05.11.10    オオタカ    かすみがうら市

 前回は小雨の中、無理して出かけたが、本日は晴天。自宅を出たときは夜空に星が瞬き綺麗だった。朝露の中の草地に昔使用していたブラインドを張る。
この迷彩ブラインドは通販でアメリカから、昔ヤマセミに熱中していた時取り寄せたものだ。雨傘を円筒状にしたようなもので、真ん中のポールを地面に突き刺す仕組み。組み立ては簡単だが高さがあるため風が吹くと不安定である。いかにも背の高いアメリカ人が狩猟に使いそうだが、風に弱いためこれまでヤマセミで数回しか使用しなかった。

5種類のテントのなかで、このテントはまだオオタカに使用していなかったことを思い出し物置から探し出し設営した。外側の迷彩色は茶色の模様が多く、秋とは言えまだ野山は緑系が強く、周囲の田圃は一部を除き殆んど緑一色。周囲との違和感を感じさせるようなブラインドだが、まだ一度も
オオタカに使用していないことに期待した。

テントの外側が明るくなってくると、僕は藤沢周平の蝉しぐれを読み始めた。撮影するぞ!と言った殺気みたいな圧力をオオタカにかけたくなかった。レンズもテントの中に入れて外に出さなかった。

前回、勝子に300ミリレンズを穴から出すところを見られたので飛来してくる期待は殆ど持てなかった。ただ、始めてのブラインドテントは勝子は見てないのでそれに賭けてみた。

少し時間が流れ僕はテントの外を見た。ドバトが3−4羽草むらで落ちこぼれた種子を拾っていた。
と、その時メスの成鳥=勝子が舞い降り、1羽のハトの背中を蹴り上げそのままドバトの背中に馬乗りに乗り、こちらのブラインドテントの中にいる
僕を睨みつけた。

僕は息さえ止めて身動き一つせず、次の勝子の動きを待った。それから前回のように勝子は何事もなかったようにハトを調理し始めた。
僕はそれでも、レンズを外に出すのは控えるくらい慎重になっていた。勝子は並外れた警戒心の持ち主であり、もし失敗した場合は次に取り返しの出来ないことになる危惧の念があった。僕が500ミリレンズをブラインドから出したのは更に5分ほど経過してからだった。勝子はカメラのシャッター音がパシャーパャシャーとなるたびに僕の方を見た。しかしそれ以上の警戒する様子はなくハトの羽毛を毟り続けた。

更に数分過ぎた。
突然、クルルークルルと勝子が鳴きながら舞い上がった。次の瞬間、別なオオタカが勝子に代わってハトの背中に上がった。
見るとこれまで一度も見たことのない勝子より一回り小さいメスの成鳥オオタカだった。背面が黒青灰色だが多少白色が入り、擦り切れているのか褐色が目立ち、いかにも老鳥のようである。(これから便宜上ギンと呼ぶことにする。スガイギンのギンである。)

このギンは杉木立の先端にとまっているオオタカの7羽にはいなかった。絶対自分の姿を見せずいつも暗い森の中からこちらを
観察していたのではないか?老練で勝子以上の警戒心が有ったからこそ僕の目の前には決して出てこなかった。

オオタカとしては勝子のような堂々として溌剌なところはなかったが、いかにも小利口で無駄な動きは全然しない警戒心の塊みたいな老鳥だった。
頂点に君臨していたのが勝子と認識していたが、いとも簡単に勝子を一蹴してしまったギンの存在を知った僕の驚き、ご想像ください。
ただ、カメラマンの目から見ればギンより勝子の容姿、スタイル、風格、威厳はどれをとっても優れている。これから沢山写真を撮りたいのは勝子のほうだ。
だがこれから知恵比べで目標としなければならないのはギンの方ではないか。ギンを身近に呼べるくらいなら勝子やオス成鳥そして幼鳥は簡単ではないか?
今シーズンはギンの登場で新たな展開が生じてきた。これまで見たことのない老獪なメスオオタカ。いずれにしても家族ではなく、どのようなつながりがあるのか興味深深である。
ギンが単なる人間世界での姑であるわけがない。オオタカの世界で、つまりこの近隣の森の世界で一番力のあるのは、
本日知った限りではギンである。オスの成鳥(ここでは便利上ターキーと呼ぶことにする)はノスリに追いやられてしまうくらいの若鳥で、見た印象は元気な若者であるが
まだひ弱で威厳はなきに等しいくらい。
ノスリに食べていた食事を奪われ、キーキー鳴きながらノスリの食事をしているところを見ているターキーの姿はとても猛禽の姿とは思いない。
新たな展開が次にどうなるか予測は出来ない。今年はまだ、この近くの野山にはノスリやチューヒが来ていない。昨年ターキーの戦果品を奪ったノスリの姿も今年はまだ見ていない。
これらの猛禽たちがどのような展開を生んでいくのか想像すると胸がドキドキする。
これまでの写真集や図鑑などにはなかった世界が広がるような予兆を感じるのだがこれはオーバーなのだろうか?
彼ら猛禽の世界の勢力分布がまるで分からないだけに興味は尽きない。前回大きな壁に突き当たったと述べたが一つの壁は今回のブラインド使用で抜けることが出来た。しかし油断大敵。勝子以上の警戒心の強い老練なギンが森の奥に潜んでいることは更にブラインドテントの研究をして行かないとこれまでの創意工夫と研鑽も水泡に帰してしまう。



 オオタカ♀成鳥(ここではギンと呼ぶ)
頭上をトビが飛んできた。急いでギンは食事していたハトを羽の下に隠す。
この獲物の隠し方が徹底している。はるか遠く過ぎ去るまでこの姿勢でいた。




オオタカ成鳥(ギン)年齢は不詳。かなり老鳥であることは間違いない。


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