07.1.21  オオタカ    かすみがうら市 

 オオタカの飛来が良くなってきたと思っていたら2回連続ボウズになってしまった。
釣り用語で釣れなかった日をボウズと云うが全く同じような意味である。しかし2回のボウズは性質が悪かった。

魚がいなくて釣れないのなら諦めがつくがそこに魚が回遊していて、釣れないなら、原因を根本から探さなければならない。

それと同じくオオタカが近くにいても寄って来ない。まるでこちらの手の内を知り抜いているような動きをする。
何故か今冬はオオタカメス成鳥、勝子の出番が多い。

難攻不落の勝子に対してこちらも緊張感を持って対処してきたが、勝子の方は僕の一寸とした隙をついて動きまわる。

例えばブラインドからレンズを突き出し、レンズを少しでも動かすとオオタカは何処からか見ているのか、もう近くに来ることはない。

従って僕はレンズをテント内に入れて置くようにしている。勿論レンズの両側は塞いで内側からも外側からも見えないようにする。

TVで放映したときのブラインドはあの日風が強くブラインドが張れる状態でなかった。大きな穴がいくつもあり、僕の顔が外から見えてしまっている。
現実にはもっと完全な密閉状態で撮影を実施する。

閉鎖的な視界はレンズを通してのみとなり、レンズとテントの隙間の穴、小指大ぐらいの穴が唯一の外の世界をみる窓となる。

だがこの小さな窓も勝子側から見れば大きな丸型の窓に見え、僕が虎視眈々とレンズを睨んでいる馬鹿げた図が透視できる。

勝子がこちらを凝視しているときは絶対身体を動かさない、カメラにも触れないことが鉄則。

が勝子が突然背を低くしたり、飛び下がったりしたら僕の指は瞬時に直ぐにレンズに、そしてカメラのスイッチに伸びるわけだが勝子はこのような動きに対しても見過ごさない。
「動きましたね」と言わんばかりに地上から飛び去ってしまう。その飛び去った原因が本当のところ窓が小さいため、分からない。
まさか勝子が演技をして僕の動きを誘うようなことはないだろうけれど2回とも同じようなことがあり、本日はブラインド撮影でなく車で撮影することにした。

車の後部座席に針金で三脚を固定して600ミリのレンズとカメラをセットした。いつもの車撮影のパタンである。
この撮影は気楽である。まず朝が遅くてもよい。オオタカが出現する時間に行けばよい。オオタカだけでなく、ハヤブサやチョウゲンボウ、ノスリ、
チュウヒなどに会う機会もあり、それは楽しい。

だがシャッターチャンスは偶然なことが多いし、良い写真を撮ろうにも偶然を期待する以外何もない。目的の鳥を何回も撮影しようとすれば車は覚えられてしまうし、なによりも結果的には追廻しになり、鳥が緊張しているつまらない絵になってしまうことが多い。

このような収穫が乏しい車撮影だが、新たな発見や調査には欠かせないので時々霞ヶ浦周辺を回っている。

本日はいつものブラインドテントの半径3キロ以内の田圃の中を走ることにした。暖冬のせいか、車の中はセーターでは暖かすぎ、Tシャツになってしまった。 ほぼ一巡しかけた時、土手の中腹でオオタカが食事しているところに遭遇した。

双眼鏡で確かめそろそろと前進した。20−30mほど車を進めて再び双眼鏡で確認する。
オオタカの成鳥メス、紛れもない勝子だった。

それからが大変だった。子供の遊びのだるまさんごっこのようにオオタカが嘴を下に向けて食事している時、少し車を進め、こちらを向いて警戒している時は、車を止めた。そして僕ははあらぬ方向に視線を向け、関心が全くない素振りを示さなければならなかった。そのような動作を何回も繰り返し、少しずつ少しずつ前進して行った。
深入りは禁物なので30m近くで車のエンジンを止めて、勝子の動きをじっくりと観察することにした。

近くに寄って撮影することよりは、勝子の動き、反応を良くみることに重点を置いた。その為、無駄かもしれないが前席にはブラインドの布地で覆って前方から視認できないようにした。後席のレンズまわりは、先ほど着ていたセーターを覆い、更にダウンで窓を隠した。いつもブラインドでやっている手順を逆にしたわけである。幸いに冬の今頃は田圃の中に車を乗り入れる者はすくなく落ち着いて準備が出来た。。

オオタカはいきなり車の窓際の布地を外せば逃げてしまうが逆に窓に装着していくのは気にならないようだ。自分に害を与えないと判断すればむしろ食事に専念する。しばらく食事と上空の動きと、こちらの蔑視を繰り返した。10分ぐらい過ぎただろうか。

突然、ノスリが上空から突き進んできた。オオタカの背上3mのところを威嚇飛行して土手の向こうに消えた。同時にオオタカはキューキューと啼き
反対方向に消えた。一瞬の出来事だった。

オオタカがいなくなったので、僕は車を更に前方に進めた。オオタカがいなくなった場所から20m付近だろうか?双眼鏡で食痕の残骸を調べた。まだ半分ぐらい残っているようだ。
僕は後部座席のレンズから覗けるように車を田圃道に斜めに置いた。車輪が田圃の中に落ちても今は一番乾燥しており、脱出も容易な時期だ。

想像した通り、間もなくオオタカは戻ってきた。
ノスリに脅かされだけで、こちらを警戒して逃げたわけでないので戻ってきたのだろう。

車の位置はだいぶ違う筈だがこちらに一瞥しただけで再び食事を始めた。

僕はレンズでオオタカを確認してシャッターを切った。シャッター音がオオタカの耳に入ったのだろうか、オオタカは燃えるような双眸をこちらに向けた。
僕は凍ったように全身を硬くして、カメラを握りしめた。自分の心臓の鼓動が大きく響くのが分かった。何回も経験しているがひどく緊張する瞬間だ。

勝子は何事もなかったように食事を再び始めた。

だがそれから又、あのノスリが今度はぶつかるほどの低空飛行で威嚇してきた。オオタカは10mほど飛び下がった。しかし食物に愛着があるのか再びふわーっと元の位置に戻った。

そしてドバトを鋭い爪で挟むと山間部の方へ飛び去った。

本日僕は偶然にもオオタカを威嚇するノスリを2回も観察することが出来た。僕の日頃のブラインドからではノスリが威嚇飛行する姿は見ることが出来ない。
小さなブラインドの窓からではオオタカの飛び去る姿だけが確認できる。威嚇するものが全然見えないので、オオタカが去った本当の理由が分からなかった。
ブラインドを密閉すぎるから、ただ1点のみ見える状態になっていた。
その点、本日は車からの撮影だったので全ての動きが観察できた。

 

 オオタカメス成鳥 07.1.22 撮影 (メス成鳥勝子は頸後方に白い羽毛がある)

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