07.05.06  フクロウ  茨城県 青森県

 今年はオオタカの撮影が長引き、4月まで延びてしまった。菜の花が咲き始め、どうしても菜の花の中のオオタカを撮りたいと熱くなっているうちに4月も終わりに近くなった。
昨年、フクロウの調査をしたところが、殆ど追調査をせず、巣立ちの5月を向かえてしまうので、取り敢えず近場のポイントを回ってみた。
数件確認したあと、一番自宅に近い神社をまわった。
神社の隣のOさんがたまたま、庭のお掃除をしていたので立ち話をした。フクロウの話になり、そのまま庭続きの境内の立ち木前でフクロウ談義になった。
その大きな槲の樹に昨年、営巣しているフクロウを確認したのだが今年も営巣している様子。話をやめて双眼鏡で、昨年使用していた高い穴の中をのぞいたがどうも居ないようだ。
ぐるっと回って後ろ側にある低い穴を見ると中でフクロウの親がこちらを見ているではないか。しかも胸辺りには白いうぶ毛のヒナがかすかに見えた。
Oさんもヒナの鳴声は聞いていたがいつもの穴と思っていたと大笑い。
フクロウの親は見つかってしまって困った顔をしていたがしばらくすると何処かに飛び出した。残った巣穴の中は2羽の可愛い雛がいた。

以下この1週間のフクロウのことを書き込んでみました。

4月29日
 昨年より低い穴で営巣していることが分かり僕は翌日からセンサーで撮影することに決めた。
 自宅から車で10分の距離であるから色々と都合が良い。だが田舎とは言え、車の往来は激しく、僕が神社に出入りする姿を見られるてしまう。従ってセンサー一式をそのまま放置しておくことは盗難の危険があるので監視している必要がある。幸いに神社の裏側は野菜畑が続きその空き地に車を駐車してその中で見守ることにした。
まだ、明るい夕方の5時頃より、センサーカメラの準備を始めた。親フクロウが巣穴に飛び込んでくる方角を想定した。神社に接しているOさんの庭方向からはまず飛来しないだろうと思って反対側の神社の広い境内から飛翔することをイメージしてみた。

そしてその角度へ赤外線を飛ばすセットを固定する。それにカメラからのケーブルを繋ぎカメラは巣穴のまん前に置いた三脚にセット。
赤外線に飛んできたフクロウの親が、触れたら直ぐにカメラが作動するかどうかテストしてみた。赤外線を少しふって巣穴の縁にあててみた。
瞬間、ストロボーが光りシャッターが切れた。テストはOKだ。赤外線を同じ場所に戻す。
薄暗くなってきた6時過ぎには神社から出た。

これならフクロウ親子にはそれほどストレスはかけないで済む。来年も再来年もここで営巣して欲しいので極力、フクロウへのストレスは避けなければならない。それには人間が近くにいてはまずい。

7時ごろより神社の境内は暗くなりフクロウが元気に活動する時間帯になる。
僕は車の中でジャイアンツとヤクルトの実況中継を見る。どうも本日のG打線は湿ったままでなかなか点が取れない。しかもエラーがらみの点数は取られるし、見ていてもエラエラが続く。
更に神社の境内の中のセんサーが眠っているのか、いっこうにストロボーが光らない。
ダブルでエラエラ。
ジャイアンツがダメ押しの点数を取られたところで僕はセンサーを引き上げに神社へ入った。9時過ぎだろうか。
境内に入った途端ストロボーが光った。
フクロウが飛び出したのだろうか。
僕は急いでカメラやセンサーの引き上げをした。ぐずぐずしていたらフクロウに襲われる。僕は夜、フクロウの撮影には傘を必ずさして動いているがこの撤収のときは両手を使用するので後方の背中や頸が危険である。
直ぐにコードを外し、後は片手に傘を差し右手のみで作業をする。
自宅に帰ったあと、カメラに写されたフクロウの1枚の飛翔写真を解析した。
驚いたことにフクロウは右手の境内から巣穴に入るのではなく、左手のOさんの庭の方角から飛行してきていた。その1枚も左手に向かう予定だが、僕がきたので驚きいつもよりやや右手がわから飛び出したのでセンサーに触れて撮影されたものだろう。
センサー撮影で一番難しいのはこの飛び出し方角だが今夜は失敗に終わってしまった。
飛び出し方角を想定した理由に暗い境内があったこともあるが、一番絵になるところを選んだ希望的観測も上げられる。反省しなければならない。

