態の保持)

・農村の女性の地位向上にむけての会議の開催。

・伝統的な部族や原住民の農業技術の保全、調査、保護を目的としたネットワ−ク、大会などの実施。

.ルウ氏

理事担当   (第5回IFOAMアジア大会責任者)

担当プロジェクト(検査・認証)

担当ワ−キンググル−プ(基準、研究・調査グル−プ)

・アジア検査員協会設立にむけての組織づくり

・有機農業の研究・調査機関のネットワ−ク化

・中国で予定の第5回IFOAMアジア大会にむけて中国内部の有機農業団体をまとめ、大会を準備すること。

 

3.オルタ−ナティブマ−ケティングプログラム

 各理事にプロジェクトの説明。協力を呼びかけた。インド・スリランカでの地域内流通の実験が始まっている。フィリピンはだいぶ進んでいる様子。各理事とも有機産物の流通が国内、地域内を中心におくべきであることを合意。中国も将来、国内での流通を検討中。また日本でのプログラムのみでなく、将来はアジア各地に広まっている地域内流通組織のネットワ−ク化や会議が必要であるという意見もでた。プログラムの内容は理事会で合意を得た。

 研修参加者の希望は正式には中国から1名、スリランカから2名、あとインドとフィリピンからも希望者を選出中、IIRDより今月中に各アジア会員にプログラムの内容と参加希望者募集の手紙を出すことに決定した。募集の締め切りは724日。参加者名簿と共に共同基金の会議に持っていく予定。

 

4.アジアの地域基準・検査認証について

 アジア地域基準については今回の理事会でも大きな議題のひとつになりました。IFOAM本部では「地域基準を認めれば異なった基準が複数できることになり何が有機農業であるか定義が薄れてくる、もしアジアの現状がIFOAM基準と矛盾するのであればIFOAM基礎基準の中にアジアまたは別地域の特殊性を明記したらどうか」という案でをだしている。

 日本・フィリピンからは「現在、地域基準を進める必要性はあまりないのでは」という意見を出しましたが、他の理事は地域基準の必要性を感じており、中国、スリランカ、インドでは現時点のIFOAM基準では国内の有機農業の生産現状に適合しない、と強い主張がありました。中国の理事はお茶の生産に関わっており、中国では伝統的にお茶は広大な面積にお茶のみを栽培してきたし、多様な生態系の保持などする必要は感じられない。インドでは長年、伝統的な農業が受け継げらており栽培の方法はなんらIFOAM基準と変わらないのに転換期間が必要になるのは理不尽である。またインドでは何百もの伝統的薬草が農業に利用されてきたがこれらも基準の中で明記して欲しいなどの意見がでました。

 やはりアジアの有機農業を推進する基準を持たないとIFOAM基礎基準ではガイドラインにならないという意見が大半でした。

 

 とりあえず今回の理事会で討論のうえ全体の合意を得た点は

1.アジア基準はあくまでもアジア各国の有機農業の現状を踏まえたものを中心に検討する、IFOAMで承認されればIFOAMアジア基準と命名するがそうでなくともこだわらない。

2.アジア地域基準は国内基準に役立てるために作るのであり、地域基準よりも国内基準の制定が優先される。

3.アジア地域基準案をつくるにあたって、中国の李氏、ネパ−ルのヤダブ氏、フィリピンのブリオネス女史を基準委員として任命し理事会で立案、検討して総会にかける予定。

4.有機農産物はあくまでも地場生産地場消費が原則であり、特に食糧自給を踏まえた活動とするべきである。

5.前回の総会では地域基準を理事会ですすめることで合意があったことを確認。

6.有機農産物の検査員をアジア内で養成するよう将来アジア検査員協会を設立する。その草案は中国の方で用意してもらう。

 

 地域基準作りに関しては前回の会議での意見を受けて、日本側の意見を主張しました。意見として。

1.日本ではアジア内で地域基準をつくる必要性をあまり感じられなし積極的な協力は難しい。現在のIFOAM基礎基準のあり方におおむね賛同しており、IFOAM本部と衝突することは避けるべきであると考える。アジアの特殊性をいかすのであればIFOAM理事会が提案する基礎基準内で地域の多様性を記述するので充分であるというのが国内の意見である。

