05.12.10  オオタカ  かすみがうら市

 うまくいく日は最初から、つまりブラインドテントを張っているときから、気持ちよく作業が進んでいく。テントの緩みもピーンと張れるし、覗き穴も思ったとおりの角度に決まるし、レンズの場所も一回でOK。僕は一度だって前回と同じようにしたことがない。つまりいつも何か、もっとうまい方法がないかと工夫しているので前回とは違ってしまう。創意工夫と言えば格好いいのだろうが、本当は全然違う。まだ、オオタカの成鳥を必ず寄せる方法が皆目分からないので、試行錯誤を繰り返しているだけなのだ。本日は今までの失敗を思い出しながら、準備を急いだ。
これまでの分かっているもので失敗が多いのはレンズの固定の仕方である。分かりやすく言えば、レンズの振り方である。レンズをどの段階から動かすかこれが最も重要である。勿論悠長に構えていても直ぐに飛び去り、逃げられてしまっては後の祭りである。何回も失敗しているが、早くレンズを振るとオオタカが草むらに着地しないうちに飛び去ってしまう。一度去ったら勿論その日は飛来ないし、警戒心が着いたらいつ次に来るか分からない。この辺の阿吽の呼吸を覚えるため、いろいろ悩んでいるのだが、本日はラッキーなことにメスの成鳥、勝子が飛び降りてきた。遠くの山から一直線になって下りてくる姿が視界の片隅に入り僕はテントの中でしばらく、動かないで、様子を見た。勝子は取り押さえたドバトの上にまたがって食事を始める。その段階でレンズをテントから出して撮影開始。
しかし勝子が向こう向きで食事をしているので、こちら向きになるまで待った。だがこちらに安心しているのか、食事をしている姿勢は変わらない。勝子が警戒しているのは前方の電線に止まっている2羽のカラス。それと時々上空を飛翔するトビであり、こちらには警戒していないようだ。
静かな時間が流れた。

突如、勝子の背中に褐色の物体がぶっかって来た。ノスリである。ノスリは勝子の頭部付近に鋭い爪脚を伸ばして体当たりしてきた。勝子は応戦するでもなく、またがって食事をしていたドバトをノスリに簡単に収奪されてしまった。最初から勝子に戦意がないのか、全く喧嘩にならない。
僕は勝子の態度に落胆した。オオタカの威厳を持って,ノスリと堂々と戦うべきではないか。その鋭い爪で一歩も引かないで最後まで戦うべきではないか。オオタカがノスリによもや負けるわけがない。猛禽の代表として敢然と戦うことを僕は希望する。

しかし、そこには戦いはなかった。
下の写真はそのあと僕の方を2羽で見ている写真である。勝子はややカメラから遠い位置にいるので、少し小さく見えるが、勝子の姿は、どう割り引いても精悍さに欠け、覇気がない。ところが右手のノスリはどうだろう?
大きく堂々として活力に満ちた印象である。餌を捕った方と奪われた方との違いである。ノスリは喧嘩はいつでもOKのように見える。だがオオタカは何故か
あの平和の使者ハトと見間違うのではと言った印象を受ける。

このHPで写真だけ見て本文を読まない方がおりますが、(それはそれで結構ですが)この写真だけ見たのでは所謂ツウショットの写真とみて、その中身を見ることができません。
写真で全てが分かればこんな駄文は省き、写真のみでよいのです。
僕はオオタカがクマタカ以上の大きさの鷲類を除いて猛禽の中で一番強い猛禽と思っていた。しかし色男(勝子はメスだが)
力はなかりけりで正しくオオタカは美形であるが喧嘩となると一目瞭然で弱いことが判明した。

ところで、この勝子はその後どうしたかって。勝子はこの1枚の写真のみ撮らせて、次の瞬間は上空へ舞い上がって山の杉の木立の方へ飛び去った。食物連鎖の頂点に君臨する猛禽でも、無駄な流血を見る戦いはしないことが本日、分かった。
勝子は前回はギンそして本日はこのノスリに折角の餌を捕られるし自然界の厳しさをテントの中から見て勝子に対して少し同情を持つようになってきた。
本日見た限りでは勝子は僕のテントに対して警戒心が薄くなってきたのではなく、ノスリとの対峙から意識があちらに集中していただけで、依然こちらに対しての警戒は解いてないと見た方が妥当ではないかと思う。ただ、ノスリに貴重な餌を捕られた記憶が強く残り、僕のテントに対する緊張感が緩和してくれれば僕の仕事(撮影)は今後上向きになるのではないかと淡い希望を持った。勝子と次に会う日が楽しみである。



オオタカ♀成鳥とノスリ♀成鳥
キャノンEF300.2.8レンズ使用(絞り優先)


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