5月1日
昨日はセンサーの取り付け角度に失敗して本日の夜こそはと思ったが昼間から小雨。
夜も降るようなので断念する。
GWは青森へ家族で妻の里帰りに行くので茨城のフクロウは諦めていた。ところが友人からメールが入り、どうやら青森県のリンゴ園でもフクロウのヒナがそろそろ巣立ちしそうとのこと。温暖化もここまできたのかと思う。茨城のフクロウと青森のものが同じ時期に巣立ちすることは殆どなかった。いつもなら温度の関係で20日以上、北国の青森側が遅くなる。
当然僕は友人の情報に喜んだ。友人の情報に心から感謝する。
車にセンサー一式、カメラ、電装一式、バッテリーなどを旅行バッグ以外に積み込んだ。
5月2日の晩は青森に着き、妻の実家で皆さんと酒を飲み寛いだ。

5月3日
午前5時に起きてリンゴ畑へ出かけた。
カメラマンのKさんが既に来て三脚を立てていた。
僕は色々お話をお聞きして、リンゴの樹の上部の地上150センチぐらいの穴を覗きこんだ。そこには可愛い雛が3羽僕を見上げていた。
Kさんのお話ではここの畑の持ち主のご夫婦どちらもフクロウに襲われているとの事。Kさんも夕方耳の後ろをやられて医師の世話になった。
弘前大の研究班も5度ほど襲われて研究を別な場所のフクロウに移したとのこで相当気の立っている手ごわいフクロウらしい。
僕の場合、撮影は夜が殆どなので特に対策を立てる必要があった。
リンゴ園のオーナーの方と挨拶を交わした後、又夕方来る旨を告げカミサンの実家に戻った。
午後4時過ぎに再びリンゴ園に戻りセンサーとカメラをセットした。巣穴は目線の高さにあり、フクロウの飛んでくる方角など拘ることなく、フクロウの巣穴に赤外線をセット。これなら親フクロウが巣穴に飛び込めば必ずストロボーが光ることになる。又出るときも赤外線を外して出ることは出来ない。
Kさんは夕方に自宅に戻る予定だったが僕のセンサー一式を見てから帰宅に向かうことになった。
始めて夜間撮影のセットを見て驚いた様子だった。赤外線がどのように作動するか彼に巣穴の前で手を振ってもらった。確かに手が巣穴を横切ったところでストロボーが点灯して、シャッターがカシャーと切れた。
カメラには彼が手を振ったところが映像として記録されていた。
彼が帰ったあと一人になり、急にフクロウに襲われる不安が心の中を虜にした。一人の時が特に危ないらしい。
フクロウが後ろからと思うと後方が常に心配になった。
急いで何時でも撤退できるように整理して、まだ夕方の明るい5時なのだがセンサースイッチをONにしてその現場から逃げるように
車のところまで戻った。

6時ごろリンゴ園のオーナーが車のところまで来られ、今年のフクロウの話をされた。フクロウが大好きらしい。
世代代わりをした新しい個体で、気性が激しく襲われるから気をつけてくださいと帰るとき再びアドバイスされた。
そこで再び不安が募り、帰りのカメラセットを撤退する時、どうしようか悩んだ。小心翼々な自分を恥じた。傘をさしただけでは駄目らしい。攻撃してくる時、傘を避けて進入して頸分に飛びつくとのこと。心配が更に深まった。飛びつかれたら、あの剃刀のような足爪で僕の頸を切られたらどうしよう。救急車騒ぎになることは間違いない。このリンゴ畑に出入りした方は今年は殆ど1回はその鋭い爪でやられているらしい。
一応カミサンの実家でダンボールを用意してきた。ダンボールの一方に穴を開けそれを被り、穴から見ながら撤退作業すると云ったものだが
フクロウはこれぐらいでは驚かないだろう。
それにこれでは背中が標的になるのではないかと考えると又心配が大きくなった。
それに片手では作業が捗らない。
次第に夕闇が濃くなり不安が消せなくなってきた。「顔など突かれないでね」とカミサンが心配顔で云っていたことも思い出した。

僕は車のシートを倒して暗いリンゴ畑を眺めながら頭と頸と背中を防御するものを考えた。
その時、車の一番下に入れている厳寒用の大きなダウンがあることを思い出した。このダウンは狭い自宅には置くところが無く、何時も車の隅に置き、寒いときはついつい使用するのだがいつも仲間のカメラマンには笑われる。大げさだと。
僕はそれを持ち出し着てみた。猛吹雪にも大丈夫なように目以外全部覆うてしまうように大きな帽子もついている。おまけに目を覆うプラスチックのメガネもついている。
これなら頭も頸も顔もそして背中も大丈夫だ。厚みもだいぶあるからフクロウの足爪も通らないだろう。
だがこれを着ると暑いようだ。しかし撤退準備をするときだけの辛抱だ。

