05.12.30   オオタカ   かすみがうら市


 オオタカが200mほどの先の電柱にとまってどのくらいの時間が経過しただろうか?オオタカは電柱の影になるようにして、ほぼ垂直の姿勢でこちらを凝視している。目の前の20羽ほどのドバトは全然気がつかないのか、餌を無心に食べている。
オオタカはドバトの群れよりも、こちらのブラインドテントの方に鋭い視線を向けている。僕はテントの中で双眼鏡も持てないくらい身動きができない。
オオタカが獲物を襲う瞬間はこちらも絶対動かないようにすることが要諦である。それでも何とかバックの中から書物を取り出した。
こんな持久戦のときは気軽な気持ちになって本を読んでいるのに限る。本は明治初期の征韓論に関するもので大久保利通がいかに西郷を参議の会議上で押さえ込むかの内容だ.
僕は直ぐに書物の中で大久保参議の世界に入っていく。大久保は版籍奉還の次に廃藩置県を断行し、今や郷里の島津久光はじめ旧武士階級の反抗勢力は凄まじい。その勢力に明治維新の巨魁、西郷参議が加わろうとしている。大久保は悩む。
そこまでページに目を走らせると、ばさっと音がして次の瞬間ドバトがたくさん飛び出した。残ったドバトの上にオオタカが馬乗りになり、こちらを炯炯と目を光らせ睨みつけていた。
オオタカの若鳥。しかし若鳥であるが勝子やノスリに餌を強奪されており、警戒心は強くなってきている。オオタカはこちらのテントから目を離さない。僕は本のページに目を向けるが、とても文字を追う事はできない。されどオオタカの視線に耐えることも出来ない。僕は本の目次を追う。そして上目使いにそおっと、オオタカの方を見る。オオタカはやはりこちらを睨みつけている。ここで僕がカメラにでも触れたらオオタカは瞬時に上空へ舞う。ここが我慢のしどころだ。更に緊張した時間が流れる。記録的に長い。もしかしたらこのオオタカは過去に数回僕のレンズの動きで
逃げたオオタカかもしれない。それでなければこの異常に長いオオタカの視線は考えられない。僕はここが我慢のしどころと思って耐えた。
僕に残るのは耐えるだけだ。

若鳥だと思って安易に僕の心に弛緩した感情が入らないよう自分自身に言い聞かせる。例えカラスやトビでもテント近くにきた生き物に対しては、警戒心を抱かれないよう注意を払う必要がある。
なぜならばこれらの生き物が急に緊張すると、オオタカへその緊張度が伝播する。これらの生き物はある意味では人間に対して連合軍を作って人間を包囲している。
しかしながら面白いことには彼ら自身の言語を彼らがそれぞれ解しないため、中味が分からない。具体的にはカラスである。カラスは僕のテントの中に僕がいることは良く分かっている。僕がカラスに対して悪さをしなければ別にカラスはオオタカにテントの中に人間がいるとを告げ口はしない。しかしカラス同士ではここに変な人間がいるから、要注意と言ってカアカアなき騒いでいる。最初はオオタカも警戒するが自分のことで騒いでいるのだろうと思ってカラスのことは無視するようになる。

やっとオオタカが食事を始めた。しかし青い空にトビが廻っているので時々背を低く更に両羽を広げ警戒心を解いていない。だが警戒の中心はお前だとばかりに鋭い視線をこちらに向ける、それも時間が長い。こちらを向いている時が一番緊張する。咽喉がいやに乾く。

オオタカが上空に目線を送った時、僕は始めてテントの穴からレンズを出した。
しばらくぶりにレンズ越しからオオタカを見る。ピン会わせをオートからマニアルに切り替える。シャッタースピードは2400分の一。絞りは4.0
できたら4000分の一ぐらいのスピードが欲しい。しかし本日の条件では限度だ。光電管式のストロボーならいくらでも光量がセットできる。
しかしこの白昼では無理だ。バックが明る過ぎる。自然光で4000分の一から5000分の一の光の照射が有ればオオタカのスピードに肉薄できる。
本日は2400分の一で抑えるが、次、勝子が出現したら5000分の一でテストしてみる。ターゲットを5000分の一にして全ての基準をそれにあわせる。それなら勝子の飛ぶスピードを追えるのではないか。
勝子の飛翔する瞬間の姿を映像にしたい。これはオオタカの撮影を始めたときから夢見ていたことだ。まだ、5000分の一以上で撮影した
オオタカの写真はみたことがない。
幸いなことに、田園という光だけは恵まれたフイールドにいる。この条件をクリアできるところはそんなにあるはずがない。
勝子の飛翔する姿を僕の脳裏にイメージする。
しかし、簡単に撮影できないことがイメージとともに生じてくる。背景をどう処理するか。高低差をどうするか。それにレンズを固定するのか
それとも流し撮りにするのか?
いや、そんなことよりも、勝子がいつ出現してくれるか、それが問題だ。


2005.12.30 撮影
写真説明 光量 2400分の一 絞り4.0 使用レンズキャノンED300

 大きい鳥は大きく撮影。これが僕の持論だがそれに存在感をどう与えるかが今回のオオタカシリーズ撮影のモチーフである。
従って本日のオオタカの写真は少し、大きくしてみた。技術的には光電管を使用した方が正確に初列風切羽を写せる。下記の写真参照。

出典 (探鳥もど記4 2003.12.30 ジョウビタキ飛翔 光電管とストロボー8灯使用)
光電管との違いがお分かりでしょうか?



(探鳥もど記4 2003.12.30 ジョウビタキ飛翔参照 光電管とストロボー8灯使用)
シャッタースピード11240分の一 絞り16
小さい鳥の羽ほどクリアに撮影することは難しい。メジロ、ジョウビタキの撮影では10000分の一
以上の速さを求められる。シマフクロウで4000分の一 
オオタカで初速の飛翔を捕らえるのは5000分の一以上か。

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