06.10.14 オオタカ カシミガうら市 今秋、始めてブラインドテントに入った。先週、周囲の雑草の手入れは終わっていたのでテントは支障なく設営できた。 だいぶ夜が明けるのが遅くなり、テントの中で熱い珈琲を飲んでいる時も外は暗かった。僕はインスタントの珈琲は好きでないので珈琲を入れるのにも時間がかかる。 だが準備が全て終わり今秋、始めてのテント入りの珈琲は僕を明鏡止水の心地に誘う。 例によってカメラとレンズそして三脚雲台の点検を確りとチエックする。暗紫の筑波の峰々に向かってレンズをあわせシャッターを切る。軽快かつ正確な音がする。 それから僕は横になりしばらく眠った。 起きた時は太陽が左から上がり、テントの中は暑いくらいだった。空は晴れ渡りモズの高鳴きがしきりに何かを訴えている。チョウゲンボウは電線にとまり、真下の草むらを見下ろしていた。 オオタカの鳴声はなく、見渡す限り雑草と田圃が連なり普段と変わりない静かな里山の朝が始まった。コオロギの寂しい声だけがあった。 距離80mほどにキジの雄が餌取りをしている姿を認める。 夏場に雛を連れている親子を見たが雄を見るのはこのテントでは始めてだった。 キジは次第にこちらに向かってきた。既に冬羽に換羽しているが尾羽は長く、雄独特の威厳のある火に焼けた赤黒い顔が寄ってきた。 しかし僕はレンズをブラインドから出さず、引けるだけ引く作戦に出ることにした。 ノンビリとしたキジでもレンズを出してシャッターを切った時点から、こちらには寄ってこない。僕は彼が何処までテントに接近するか、そちらの方に興味があった。キジは雑草の先端の若い草を嘴で掴み引っ張って食事をしていた。ちょうどそのあたりから先週僕が草払い機で綺麗に清掃した部分であり、キジにとって歩きやすい平坦地につながるところだった。 キジはゆっくり食事を取っていたが次に背を低くして右側の背丈の長い雑草の中に消えた。 姿を見失って僕は幾分落胆した。空を見上げると、殆ど雲がなく日本晴れに近い。こんな晴れた日にブラインドの中にいるのは奇人に近いのかも知れない。笑。 本日はオオタカの姿はおろか鳴声すらない。あまりにも天候が良すぎる。シーズン最初に賭けたオオタカの出会いは僕の想念の空回りに過ぎないないのか。 昨シーズンは最初から勝子が出現する幸運に恵まれたが今回はそのようなことはないのだろうか? 再び疑心暗鬼の堂々巡りが始まった。 だがその不安は再び雄キジの再来で消滅した。 彼が出てきたのは正面の20mぐらいの高い土手の雑草地だった。彼は盛んに長い草を啄ばんでいた。 僕はそこで始めて300ミリのレンズをブラインドから出して彼の横顔に焦点を合わせてシャッターを切った。ところがその瞬間、彼は雑草地に腹ばいになり頭を下にした。 彼は僕のレンズに驚いたのではない。ブラインドの窓から見上げるとオオタカが急旋回して山の方向に向かうところだった。オオタカはキジを狙っていたに相違ない。そして飛翔から突然の下降に入ったが、出しぬけにブラインドから僕のレンズがニゅーと飛び出したので慌てて進路変更して飛び上がったのだ。 ブラインドテントからは視野の狭い正面のみ覗くことが出来るが同時に上空まで見ることは不可能だ。従って天空に何がいるのかは分からない。上空でオオタカがキジを狙っていることは全然分からなかった。 僕がそこまで理解したあとでもキジは地面に腹ばいになり頭を下げ、オオタカが諦めて遠くまで去っていくのを待っていた。 目の前でオオタカがキジを捕獲するシーンがもう少しで見られたかも知れないと思うと本日のアンラッキーさが如何に大きかったか分かる。 だがキジにとっては僕がいたことが大きな幸運であった。僕のレンズがもう少し遅くテントから出ればキジはオオタカの餌食になっていた。そして僕は心臓が締め付けられるくらいドキドキしながら撮影するに違いない。 僕はそんな光景を心に描き、好運な雄キジの撮影を始めた。 ![]() 上空でオオタカが獲物を狙うのを諦め切れず飛行旋回している間、キジは地上の雑草地で可能な 限り腹ばいになり,難を逃れるべくジーと静かにしていた。距離20m レンズ300ミリ ![]() 文章の中のオオタカとは違います。このようにキジを狙っていたのかもしれません。 本日の気になる言葉。 為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり 上杉鷹山 戻り |
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