そのあと僕は車の中で早い夕食を取った後、眠った。目が覚めるとリンゴ畑の中は真っ暗だった。TVをつけて、ナイターを見ようとしたが野球は何処のチャンネルもやっていなかった。
お笑い番組を見たが面白くなく、スイッチを消した。暗いリンゴ園の中を眺めた。この車の前方200mぐらいのところにフクロウ親子が棲息しているのが暗い世界から実感できた。
今頃フクロウお父さんとお母さんは必死でヒナの食べさせるネズミを探しているのだろう。
ヒナはお腹が空腹だと訴えて啼いているのかも知れない。
それから
時間が2時間ほど過ぎた。
ストロボーが一度も光らない。僕は不審に思った。薄暗くなれば必ず親が餌を運んでくるのだが。そして巣穴に入るときと、飛び出した時の2度ストロボーは夜空にカミナリのように光るのだがそれが無い。見落としは考えられない。
又しても赤外線の方角ミスかそれともストロボの故障か。カメラの故障か、いらぬ心配が脳裏をよぎった。
僕は大きな厚いダウンを着込んでフクロウの巣穴に向かった。
懐中電灯で照らしながら接近すると巣穴の上の横枝に可愛い雛がちょこんと座っているのが暗い中でも分かった。巣立ちしていたのだ。
あまりにも可愛いい。あどけない眼差しでこちらを見ていた。セットしてあったカメラを外し撮影を始めた。折りしも満月に近い月が煌々と輝やいていた。その月とフクロウを同時に撮影しようと巣穴の裏側に回った。

そしてヒナと満月を入れアングルを決めようとした時、突然頭上の暗いところで親フクロウの低い威嚇の声。ウーウーウーウーウと殆ど聞こえないような静かであるが、しかし強い意志を持った声がした。

懐中電灯で照らすとそこに親フクロウが僕を見据えていた。次の瞬間
フクロウは音も無く暗いリンゴの別な枝に飛び移った。僕は急いでそのあたりの枝を懐中電灯で追ったが暗い世界で分からない。その辺の何処かで、僕を怒りながら狙っていると思うと撮影どころでは無かった。

それからは逃げるような速さでコード類も、たたまず、そのまま空き箱に突っ込んでセンサーセットを引き上げた。カメラ類とセットをまず車まで運び、次に三脚2組を運んだが、途中まで、その三脚をびゅうびゅう振りながら、後ずさりして、攻撃してきたら、これで痛い目に合うぞと叫びながら撤退した。
車までは追って来ないだろうと思ったが暗い部分の世界の何処からか狙っているのではないかと恐怖が先に立ち急いで車を発進した。
どうりでストロボーが発光しなかったはずだ。親フクロウはヒナを連れ出す為に、巣外から呼び寄せていた。決して巣穴の中には入らなかったのだ。そして最後の1羽が巣の上の枝まで登ってきていたのだ。
今夜は巣立ちの劇的な夜だった。撮影は何も出きなかったが感動的な夜だった。
翌日カミサンと息子を車に乗せ昼過ぎ、リンゴ畑に寄った。フクロウのヒナも親も見つからなかった。
夜、リンゴ園のオーナーに電話で撮影のお礼をした。
オーナーは朝10時すぎまでは巣の上にヒナは居たと云っていた。やはり朝早く行けば良かったと思った。

今年のフクロウの写真はあまり写せなかったが劇的な巣立ちを見て満足だった。
それにケガもせず関係者で僕だけが被害に遭わなかったのだから幸運と云わねばならない。  5月6日記

 追記
 今回のフクロウの撮影では茨城県、青森県どちらも関係者の方にお世話になった。ご協力が無ければとても撮影まで出来ません。
 フクロウの棲息地に入らせて頂き、感謝しております。来年も又ヒナが続々生まれることを祈っています。
 個人的な名前はここで述べられませんが皆様のご健勝をお祈りいたします。本当に有難うございました。

     
ネズミの動きを見ている。  撮影         巣から飛び出した親フクロウ(茨城県)  リンゴ園のヒナ達。巣立ちが近い(青森県)
茨城県

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