2.ネパ−ルでの地域基準会議の結果ではIFOAMに地域基準の必要性を訴えるには不充分である。今後、地域基準のワ−クショップを開催するのであれば、IFOAM基準と地域の特殊性の違いが解りやすいものになるようにしないと納得できない。

3.日本としてはアジアの基準作りがしいては地域内の有機農産物の貿易を活発化させる結果になり日本の有機農業に打撃を与えることを危惧している。アジア内での経済的問題は理解できるが日本の農民を解決の犠牲にはできない。もしアジア基準を作るのであればこのようなことも明記しないと日本としては協力は難しい。

4.検査のコストを考えると欧米から検査員を招くよりもアジア内で検査員を養成したほうが現実的だとは思う。しかし日本ではすでに検査・認証団体が形成されており、自主独立で運営できるのでこのままではアジア検査員協会に関わりにくい、もしIFOAMアジアで検査員を育成していくなら日本や韓国も関わっていけるよう配慮せねばならないと思う。

 

5. 国内基準作り

 各理事が現在進行中の国内基準の状況を説明、IFOAMアジアの活動の中でアジア各国での国内基準作りを援護していくことで合意、基準作りに関して以下のガイドラインを設置

基準作りではいろんな分野から専門家を集め検討すること(生産者、竜津業者、検査・認証委員、行政、NGO,研究機関、消費者)

基準作りには必ず、生産者を含めること

基準作りは地域レベルから積み上げること

IFOAM基礎基準をその国の言語に訳し参加者が読めるようにつとめる、基準作りの参考にすること

基準づくりには各地の農民リ−ダ−と相談の上で原案作りを進めること

基準検討員会には適当な専門家をおくこと

大きな大会を開き総会の場で民主的に合意されること

大会には公的機関を含め、いろんな分野の専門家が招かれること

IFOAMまたはIFOAM理事会への提出

基準の基準検討委員会で継続していくこと

 

6.IFOAM大会

 第4回IFOAMアジア大会は多くの参加者があり成功に終わった。プログラムはおおむね充実していたというのが各理事の感想であった。日本での会議ではもっとカントリ−レポ−トを増やし、各国の現状を増やす機会があるべきであるという意見があったことを伝えた。今回の理事会であらためて開催にあたって大きな役割をはたしたCITEMに理事会より感謝状を書き記すことで合意。

 次回の開催予定地は中国で予定しているが責任者のル−氏も予算をいかに立てていくか不安があり、ダニエル氏を通じてヨ−ロッパの財団に援助を受ける方向で計画していくことが決定した。ル−氏は中国で各IFOAM所属の有機農業団体や政府機関とコンタクトをとり内容を考えていくことで承諾。12月頃、中国の関係者との話し合いを持つことも含め、IFOAMアジア理事会わ開催予定。

 8月のIFOAM・スイス大会には全理事が参加予定。OA2002(IFOAMが第3世界に向けて計画中のプロジェクト)に以下の案をアジア理事会より提出することで合意した。

中国、スリランカ・ベトナム・インドネシア、ネパ−ル・その他の国内での有機農業団体のネットワ−ク化計画

中国での検査員研修

前回フィリピンで設立したワ−キンググル−プの活動予算

5回IFOAMアジア中国大会開催補助

IFOAMアジア理事会活動・運営予算

アジア地域基準

日本でのアルタ−ナティブマ−ケティングプログラムへの予算補助

 

7.その他

有機農業比較研究はインド・中国は終了、スリランカはもうすぐ出来あがる。フィリピンでは予算がおりているのに結果が返ってこないので再度確認。日本・韓国は予算なしで続行は不可能。

将来、アジア地域の中でさらに地域を分けて準理事会を設置予定。IFOAMアジアとしての政策検討

フィリピンできたワ−キンググル−プの規約の作成。